• クリエイター

    アイドルは差別化
    できなくなってる?
    選ばれるための「感情の編集」

    2019.11.25

「アイドルってさ、コモディティ化してるよね?」

先日、友人とラーメンを食べていたとき、急に疑問を投げかけられました。

面食らった私は「そうかもしれないし、違う可能性もあるよね」と、あいまいに返事をした。

「ところで、コモディティ化ってどういう意味だっけ?」

友人の説明によると、コモディティ化とは

高い付加価値を持っていた商品やサービスが、性能やブランド力などの差別化要因を失い、どれも似たようなものになってしまう状況を示す」という、マーケティング用語でした。

どれも交換可能な存在となり、結果として低価格競争に拍車がかかるようになるんだとか。

友人がそう感じたのは、「売れたアイドルを模した二番煎じ、三番煎じが続々出てくる。取り組みもCDのリリース、ライブ、握手会、チェキ会(写真撮影)など、似たようなものばかりで市場が縮小している印象だから」だそうです。

アイドル市場は拡大しているが鈍化傾向

申し遅れました。私は、ジェイ・タカハシといいます。

ローカルアイドルの重鎮・Negiccoのファンです。アイドル業界の動向もゆるくではありますがウォッチしています。

2018年から2019年にかけて、比較的有名だったアイドルグループの解散があいつぎ、業界の後退感はなんとなく感じていました。

ただ市場が縮小してきているかのデータまでは、気にしていませんでした。そこでアイドル市場について調べてみました。

2017年度の国内の『オタク』市場」に関する調査(矢野経済研究所調べ)によると、アイドル市場はプラス成長であるものの、前年度よりも増加比率は下回っており、鈍化傾向にあることがわかりました(下記グラフ参照)。

2010年代が上り調子過ぎたからという見方もありますが、彼と私の印象はあながち間違ってはいなかったようです。

「アイドル」ではなく「感情」のコモディティ化

私は彼とは異なり、アイドルのカテゴリー内では、コモディティ化は起こっていないと考えています。

以前にも増して、グループそれぞれにコンセプトがあり、メンバーも個性的であり、楽曲も王道のアイドルソングからファンクやソウル、シティポップ、ポストロックなど多岐に渡っています。

いま一番おもしろい日本の音楽ジャンルは「アイドルソング」といっても過言ではありません。

友人の「どれもこれも同じじゃない?」という見方には、「現場に行ったり、曲を聴いたりしてから言え!」と思いました。アイドルを舐めるな!

すみません。取り乱しました。

ここで目線を変えて、コモディティ化におけるカテゴリーを「アイドル業界」ではなく、ライブなどを体験したときに得られる「感情」に置き換えてみると、違った様相がみえてきます。

得られる感情に注目

たとえば、長きに渡ってあるアイドルを応援してきたファンの動機が「推しメンバーの歌が上達していく過程が楽しい!」という『成長の喜び』だったとします。

もしもファンにパートナーやこどもができた場合、成長の喜びはもっとも身近にいる人たちから得られるため、それまで推しのアイドルに求めていた感情は不要になる可能性があります。

また、アイドルのライブや握手会に行く動機が、自分を励ましてくれることでえられる「自己肯定感」だった場合、より肯定感を得られるものや行為にシフトするかもしれません。

身体を鍛えるために通い始めたトレーニングジムで、日々育っていく大胸筋や上腕二頭筋を眺める方が、アイドルの現場よりも自己肯定感を得られるならば、選択の優先順位は入れ替わるでしょう。

「感情のコモディティ化」を避けるために

いまは、良質なコンテンツがあふれているので。お金と時間の使い方にシビアな人がふえています。

感情や効用を最大化してくれるような投資対効果の高いものが好まれます。

とくに、得られる感情が重複する商品やサービスに対する比較の眼は、よりきびしくなっている。

最近、私も「以前はあの現場(アイドルのイベントを指す言葉)に行ったけど、今回は行かなくてもいいか」と思ったときがありました。

好きの感情が、失われつつあるのではないかと不安に。しかし、感情の基準が一時的に下がっただけで、興味を失ったわけではないと認識してからは、気持ちがラクになりました。

