言葉の障壁を壊して民間の友好団体を作りたい
「12時間でマスターする日本最速中国語講座」主宰の陳氷雅さんに話を聞いた。
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言葉の障壁を壊して民間の友好団体を作りたい
「12時間でマスターする日本最速中国語講座」主宰の陳氷雅さんに話を聞いた。
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JOB中国語は最高のグローバルランゲージ

──陳氷雅さんはどうして日本にこられたのですか?

私は中国の大学で日本語を専攻していました。私の担当の教授が村上春樹の翻訳家だったことから、影響をうけて日本の昭和文学に興味を持ち、太宰治を研究しようと思いました。上智大学の太宰の専門家である安藤宏教授の許で学ぶことを考えましたが、教授は東大に移られてしまった。じゃぁ、日本に行って東大を受験しようと。中国の大学を卒業した後、東大の大学院で日本文学を学ぶと決めて2010年に日本に来たんです。でも、受からなくて東大を二浪しました。

──日本で二浪して、それから早稲田大学に入学されたわけですね。

はい。実は中国の大学に在学中、日本の企業やテレビ局、新聞社の駐在員たちに向けて中国語を教える先生をやったり、教材の編集などの仕事をしていました。中国語教師研修プログラムで知り合った早稲田大学の教授から「教育現場の経験が豊富だから、中国語教育をやらないか」とお声をかけていただき、結局、東大はあきらめて早稲田を受験して入学しました。

──そこから中国語の先生をされることになったのですね。

中国語を教えるようになって今年でちょうど10年になります。中国人向けの日本語教育もしていましたが、日本語教育において他の講師と差別化できるようなコンテンツを作っていなかった、ということと中国語教育の方が圧倒的に教育現場の知識が豊富で、体系的にまとめたコンテンツがあるということから、中国語教育に絞ることにしました。

──卒業後は中国に帰ろうとは思われなかったのですか?

2014年に卒業し、日本に残るか、家に帰って中国で仕事をするかですごく迷いました。個人で中国語の先生というのでは将来性はありません。父親からも「早く帰ってきなさい」と言われました。そのとき、自分で自分に「日本で何をしたいの?」と問いかけました。日本人に7年も教えてきたのでコンテンツはある。実は日本人は中国語学習で苦しめられていたんですね。発音が難しいとか漢字が難しいとかで。そういう状況を打開したいと考えました。自分が築いてきた学習方法は日本の方に必要とされると思ったんです。

──そこから本格的に中国語学習に取り組まれるようになった。

それで、自主開催の中国語セミナーをやることにしました。早稲田大学近くのレンタルスペースを借りて。でも、集まったのは5人。そのうち2人は友達(笑) まあ、今も5人の少人数スクールなので状況は同じなんですけどね。

──日本人は中国語学習で苦しめられていたというのは?

皆さんは中国語を学ぶには最低でも3年は必要だと考えています。だけど私は12時間で中国語会話の基礎を身につける、というノウハウをコンテンツにしています。短期間で中国語を身につけるためのコーチです。皆さん、インプットはかなりあるのですが、アウトプットの量が足りないんです。それをコーチングしながらインプットされたものを最速でアウトプットするお手伝いをしています。

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──中国語の魅力とは?

中国語を話す人口は圧倒的に多いです。日本に中国人が経営する中華レストランが多いように、人間が営んでいるところには必ず中国人の経営する中華レストランがあります。たとえば、スペインの田舎に行ったとしたら、英語はまず通じません。でもそんなところにも中華レストランはあります。中華レストランに行けば中国語が通じます。私の友達のバックパッカーもトラブルがあったときに中華レストランの中国人に何度も助けてもらったといいます。中国語ができたら世界中で会話ができるんです。

──今後はどんなことをお考えなのですか?

