1. 遺言書の種類

遺言書には主に3種類があり、それぞれ特徴や作成方法が異なります。

  • ① 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)
    • 自分で全文を 手書き で作成する。
    • 作成の自由度が高い が、不備があると無効になる可能性がある。
    • 2020年の改正で、財産目録はパソコン作成や印刷でもOK(ただし署名・押印が必要)。
    • 法務局に預ける制度あり(検認不要)
  • ② 公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
    • 公証役場で 公証人が作成(口述する内容を公証人が文章化)。
    • 証人2人が必要(相続人や未成年者は証人になれない)。
    • 検認が不要 で、紛失や改ざんの心配がない。
    • 作成には 費用がかかる(遺産額によって変動)。
  • ③ 秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)
    • 自分で作成し、封をしたものを公証役場に提出 して保管。
    • 内容を 秘密にできる が、紛失のリスクがある。
    • 家庭裁判所の検認が必要 で、手間がかかるためあまり利用されない。

2. 遺言書の基本ルール(無効にならないための注意点)

  • 満15歳以上 であれば作成可能。
  • 意思能力があることが必要(認知症が進行していると無効になる可能性あり)。
  • 日付を明記する(「○年○月○日」と具体的に書く)。
  • 署名と押印が必要(実印が望ましいが、認印でも可)。
  • 遺言執行者を指定すると手続きがスムーズ(弁護士・信託会社・親族など)。

3. 遺言書の書き方(自筆証書遺言の例)

① 遺言書の構成

  1. タイトル:「遺言書」(他の書類と区別するため明記)
  2. 本文(誰に何を相続させるか)
    • 例:「私は、次のように遺言する。」
    • 例:「長男〇〇に、東京都〇〇区〇丁目〇番地の土地・建物を相続させる。」
    • 例:「次男〇〇には、○○銀行の預金を相続させる。」
    • 例:「妻〇〇には、すべての財産を相続させる。」
  3. 付言事項(家族へのメッセージ・相続の意図など)(法的効力なし)
    • 例:「家族仲良く助け合って生活してください。」
    • 例:「長男には家を継いでほしいので、不動産を相続させることにした。」
  4. 日付(〇年〇月〇日)
  5. 署名と押印(実印または認印)

4. 遺言書の注意点

  • 財産の記載は明確に(「家」ではなく「東京都○○区○丁目○番地の土地」など)。
  • 曖昧な表現は避ける(「適当に分ける」などは無効になる可能性あり)。
  • 法定相続人の遺留分を考慮する(遺留分を侵害するとトラブルのもと)。
  • 最新の状況に合わせて定期的に見直し・更新(古い内容だと実情に合わなくなる)。
  • 相続トラブルを防ぐため、遺言執行者を指定する(弁護士・信託会社など)。

5. 遺言書の保管

  • 自筆証書遺言の場合
    • 自宅で保管すると紛失・改ざんのリスクがある。
    • 法務局の遺言書保管制度を利用すると安全(検認不要になる)。
    • 封筒に入れて「遺言書在中」と書き、保管場所を家族に伝えておく。
  • 公正証書遺言の場合
    • 公証役場で保管されるため、紛失の心配がない
    • 相続発生後、遺族が公証役場で確認可能。

6. 遺言執行者の指定

  • 遺言執行者とは?
    • 遺言の内容を実行する人。
    • 弁護士、信託会社、相続人の一人などを指定するとスムーズ
  • 指定しないとどうなる?
    • 相続人全員で協議しながら手続きを進めることになり、手間がかかる。

7. こんな場合は専門家に相談を

  • 相続人が多い、または不仲な場合(相続トラブルを防ぐため)。
  • 相続財産が多額または複雑な場合(税金対策が必要)。
  • 法定相続人以外(内縁の妻・友人など)に財産を残したい場合
  • 認知症対策(家族信託など)を検討する場合

8. 遺言書作成のチェックリスト

どの形式で作成するか決めたか?(自筆・公正証書・秘密証書)
財産リストを作成し、正確に記載しているか?
遺言執行者を指定したか?
遺言書の保管場所を決めたか?
家族間のトラブルを防ぐ内容になっているか?


まとめ

  • 遺言書は 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 の3種類。
  • 自筆証書遺言は手軽だが、不備に注意(法務局での保管が安全)。
  • 公正証書遺言は確実だが、費用がかかる
  • 財産の記載は明確にし、法定相続人の遺留分を考慮する
  • 遺言執行者を指定すると手続きがスムーズ。
  • 定期的に内容を見直し、専門家に相談するのが安心

適切な遺言書を作成することで、家族の負担を減らし、スムーズな相続を実現できます。