• インタビュー

    『がっちりマンデー!!』
    チーフディレクターに聞く!
    わかりやすさの作り方

    2020.01.10

日曜午前7時30分~放送中の、毎週特定のテーマで儲かり情報を伝える経済バラエティ『がっちりマンデー!!』。

お金儲けやその仕組みがわかりやすく学べる番組という唯一無二の立ち位置で安定した支持を得ている。前身となる『儲かりマンデー!!』から15年以上続く人気番組だ。

番組にファンが多い理由は、なんといってもわかりやすさ。

経済・ビジネスといった難しくなりがちなジャンルを、たった30分の放送(正味26分の放送)で、視聴者が楽しみながら、驚きと納得感を得られる形で届けてくれる。

「わかりにくいことをわかりやすく説明することについては、相当考えています」と語るのは、TBSの大松雅和チーフディレクター。

大松さんに、「届けるための伝え方」について、その方法論からすぐに活かせるテクニックまで教えてもらった。

また、番組と連動したオリジナル記事をnoteで発信する『がっちりスクール!!』の狙いも聞いた。

難しい内容も「中学生が知っている言葉だけ」で説明する

―経済やビジネスにまつわる専門的な内容にもかかわらず、『がっちりマンデー!!』は何気なく見ていても理解ができます。「わかりやすさ」「伝え方」へのこだわりはどんなことでしょうか?

「やさしい言葉を使って説明しなきゃいけない」とディレクターには常々言っています。「知らない人に向けて、知っている言葉を使って伝える」ということですね。

説明相手として想定しているのは、「中学生」です。

同時に、テレビは子どもからお年寄りまで幅広い年齢の方が見ますから、「スマホ」って言葉は中学生はわかるけどお年寄りは通じるかな? というところから細かく確認しています。

番組をつくっている側は取材もしますから、取り上げるテーマについての知識が自然と身についていきます。ついつい見ている人も知っているだろうと説明を省いてしまいがち。

現場に行かない私が客観的な立場で指摘したり、伝わりやすい言葉に置き換えたりをしています。

「ん?どういう内容?」と視聴者が引っかかるキーワードを探る

難しそうなテーマを扱った放送回だと、たとえば「シェアリングエコノミー」を扱ったとき。

ここ数年、物・場所などを多くの人と共有・交換して利用するビジネスがたくさんありますが、これを「シェアリングエコノミー」という言葉を使わずに説明することを試みました。

カーシェアリングや、空き部屋を貸し借りするAirbnbなどの「遊休資産を活用する」シェアリングエコノミーって、利用する側にとっては、「1日いくら」「1時間いくら」という「時間あたりいくら」のサービスですよね。

シェアリングビジネスはすでにいろんなサービスがあり、いろんなところで語られてもいましたから、「分あたりいくら」とさらに細分化して、今はここまで進化した「分刻みビジネス」として紹介しました(19/9/22放送『儲かる!分刻みビジネス』)。

「シェアリングエコノミー」よりも、「分刻みビジネス」と言われると知ってみたくなりませんか。

「分刻み」と「ビジネス」という言葉は一般的な組み合わせではないため、意外性もあります。

ビジネスに詳しくない人に説明するには?と考えてみる

―「シェアリングビジネス」を「分刻みビジネス」に置き換えるときなど、どういう思考回路なのでしょうか。わかりやすく言い換えるときの方法を知りたいです。

まず「田舎に住む自分の親に電話で説明するとしたらどうするだろうか」という観点で考えています。

「今、すごいビジネスがあってさ~」と、ここからの続きをどう伝えるか。

「シェアリング」では通じないだろうから、「いろんなものを小分けにする時代でね」とか「分刻みのビジネスなんだよ」とか。言葉を因数分解していく感覚です。

そうやって、番組で説明するときのナレーション原稿もつくっています。

難しいのは、わかりやすく伝えると同時に、ちょっと面白くもしないといけないこと。「経済バラエティ番組」ですからね。

情報を面白くするとは、興味をいかにして引きつけるかということ。

「分刻み」と「ビジネス」のような意外な組み合わせや、驚きの要素を入れないといけません。

例えば、引っ越しとリサイクルを同時に行うサービスや、ブランド服のタグを付け替えて売る会社などを紹介した『儲かる!リサイクルウォーズ』(19/9/8放送 )では、なぜ「リサイクル」で「ウォーズ」なの? 戦争なんて起きてたの!? という引っかかりをつくりました。

「ちょっとネガティブなほうにひっくり返す」手法もよく使います。

あえてネガティブな言葉を入れて興味を引く

儲かるビジネスを紹介する番組という前提があるなかであえて、「儲かる〇〇ビジネス」の○○ところに、‟儲からなさそうな“ネガティブな言葉や、マイナスの印象を受ける言葉を入れます。

たとえば、『儲かる不毛の地ビジネス』(19/11/10放送 )。

「不毛の地」と「儲かる」とは真逆の意味がありますよね。

そこを、特定の商売が全く根づかない地域「不毛の地」でビジネスが成功すれば一人勝ちできる! と定義し、離島に進出した牛丼チェーン・吉野家や、納豆嫌いが多い大阪でバカ売れする納豆メーカーを紹介しました。

