贈与されたお金は所得にならない?
贈与されたお金は、基本的に所得税の対象にはなりませんが、贈与税の課税対象になります。ただし、一定の場合には所得税が課せられることもあります。ここでは、贈与されたお金の税務上の扱いを詳しく解説します。
1. 贈与されたお金は「所得」ではなく「贈与」として扱われる
- 個人が他人から無償で受け取ったお金は、所得税ではなく贈与税の対象
- 所得税法第9条により、贈与された財産は「非課税所得」として扱われる
- そのため、贈与税が適用されるが、所得税はかからない
2. 所得税がかからず、贈与税の対象になるケース
- 親や祖父母、他人からの贈与
- 親から子へ資金援助として現金を贈与 → 贈与税の対象
- 友人からまとまった金額をもらう → 贈与税の対象
- 企業のオーナーが会社の資金を個人的に受け取る → 会社からの贈与は所得税の対象
- 高額なプレゼント(現金や物品)
- 高額な貴金属、車、不動産をもらった場合
- 市場価値を基準に贈与税の課税対象となる
- 負担付き贈与(借金の肩代わり)
- 例)親が子の住宅ローンを肩代わり → 肩代わりした額が贈与税の対象
- 生活費や学費の肩代わりは非課税(後述)
3. 所得税が課税されるケース
- 贈与ではなく「報酬」や「対価」とみなされる場合
- 仕事の報酬として「贈与」の形で受け取る → 給与所得として所得税の対象
- 企業が従業員に特別手当として現金を贈与 → 給与所得として課税
- フリーランスや個人事業主が「贈与」と称してお金を受け取る → 事業所得とみなされる可能性
- 相続財産としての取り扱い
- 亡くなった人から相続として財産を受け取る → 相続税の対象(所得税は非課税)
- ただし、死亡保険金や退職金には一部所得税がかかるケースあり
- 金銭の貸し借りが実質的な収益とみなされる場合
- 例)「返済不要の貸付」としてお金をもらう → 贈与とみなされ贈与税の対象
- 例)友人や家族からお金を借りたが、利子が異常に低い → 利益分が所得税の対象になる可能性
4. 所得税も贈与税もかからないケース
- 生活費・教育費の贈与
- 親が子供に生活費や学費を支払う場合、常識の範囲内であれば非課税
- ただし、もらったお金を貯金や投資に回すと贈与税の対象になる
- 仕送りの範囲を超える高額な贈与は税務署から指摘を受ける可能性あり
- 扶養義務者間の資金援助
- 親子・夫婦・兄弟間で、生活が困難な場合の資金援助は原則非課税
- ただし、不要な資産(贅沢品購入)に使うと贈与税の対象になる
- 教育資金の一括贈与特例
- 祖父母から孫へ1,500万円まで教育資金として贈与する場合、非課税
- 30歳までに使い切る必要がある
- 結婚・子育て資金の贈与
- 結婚費用や出産・育児費用として、1,000万円まで非課税
- 使途が限定されているため、自由に使える資金ではない
- 住宅資金の贈与
- 親や祖父母から住宅購入資金をもらう場合、最大1,000万円まで非課税
- 条件を満たさないと、贈与税の対象になる
5. 贈与税と所得税の違い
項目 | 贈与税 | 所得税 |
---|---|---|
対象 | 無償で受け取った財産 | 労働や事業による収入 |
基礎控除 | 年間110万円まで非課税 | 基礎控除48万円(給与所得者) |
課税方法 | 累進課税(最大55%) | 総合課税(最大45%) |
申告義務 | 110万円超の贈与で申告必要 | 収入がある場合に申告必要 |
例 | 親からの現金贈与、車・不動産の贈与 | 会社からの給与、事業収入 |
6. 贈与税がバレる可能性と対策
- 税務署は銀行口座の取引をチェック
- 多額の現金入出金は税務調査の対象になりやすい
- 特に、相続税申告時に過去の資金の流れがチェックされる
- 贈与契約書を作成する
- 口約束だけでは「借入金」や「隠れた収入」とみなされる可能性
- いつ・誰が・いくら贈与したかを記録しておくことが重要
- 銀行振込を活用
- 証拠を残し、税務署に説明できるようにしておく
- 「現金手渡し」は税務署の調査で疑われやすい
7. まとめ
- 贈与されたお金は「所得税の対象ではない」が、「贈与税の対象」
- 110万円までの贈与なら非課税、それ以上は贈与税が発生
- 仕事の対価や報酬として受け取ると「所得」とみなされ、所得税の対象になる
- 生活費・教育費・扶養義務者間の援助は非課税だが、目的外使用すると課税対象
- 税務署は銀行の取引記録をチェックするため、不自然な資金移動は調査対象になりやすい
- 贈与契約書を作成し、銀行振込を活用することで税務リスクを回避する
贈与されたお金を適切に扱い、税務リスクを避けるためには、税制を理解し正しい手続きを行うことが重要です。