コンテンツを作る編集者にとって、もはや「動画」は無視できないものになりました。企業も個人も、TwitterやInstagramなどのSNSで動画コンテンツを発信することは当たり前。
街ゆく人のスマホの画面をちょこっと覗いてみれば、そこには高確率で動画が流れている。そんな時代になりました。
今回は経済ソーシャル経済メディアNewsPicksの配信番組「WEEKLY OCHIAI」「TheUPDATE」などのダイジェスト動画を手がけるクリエイター・タカオミさんにお話をうかがいました。

もともと動画制作を志したわけじゃない
──まずはじめに、なぜ動画クリエイターになったのか、簡単にキャリアを振り返ってもらえますか?
もともとバンドで音楽活動をしていました。でも、音楽の世界で成功する未来はあまり見えず。
ただ、ミュージックビデオとかが好きだったので、映像の専門学校に通うことにして。動画のキャリアはそこからですね。
卒業後もとくに内定がなかったので「英語もできれば仕事につながるだろう」ぐらいの考えで、カナダに行くことにしました。
カナダにいるとき、専門学校時代の知り合いの方から動画の仕事をもらって、それがインタビュー動画の編集でした。
──いまの仕事に近い形式ですね。
そうですね、イベント動画とか対談の動画をいくつか作りました。で、その後に箕輪厚介さん(編集者・幻冬舎所属)のオンラインサロン「箕輪編集室」に入りました。
メンバーはまだ少ないときでしたけど、人が集まってきていて「きっと何かあるんだろう」という感じでしたね。
ある日、箕輪さんが堀江さんと映ってる動画と一緒に「誰か、これでイベント(定例会)の告知動画を作って欲しい!」みたいな投稿をしていたのを見て、作ってみたんです。
そうしたら箕輪さんも「いいじゃん!」ってすぐにTwitterに載せてくれて、僕のフォロワーも増えていって。
その後もそういう機会が何度かあって「タカオミ=動画」というイメージになっていったんだと思います。
──NewsPicksの番組ダイジェスト動画の仕事はいつからですか?
去年(2018年)、NewsPicksがONE MEDIAの明石ガクトさんと「動画ブートキャンプ」というイベントやっていて、NewsPicksの動画制作の方とお会いして、番組のダイジェストを作ることになりました。
“読ませる”動画にこだわった
──タカオミさんが作るダイジェスト動画で特長的なのが、動く字幕ですよね。目がいってしまうというか。
ローワーサード(Lower Third ※テロップに動きのついたもの)というものですね。
昔からあった手法だとは思うんですけど、カナダにいた当時、海外の動画ではこういう字幕は結構多くて、とくに番組の冒頭で見出しやタイトルとして使っているのが多かった。
目を引く、いわゆるアイキャッチ的な要素なんですけど、これで全部作っても面白いんじゃないかなって。
『WEEKLY OCHIAI』って番組は対談番組なので、とにかく話している内容を伝えたい。
読ませたいと思ったとき、やっぱり動いているものを目で追ってしまうので、この作り方にしています。
──最初からこのアイデアだったんですか。
いや、最初に作ったものはこの形じゃなかったんです。モーションも少なくて、いま思えばすごく読みづらかったと思います。
2本目を作ったときにこの動きにしたら、再生数がグッと伸びて。この方がいいなと。
──いろいろと試行錯誤しているんですね。
その後も、少しずつ変えているんですよ。だんだん文字の出し方も「シュッ」っと勢いがあるような形にしたり。
あと、これも箕輪さんにアドバイスもらったんですけど「一つのテーマを深く掘り下げちゃう方がいいんじゃない」ってことになって。
僕のダイジェストってTwitterとかSNSに投稿されるんですけど、だいたい1分前後のもの。
その1分の動画の内容がしっかりわかるようにしたんです。これも再生数が伸びていきましたね。「それを見れば内容はほぼわかってしまって、極端な話、本編観なくてもいい」ぐらいのダイジェストにしています。
──本編観なくてもいい…(笑)
ビジネス的には難しいのかもしれませんけどね(笑)。その1分できちんと理解して「もっと観たい」と感じた人が残ってくれればいい。
落合さんの考え方とか情報が正しく広がって行くことの方が大事だと思うので。もちろん、いろんな考え方があると思うけど、これは僕の意思ですね。
視聴環境を想像する
──観てもらうために、とてもユーザーファーストな作り方なのが伝わってきます。
自分だったらどうやって視聴しているかな、というのを考えるんですけど、まずスマホで観ますよね。
さらにTwitterのタイムラインの中となるともっと画面が小さい。やっぱり文字を目立たせるのはマストだなと。
通勤時間で、電車の中だったら、スマホを横にしないだろうし、音も出さないだろうし。テキスト読んでもらわないと始まらないなって思うんです。
「読んでもらいたい」が強すぎて、実は文字もちょっとずつ大きくしていったんですけど、それで「さすがに大きすぎる」って怒られたこともあります(笑)
複雑な内容だと1分で伝えきれない。意味がわかるためにこれ以上削れないよってところまで削る作業ですね。
ユーザーの“声”を反映する
──あと、60分の番組やイベントを1分のダイジェストにする場合「どこを使うか」も重要だと思うんですが、ポイントはありますか?
