遺産争いは本当にある?

遺産争い(争族)は、相続に関するトラブルのことを指します。実際に遺産相続が原因で家族や親族が争うケースは多く発生しており、裁判所に持ち込まれることも珍しくありません。特に、財産額が少なくても「感情的な対立」が発生しやすいのが特徴です。以下に、遺産争いが起こる原因や実例について詳しく解説します。


1. 遺産争いの発生件数

家庭裁判所の遺産分割調停件数は年間1万件以上
相続争いの約75%は遺産額5,000万円以下
3,000万円以下の相続でも遺産分割トラブルが多発
家や土地(不動産)があると争いが起きやすい


2. 遺産争いが起こる主な原因

① 遺言書がない(または不備がある)

  • 遺言がないと法定相続分をめぐって対立
  • 自筆証書遺言の不備(書き間違い・押印なし) で無効になるケースも

② 相続人の数が多い(兄弟・親族間の対立)

  • 相続人が3人以上になると意見が分かれやすい
  • 兄弟間で「介護をした」「援助をもらった」などの不公平感が発生

③ 特定の相続人に偏った遺産配分

  • 「長男だけが全財産を相続」「特定の孫に贈与」などで不満が生じる
  • 遺留分(最低限の取り分)が侵害されると遺留分侵害額請求 が発生

④ 不動産の分割問題(現金と違い分けにくい)

  • 自宅の相続をめぐるトラブルが最多(売却するかどうかで対立)
  • 共有名義にすると売却や管理でトラブル(意見がまとまらない)

⑤ 生前贈与や特別受益の有無

  • 例:「長男は親から家をもらっていたのに、さらに遺産を主張」
  • 他の相続人が「不公平だ」と感じると争いが起こる

⑥ 相続税や借金の負担をめぐるトラブル

  • 「相続税の支払いを誰が負担するか」で揉める
  • 「亡くなった親の借金をどうするか」で意見が割れる

⑦ 家族仲が悪い(遺産をきっかけに対立が激化)

  • 疎遠な兄弟が突然相続を主張(亡くなった親と関係が薄かったのに権利を主張)
  • 親戚が口を出し、争いが悪化するケースも

3. 実際に起きた遺産争いの例

① 兄弟間のトラブル

  • 「長男が全財産を相続」 → 次男・三男が納得せず裁判へ
  • 介護をしたのだから、他の兄弟より多くもらいたい」と主張

② 再婚家庭での争い

  • 先妻の子と後妻の子が対立(相続割合をめぐる争い)
  • 内縁の妻が遺産を主張 → 法的に相続権がないためトラブルに

③ 遺言書の有効性をめぐる争い

  • 「父が亡くなる直前に書いた遺言書が偽造では?」と裁判に発展
  • 「認知症だったので遺言は無効」と主張 → 裁判所で判断を求める

④ 遺留分侵害額請求の争い

  • 「母が全財産を長男に遺した」 → 次男・長女が遺留分を主張し法的手続きへ

4. 遺産争いを防ぐ方法

① 遺言書を作成する(公正証書遺言がベスト)

  • 公正証書遺言なら偽造の心配なし&裁判所の検認不要
  • 遺言執行者を指定しておくと手続きがスムーズ

② 財産目録を作成し、財産の内訳を明確にする

  • 「何がいくらあるのか?」を整理しておくとトラブル回避

③ 遺留分を考慮した相続計画を立てる

  • 特定の相続人に偏った遺言を残す場合、遺留分の支払い方法も検討する

④ 生前贈与を計画的に行う(贈与税対策)

  • 「年間110万円以内の暦年贈与」などを活用して、争いを未然に防ぐ

⑤ 家族間で話し合いをする

  • 相続が発生する前に、家族で話し合いをしておくとトラブルが少ない
  • 「親が元気なうちに、相続について意思を確認する」のが重要

⑥ 不動産の相続方法を事前に決める

  • 売却するか、誰が住むのかを決めておくと揉めにくい
  • 共有名義を避け、単独相続や代償分割を考える

⑦ 専門家(弁護士・税理士)に相談する

  • 専門家を間に入れると、感情的な争いを避けられる
  • 相続対策は早めに行うのがベスト

5. まとめ

遺産争いは実際に多発しており、裁判所に持ち込まれることも多い
相続額が少なくても争いは起こる(3,000万円以下のケースが多い)
特に不動産や生前贈与がある場合は対立しやすい
遺言書を作成し、相続の方針を明確にしておくことが重要
生前に家族間で話し合いをし、争いを未然に防ぐ
専門家(弁護士・税理士)に相談して、適切な相続対策を行う

遺産争いは決して他人事ではありません。「うちの家族は大丈夫」と思っていても、いざ相続の場面になるとトラブルが発生しやすい ため、早めの準備と対策が重要です。