では、アイドルが他ジャンルとの「感情のコモディティ化」を避け、自分たちを選択してもらうにはどのようにすればよいのでしょうか。

私は、感情を基点に体験を設計し、他では抱けない感情のファンへの提示が重要だと考えます。ここからは、そのステップについて考えてみましょう。

1.感情の分析

(1) これまで提供してきた感情を振り返る
これまでに、ファンに対しどのような感情を抱かせていたのかを振り返ります。

握手会を例に挙げると、参加券を入手したときや入手後から当日までの間、当日列に並んだとき、握手したとき、握手したことを誰かに伝えるときなど、あらゆる場面の感情を想像してみましょう。

(2)感情を分解する
握手後に「嬉しい」があるとしたら、それはさらに何の感情で構成されているかを考えます。

たとえば「嬉しい」が、ようやく会えた「待望感」とアイドルが自分を受け容れてくれた「自己肯定感」で生み出されているとします。

そうしたら、そのふたつの感情を強める施策をうつことで、「嬉しい」の度合いはさらに高まるかもしれません。

※なお、感情を分解する際は、アメリカの心理学者ロバート・プルチックが考案した「感情の環」が参考になります。興味のある方は調べてみてください。

(3)同じ感情が得られるような競合を考える
自分たちの活動と感情面で競合になるのはどのような行為なのかを見つけましょう。

ライバルは他事務所のアイドルではなく、ファンのパートナーやこどもかもしれませんし、仕事やほかのアクティビティかもしれません。

2.施策を考える

(1)ひとつの感情を極める施策
ひとつの感情を得られる体験を徹底的に磨きましょう。

「応援されたい」人を励ますことに強みのあるアイドルは、握手会の代わりにメンバー全員がファンの背中を叩く激励会を開催したり、衣装は必ず応援団が着る学ランやチアリーディングのユニフォームをモチーフにするなど。

ほかの何よりも「応援されている感が得られるもの」として存在価値を高め、応援カテゴリーのトップを目指しましょう。

応援されたいときはあのアイドルのライブに行くとよいかもと、ファンが想起するようになるかもしれませんし、ファン以外の層にも興味関心を喚起できるかもしれません。

(2)他にはない複数の感情が得られる施策
「かっこいい」「かわいい」「おもしろい」「ハラハラする」「すごい」など複数の感情を得られる施策に取り組み、「他にはない多くの感情を得られるアイドル」という認識を獲得するのもひとつの手段です。

(3)同じ感情が得られるものとのコラボレーション
同じ感情が得られるような商品・サービスをライバルではなく、コラボレーション相手として迎え、掛け合わせてみましょう。いわば、異業種との対バンです。

たとえば、子育てに喜びを覚え、アイドルの応援から離れてしまったファンに、かつて推していたアイドルと自分の子供の両方の「成長の喜び」を感じてもらえるよう、ライブにファミリーシートを儲けたり、ファミリー限定イベントを開催してもよいでしょう。

「感情のコモディティ化」はどの業界にも影響する

今回はアイドルという観点でしたが、感情のコモディティ化は異業種を跨ぐため、どの業界に従事している人も向き合わなければいけない現象といえると思います。

「感情のコモディティ化」を考えるために、まずは自分自身の感情を理解することをから、はじめてみてください。

どんなときに、どのような感情が生まれるか自らを分析し、芽生えた感情をこと細かに記録してみましょう。

そこから「他者の感情の理解力」や「感情の分解の精度」が高まるでしょう。

■イベント告知

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ジェイ・タカハシ

PR会社、事業会社の広報を経て、現在はフリーランスでPR・広報、ライター業務に従事。PR・広報歴は13年で、プランニングから実行まで対応可能な「手も足も頭も動かすゼネラリストタイプのPRパーソン」。新潟生まれ。Negiccoとアルビレックス新潟とラジオをこよなく愛する。

Twitter https://twitter.com/jayjaytakahashi

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