そうですね。僕のやり方は3つあって、1つ目は、番組であればリアルタイムで観ているユーザーのツイートよく見て、ここが議論になっているな、反響大きいぞっていうところをダイジェストにまとめるやり方ですね。
2つ目は、長い時間の番組でも、「要するに言いたいことはコレだな」っていう場面があるので、そこを抜き取ること。現代文の問題の「この文章の趣旨を答えなさい」みたいなことです。
3つ目は、俺自身が「この言葉、感動したわ!」って思ったところです。1つ目とけっこう被ってくるんですけどね(笑)
伝えたい要素っていっぱいあるので難しいんですけど、一つの動画にアレもコレもって詰め込むと何もも刺さらなくなっちゃうし、伝えたいことは一つに絞るようにしています。
──SNSですぐにユーザーの反応を知って、改善できるのは面白いですね。
はい。なので引用リツイートとか、めちゃくちゃ観てますよ。
飽きられてるな、とかも敏感になってて、アイキャッチのための文字のアニメーションもずっと同じだと飽きられて、そのアニメーションが観るのを邪魔をしているってことになる。
だから、少しずつ変えたり。まあ、自分自身が飽きてくるっていうのも強いんですけど(笑)
動画制作を始めたい人へ
──これから動画作りたいと思っている人や、編集者は何から始めればいいんですかね?
まずは「作ればいい」って思います(笑)。いまはスマホでも撮れますし、YouTubeやTiktokで動画は簡単になって、これから動画制作は”ベーシックスキル”になっていくような気がします。
──とはいえ、タカオミさんのようなモーションを使ったカッコいい動画を作るのはなかなかハードルが高そうに感じます。
僕はAdobeのAfter Effectsというソフトを使っていますね。画を繋ぐのはAdobe Premiereというソフトでやって、その後にAfter Effectsで動きを入れています。
僕も最初そうだったんですけど、まずはテンプレートがたくさん売っているので、それを買って、いじりながら使ってみるのが一番早いかもしれないですね。テンプレが参考書代わりになるというか。
あと「かっこいい」という点で、表現を身につけるなら、やっぱりインプットの質を上げることが大事だと思っています。
チラシとかポスターとかでもいいし、ゲームのUIでもいい。動画のビュジアルに応用できるものはたくさんあると思います。「雑誌のこの文字なんか好きだな」とか「最近は斜体のフォントが増えたな」とか、そうやって吸収し続けるしかないのかな。
そういった「手法」に著作権はないので(笑)。パクって作ってみるのがいいと思います。
──ありがとうございます。今後、動画クリエイターとして作っていきたい作品はありますか?
うーん、そもそも動画クリエイターとしてずっとやっていく気も強くなくて(笑)。「音楽も内包できるメディア」として動画があったという感じなので。
それでも、今日話したような、ロジックで積んでいくような動画は結構作ってきたので、次はアート寄りというか世界観を作りこめるような動画はやりたいと思いますね。

富澤友則
1986年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。新聞社、スタートアップ、外資企業など異なる規模の組織を経験し、現在はNewsPicksのマーケティングチーム所属。編集・執筆、マーケティングコンサル、動画ディレクション、バーテンダーなど副業多数のパラレルワーカー。
Twitter: @Tmizzer_jp:https://twitter.com/Tmizzer_jp