ネガティブな言葉を使うとは、企業の発信する言葉をニュートラルに置き換えることでもあります。

たとえば、客席まで商品を運ぶテーブルデリバリーのサービスを始めたマクドナルドや、ソースの2度づけを解禁した串カツ田中を紹介した『儲かる!地味チェンジ』の回(19/11/24 )。

マイナスイメージを与える「地味」は、企業が発信するときには決して使われません。

でもうちは、広報番組ではありません。企業なら絶対に使わない言葉を「宣伝でもCMでもない」フラットなスタンスを表現するためにも使います。

正確さ≠伝わりやすさ。思い切ってトレードオフを

紹介する会社さんと、意見がぶつかるところではあるんですけどね(苦笑)。

電車広告でよく見るけど知らない会社』(19/12/1放送)で、「年商1兆円を稼ぐ謎の会社」として取り上げた東京エレクトロンさんは、半導体製造装置を造っているメーカーさんです。

「半導体製造装置を造っているメーカー」では、何をしている会社なのかわかるような、わからないようなところがありますよね。会社のHPを見ると、「半導体製造で、夢のある社会に貢献します」と書いてあります。

もっとよくわからない(苦笑)。

まず「半導体」を「スマホに入っている大事なもの」と噛み砕いた表現に変えました。番組側は「スマホに入っている大事なものを造る機械を、造っている会社」にしました。

ところが東京エレクトロンさんからは、「機械」じゃなく「装置」と伝えてくださいと指摘がきました。

「造るだけではなくメンテナンスなども行いますから、造っているではなく『提供している』にしてください」とか。

企業さんの発信したいメッセージとして理解できるのですが、これだと伝わりません。

互いの意向の折り合いをつける話し合いは、毎回ありますね。

マイナスやネガティブなキーワードから入るのは「フリ」であって、フリがマイナスであればあるほど結果的には、「この会社すごい!」と良い印象を与えることにつながります。

企業さんには、「最終的には、こっちのほうがオイシイですから!」と納得してもらっています(笑)。

企業がPRする言葉は、「正確に伝えようとするあまりわかりづらくなる」ことが往々にして起こります。

プレスリリースがいい例ですが、100%正確に厳密に伝えようとするゆえに、説明が長いし複雑でよくわからない。正確さ≠伝わりやすさではないので、そのトレードオフは重要です。

そうなんだ! と見る人が驚ける切り口を探る

―1カ月~2カ月に一度、特定の儲かり企業を取り上げ、社長が登場する回があります。切り口はどのように考えていますか?

「ざっくり解説したらどんな会社だろう?」「『がっちりマンデー!!』っぽいキーワードを何に設定しよう?」と、毎回その会社さんについての記事や資料を読み、打ち合わせをするなかで探っています。

2月以降に、サンリオエンターテイメントという会社を取り上げます。

サンリオピューロランドをV字回復に導いた元館長・小巻亜矢社長が行った施策は、「あいさつをする」「朝礼をする」「スタッフに名札をつけた」「キティちゃんの顔のエッジをなくした」などなど。

これらの施策に通底する経営方針を一言で語るとしたらなんだろう……と考えていきます。

小巻社長が行ったのは、朝礼でスタッフ間の距離を、名札で名前を憶えてもらうことでお客さんとスタッフの距離を、人間関係を縮めることでした。

強引ですが、要は「仲良しで儲ける!」です。

現状、私の頭の中には、『仲良しで儲ける! サンリオエンターテイメント』というタイトルが出来上がっています。

小さいものは小さく、大きいものは大きく撮る

わかりやすさ」を映像でどのように表現しているんですか?

たとえば、前述した東京エレクトロンさんだったら、「製造工場が大きいとわかる画を撮ってくる」。

一方で、半導体メーカーさんならば、「製品が小さいことがわかる画を撮ってくる」ということ。

小さいものならどんどんズームする画とか、その大きさが単体では表現できないならば何かと比較させるとか。

あとは、「面白いポイントで撮ること」

『がっちりマンデー!!』でいう面白いポイントとは、

「その会社やサービスの仕組みが面白いか」
「映像として面白いか」
「人が面白いか」

の3つしかありません。

ナゾのがっちり会社「日本信号」』(19/12/15放送回 )では、自動改札機の生産工場に潜入させてもらいました。

その際の面白さとは、
「1台の自動改札機に30個のセンサーが付いていることで、1分間に70人も通過する人を判別できる現象の妙」と、「熟練の女性スタッフが改札機のカバーを手で組み立てている妙」。

