相続と贈与の違いとは?
相続と贈与はどちらも財産を受け取る方法ですが、発生のタイミングや税制、対象者、申告義務などに違いがあります。以下に、それぞれの特徴と違いを詳しく解説します。
1. 相続と贈与の基本的な違い
項目 | 相続 | 贈与 |
---|---|---|
発生のタイミング | 被相続人(財産を持つ人)が死亡したとき | 生前に財産を譲る |
財産を受け取る人 | 法定相続人(配偶者、子、親、兄弟姉妹など) | 親族、友人、他人など自由に指定可能 |
税の種類 | 相続税 | 贈与税 |
課税対象となる財産 | 被相続人の全財産(現金、不動産、株など) | 指定した財産のみ |
基礎控除額 | 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 | 年間110万円まで非課税 |
税率 | 10%~55%(累進課税) | 10%~55%(累進課税) |
申告の必要性 | 相続財産が基礎控除を超えた場合、相続税の申告が必要 | 110万円を超えた贈与を受けた場合、贈与税の申告が必要 |
税負担の軽減策 | 配偶者控除、小規模宅地特例、生命保険金非課税枠など | 住宅取得資金贈与の非課税、教育資金贈与の特例など |
財産の受け取り方法 | 遺言または法定相続のルールに従う | 贈与者の自由意思で決定可能 |
2. 相続の特徴
- 人が亡くなったときに財産を受け継ぐ
- 死亡に伴い、自動的に相続が発生
- 遺言がない場合、民法の法定相続割合に従う
- 例)配偶者1/2 + 子供1/2
- 相続税の計算には「基礎控除」がある
- 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
- 例)相続人が配偶者と子2人 → 基礎控除額 4,800万円
- 基礎控除内なら相続税は発生しない
- 相続税の申告期限
- 相続開始(死亡)から10か月以内に申告
- 申告しないと延滞税・加算税の対象になる
- 相続税の節税策が多い
- 配偶者の税額軽減(1億6,000万円 or 法定相続分まで非課税)
- 小規模宅地の特例(一定条件で土地の評価額が最大80%減)
- 生命保険の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)
3. 贈与の特徴
- 生前に自由に財産を渡せる
- 例)親が生きている間に子へ財産を贈与
- 受贈者(もらう側)は親族以外でも可能(友人・恋人など)
- 年間110万円までの贈与は非課税
- 毎年110万円以下なら申告不要
- これを活用して、数年にわたり贈与を行い、財産を計画的に移転する手法がある(暦年贈与)
- 贈与税は相続税より税率が高い
- 110万円を超えた部分は10%~55%の贈与税がかかる
- 相続税よりも税率が高いため、無計画な贈与は税負担が大きくなる
- 贈与税の申告期限
- 贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日に申告
- 贈与税の特例を活用すると節税可能
- 住宅取得資金贈与(最大1,000万円まで非課税)
- 教育資金の一括贈与(最大1,500万円まで非課税)
- 相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税、相続時に相続財産として計算)
4. 相続と贈与のどちらを選ぶべきか?
状況 | 相続が有利 | 贈与が有利 |
---|---|---|
財産の額が大きい | 相続税の基礎控除が大きいため有利 | 税率が高いため不利 |
配偶者に財産を渡す | 配偶者控除により非課税枠が大きい | 贈与税の配偶者控除を活用すれば非課税(最大2,110万円) |
子や孫に財産を分散させたい | 遺言や遺産分割で対応 | 毎年110万円ずつ贈与で節税可能 |
土地・不動産を移転したい | 小規模宅地の特例で評価額を下げられる | 高額な不動産を贈与すると贈与税が高額になる |
すぐに財産を渡したい | 相続開始を待つ必要がある | 贈与ならすぐに移転できる |
5. 生前贈与と相続の関係
- 生前贈与加算
- 2024年以降、相続開始前7年間の贈与は相続税の計算に加算される
- それ以前は3年間だったが、改正により期間が延長
- 例)亡くなる7年前に子へ1,000万円贈与 → 相続財産として加算され、相続税の対象
- 相続時精算課税制度
- 60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子・孫に対する贈与が対象
- 2,500万円まで贈与税が非課税
- ただし、相続時にまとめて相続財産に加算されるため、相続税負担が発生する可能性あり
6. まとめ
- 相続は「死亡後の財産移転」、贈与は「生前の財産移転」
- 相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数と大きい
- 贈与税は年間110万円まで非課税だが、それ以上は高い税率がかかる
- 配偶者への相続は優遇措置が多く、相続税がかからないケースが多い
- 生前贈与を活用すると計画的な財産移転が可能
- 2024年以降は生前贈与加算が7年間に延長されるため、贈与と相続を組み合わせた節税対策が重要
相続と贈与は、それぞれのメリット・デメリットを理解し、計画的に活用することが大切です。