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    編集者は社会をよりよくできる!
    NPOはなぜ編集者を
    求めるようになったか

    2019.10.30

はじめまして、大沼楽です。

僕は普段、編集者として「クライアント企業のオウンドメディア運営支援」、「NPO法人の広報、ファンドレイジング」という2つの活動を行なっています。

こうした活動を行うなかで、ひとつ、気が付いたことがあります。NPOなどの非営利領域において、「編集者」の需要が非常に高まっているのです。

今回のコラムでは、なぜNPOにおいて編集者が求められるようになったのか、そして、具体的に非営利領域で活躍する編集者たちの一例をご紹介します。

熱量を調整する存在としての編集者

NPOは営利を目的とせず、世の中に存在する課題解決を目的として活動している法人です。

国や行政による支援が不十分な領域、そもそも課題が存在することすら知られていないような領域に日々向かい合い、その解決に取り組んでいます。

そのため多くのNPOは「伝えたい情報」、つまりコンテンツを数多くかかえている。

「こんな課題があります!」「これは解決しなければならない問題です!」といったような、熱い想いと情報を持っているのです。

しかし、その想いの熱さは情報発信の場において、時として逆効果になってしまうことがあります。

課題解決のプレーヤー目線で発信された熱量のある情報は、情報の受け手側に拒否反応を引き出してしまうことがあるからです。

情報発信者の熱量と、受け手側が求める温度感のギャップを埋める必要がある。

講談社「現代ビジネス」の編集者で、UNHCRのメディア立ち上げ支援や、特例認定NPO法人e-Educationのウェブマガジン創刊・運営などの経験がある佐藤慶一氏は、この行為を「ネツを冷ます」と表現しています。

そうした、情報の温度を最適化し、コンテンツとしてアウトプットまで伴走する存在として、編集者ほど適した存在はありません。

たとえば、認定NPO法人難民支援協会は、「スタディクーポン・イニシアティブ」などで知られる編集者、望月優大氏を編集長として迎え入れ、2017年にオウンドメディア「ニッポン複雑紀行」をスタートしました。

「ニッポン複雑紀行」には、「かわいそうな人を助けて!」といったような、「ありがち」な表現はありません。

「難民」という、いまだ日本人が身近に感じているとは言い難い問題を、難民の方ひとりひとりの物語を丁寧に紡ぐことで「私たちの問題」として浮き上がらせています。

編集者が情報の温度感を調整して成功している良い例だといえるでしょう。

ファンドレイズライティング

また、NPOが編集者を求めるようになった背景には、寄付の主流が「少人数の裕福な人から大きな金額を募る」スタイルから、「大人数から小さい金額を募る」スタイルへ移行したことも大きく影響しています。

寄付のスタイルが変わった一番の理由は、クラウドファンディングの普及です。

クラウドファンディングは、ネットを通じて多くの人に課題を発信することで、広く寄付を募るシステムです。

そしてそのためには、課題領域に対して素人である人々にも伝わる言葉を使う必要があります。ここで、編集者が果たすことのできる役割は大きい。

実際に、日本初のクラウドファンディングサービスである「READYFOR」は、積極的に編集経験者を採用することで、クラウドファンディングを行うNPO等に対して言葉の支援を行なっています(また、READYFORは編集者・ライターである徳瑠里香氏を迎え、自社のnoteも運用しています)。

NPOは発信したい情報を数多く抱えているがゆえに、クラウドファンディングの場で、最終的なアウトプットメッセージがぼやけてしまうことがあります。

そこで編集者がNPOに対してインタビューを行い、メッセージを「編集」することによって、より多くの人の共感を呼ぶクラウドファンディングが実施できるようになるのです。

READYFORはこうした編集技術を「ファンドレイズライティング」と名付け、その普及に努めています。今後、確実に需要の増加が見込める分野なのではないでしょうか。

共感を集めづらい分野に、いかに関心を呼び込むか

「編集」を介することにより広い層へのリーチに成功した例としては、クリエイターエージェンシー、株式会社コルクの取締役副社長である黒川久里子氏が立ち上げた「せりか基金」がよく知られています。

「せりか基金」は、かつては専門家の間で「完全犯罪」とまでいわれていた難病、ALSに対する治療法開発費を集めるため、2017年に立ち上げられました。

ポイントは、コルクがエージェンシーを務める小山宙哉氏の漫画『宇宙兄弟』(講談社)をベースに組み立てられた基金であるという点、ALS当事者ではなく、治療法開発に対する支援を行なっているという点です(「せりか」というのは『宇宙兄弟』に登場する、ALS治療法開発に取り組んでいるキャラクターの名前です)。

難病当事者を前面に押し出し、「大変な彼らのために寄付を!」と呼びかけることは簡単です。

しかし、「せりか基金」は物語を用いることで課題に対する深い理解を促し、治療法開発費といった、一見して共感を集めづらい分野に対する寄付集めに成功しています。

「せりか基金」は、寄付者の多くを寄付未経験者が占めています。「編集」を通じて、これまでの寄付者層とは異なる人々に対して、情報を届けることができた例といえるでしょう。

コミュニティ編集とNPO

黒川さんが所属するコルクの代表、佐渡島庸平氏は、今では当たり前のように語られるようになった「コミュニティ」を編集することの重要性を、とても早い段階から説いていました。

「コミュニティの編集」は、やはりNPOの領域においても重要度を増しています。NPOに対する寄付の主流が「単発寄付」から、「長期的な寄付」へと移行しつつあるからです。

これは、社会課題の多くが長期的に取り組まねば解決しないこと、そしてネットの発達により、「毎月1,000円の寄付」といったような自動引き落としシステムの導入が容易になったことが影響しています。

長期的な寄付を維持するためには、寄付者との定期的な交流、継続的な情報発信によるコミュニティの形成、編集が不可欠です。

こうしたコミュニティ編集の成功事例としては、編集デザインファームinquireのモリジュンヤ氏や、LITALICO社長室チーフ・エディター鈴木悠平氏などが参画しているNPO法人soar(代表 工藤瑞穂)が挙げられるでしょう。

soarは頻繁なnote更新などによる寄付者とのビジョン共有を通じて、「NPOと寄付者」という関係を越えた、ひとつのコミュニティのような関係性を実現しています

2017年時点で150人だったサポーター(定期寄付者)は2019年10月に750人を突破。これは圧倒的な成長率です。

また、soarはnoteやTwitterの更新のみならず、定期的なリアルイベントの開催や、ハーブティーなどのオリジナルグッズ開発を通じて、カルチャー、コミュニティの編集を行なっています。

これはNPOのみならず、様々な分野での「編集」の参考となる取り組みなのではないでしょうか

編集者は、社会をよりよくできる

今回紹介した以外にも、『編集会議』の鈴木洋平氏を迎えいれた一般社団法人リディラバ(代表 安部敏樹)や、編集者を募って10代向け情報発信メディア「Mex」を運営する、認定NPO法人3Keys(代表 森山誉恵)など、非営利団体が編集人材を登用する例はどんどん増えています。

NPOは、社会のシステムから抜け落ちてしまった課題領域をカバーするために活動を行なっている団体です。

課題を発見し、情報や人を集めて繋げることで解決を目指す。そうした活動を行なっているNPOと、「編集」の相性は非常に良い。

編集者の働き方も多様化している現在、こうした非営利領域にコミットし、社会のあり方を「編集」する編集者が増えていけば、世の中を少しずつでも前進させ、より良い場所にしていくことができるのではないか。僕はそう思っています。

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