その2つを活かした映像を撮っています。

ただ、何が面白ポイントかは、現場に行って初めて判断できること。

放送したVTRでは、最新の自動改札機では「人が1分間に70人通れる」との説明が映像で流れますが、実は、1回目の取材でこの映像は撮れていませんでした。

だから再度、撮影に行ってもらい「1分間で70人にセンサーが反応できるとは、どれぐらいの間隔なのかがわかる映像」を撮ってきてもらいました。

この画は必要です。「1分間70人通れる」のように、数字を画で表現するのはがんばらないといけない部分

いかにして数字のすごさや大きさを画で表すか

『がっちりマンデー!!』は特に、数字を扱うことが多い番組です。「売り上げ1兆円」を、いかにして「1兆円感」を出すかが大事。

わかりやすいのは、誰もが知っている大企業と並べて「○○のようなもの」と喩えるか、「TBSの4倍です」と比較で見せるか。

画ではどうするかというと、東京エレクトロンさんならば、オフィスビルがTBSと同じ赤坂にあり、それも隣にあるんですね。

東京エレクトロンさんは38階で、TBSは20階建て。TBSの社屋を映してから、それよりも高くて大きい最新ビルに入っているオフィス! という画を撮りました。

「なんとなくすごそうな1兆円感を伝える」ということですね。

『儲かる不毛の地ビジネス』では、「不毛の地とは」を説明するのに荒涼とした景色の画を入れています。

不毛の地だけどすごい! を説明する「フリ」に当たる部分なので、欠かせない画となります。

私が映像を修正するのは、「すごい!」を説明するときの、「すごい!の見せ方」が足りないときです。

面白いコンテンツには「フリ、オチ、フォロー」がある

「一般的にはこうだけど、こうだからすごい!」と見せないといけないのに、「ふつうはこうですよね」を省いて「すごい!」だけを伝えてしまうのはダメな内容です。

担当するディレクターは、1度取材に行くと相手を知り過ぎてしまいます。

視聴者の初見の感覚を忘れて、話を進めてしまいがちですが、「ふつうはこうですよね」と提示されて、「そうそう!(知っている)」や、「ふつうはそうなんだ!(知らなかった)」があってはじめて、その後の情報に驚くことができます。

萩本欽一さんの有名な言葉に、「笑いは、フリ、オチ、フォロー」というものがあります。

「今、こうなんだけど(フリ)、こんなことが起きちゃった!(オチ)、なんでそうなるの!(フォロー)」という3ステップ。状況を伝えて、そこからの落差で驚かせて、最後にそこに共感することで、笑いが起きると。

番組も同じ。

「普通は…」と前提を伝えて(フリ)、「え!?」というような驚きを伝えて(オチ)、「そうそう…」実はみなさんの身近にもあるんですよ(フォロー)という。

番組内でのVTRの時間は20分と制限があるので驚きの前提となる、「わかっているでしょ?」を省きたくなりますが、飛ばしてしまっては伝わらないんです。

「こういう画を足して」「もう一回撮影してきて」などと指摘するのは私の役目ですね。

あとは、図解のイラストを入れたり、正確なテキストでテロップを入れたり、ひたすら細かい創り込みをして番組をつくっています。

テレビ番組だけでは届かない人、届けられないものがある

―今年の8月から、noteで番組と連動したオリジナル記事の発信をスタートされました。テレビ番組×ウェブの試みで何を目指しているのでしょうか。

テレビ以外の伝え方を試してみたい。これがそもそものきっかけです。

30分番組では、取材や収録で得た有益な情報もこぼれ落ちるものがたくさんあります。知り得たことの、ごく一部しか伝えられていないもどかしさがありました。

時代も変化し、テレビだけでは届かない人や、届けられないものがあることも感じていました。

テレビは、全体に一斉に届けるコンテンツです。

番組に興味を持っている方の中には、もう少し細かいことや踏み込んだ内容を知りたいなどあるはず。テレビ番組ではあえて、わかりづらいと捨てている部分を届けることができると考えています。

もう少しビジネスの勉強をしたい、お金に詳しくなりたいといった「日経新聞は読まないけれどスマホのニュースアプリで経済ネタはチェックする」という20代-40代に向けた「儲かる」「役立つ」情報を届けていくつもりです。

現状はこちらからの一方通行の発信ですが、視聴者や読者の方からの「もう少しこんなことを知りたい!」や「こんな情報もありますよ」などとやりとりしながらつくる双方向のメディアになる将来像を見据えてもいます。

がっちりマンデー!! note編 がっちりスクール!!

■プロフィール
大松雅和(おおまつ・まさかず)
岡山県生まれ。1996年、TBS入社。情報システム部門に配属後、1998年より制作部門へ。2004年の放送開始から『がっちりマンデー!!』を担当。番組作りのモットーは「分かりやすくと面白くの両立」。趣味はマンガの多読。最近は、体中に電気を流す「電気ジム」にはまっています。

平山ゆりの

フリーランスのライター・エディター。1981年京都生まれ。新卒で入社した出版取次会社で2年書店営業に従事。日経BP社で雑誌記者&編集者を経て、2012年よりフリーランス。書籍の編集・構成、雑誌やウェブの対談やインタビューなどを中心に活動し、市井の人からタレント、クリエイター、経営者、教育現場まで1000人超の声を聞いてきた。取材相手に寄り添いすぎず、「フェアに書く・伝える」が信条。主な企画・執筆媒体は『日経エンタテインメント!』『日経DUAL』『NewsPicks』『ハフィントンポスト』。小説、マンガ、映画、家族、子育て、共働き夫婦、公教育、地域コミュニティに関心。二児の母。

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