今は12時間でマスターする日本最速中国語講座を法人化したいと考えています。理想としては、一般社団法人で日中筆談普及友好協会というものを作って、日本の高校生と大学生に向けて中国語で筆談することを広めていきたいと思っています。筆談できるようになると世界のどこに行ってもそこにいる中国人とコミュニケーションが取れます。中国語は最高のグローバルランゲージです。それを広めたいです。

私が日本語に興味を持ったことと関係するのですが、言葉の障壁があるとマスコミのいいなりになってしまいます。国と国だとそれぞれの立場あるからどうしても反発が起こります。でも、ひとりの人間として対等にお付き合いすると優しくて魅力的な人が多いものです。言語障壁をちょっと壊して民間の友好団体を作りたいと思っていて、それに向かって頑張っているところです。

LIFEセーラームーンに憧れて麻布十番へ

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──そもそもどうして日本語に興味を持たれたのでしょうか。

私の生まれは中国浙江省温州という、海岸沿いにある町なんですが、向かいが沖縄。もう少し下がると台湾なんですね。台湾からは親日の情報が流れてくる。なのに、中国内からは反日の情報が流れてくる。親日と反日、どちらを信じたらいいのか、それを私は自分の眼で確かめたかったんです。それで日本語を学んで日本に行きたいと思うようになりました。

──日本で差別されることはありませんか?

中国人だからと差別されることはありませんが、若い女性だということでハラスメントを受けることはあります。人種差別というより、女性差別を感じることはあります。日本人女性と同じ悩みだと思います。

──教室は麻布十番にありますが、お住まいも麻布十番なんですね。

麻布十番で中国語学習の教室をスタートさせたのは2015年からで、住みだしたのは2016年からです。
私はアニメの『セーラームーン』が大好きなんです。中国で『セーラームーンが』放送されたのは私が14歳のころでした。セーラームーンも14歳で同い年だったのでとても共感しました。そのセーラームーンが住んでいたのが麻布十番だったんです。「麻布十番」というのは私が初めて覚えた日本語の地名でした。実在する地名と知って、縁があったら麻布十番に行ってみたいと思っていました。

──住んでみてどうでしたか?

麻布十番から私はめったにここから出ません。教室もここにあるし、執筆や食事ができる場所もこのあたりにいっぱいあります。ここは私の原点のように感じています。14歳のときの夢が28歳のときに実現できた。初心に戻ったような感じです。

LIKEシルクロードはいつか制覇したい

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──趣味のようなものはありますか?

趣味は旅行と読書と映画鑑賞です。旅行はバックパッカーでひとりで行くのが好きです。最近は行けていませんが、シルクロードにはまっています。私の人生の師は三蔵法師(玄奘三蔵)なんです。玄奘三蔵は28歳で国禁を犯してインドに行って仏教を持ち帰り、翻訳をする事業をしています。私の人生のビジョンととても似ています。趣味のひとつである読書ではビジネス書を読んでいます。1日1冊くらいのペースで読んでいますね。中国はいま、爆買いなどといわれるように好景気ですが、いずれは収束していくでしょう。すると日本と同じようにバブルを超えてゆとり世代やさとり世代に向かっていくと思います。そういう人たちの心の支えになるのは今の日本のビジネス書にあるようなコンテンツだと思っています。そういうコンテンツを中国に紹介する橋渡しを玄奘三蔵のように担いたいと思っています。

──三蔵法師のお供の悟空とか沙悟浄、八戒はいるのですか?

私は一匹狼な性格なので、全部、自分で抱え込んでしまうんですよ。人に頼むことは苦手。でも今後は少しずつ、人に頼っていきたいなと思っています。シルクロードもいつかは制覇したいと思っています。

──趣味も目的があっての趣味なんですね。

中国と聞くと「パンダ」「中華」「赤い」とイメージすると思います。でも、中国はオシャレになっているので、オシャレな麻生十番でオシャレな中国語に触れて欲しいです。ステレオタイプの中国ではなく、クールビューティな中国もいいんじゃないかなと思っています。日本の皆さんにとって、中国をもう一度、再認識していただける切っ掛けをつくれたらいいなと思っています。

CHANGE自分の才能を信用したから頑張られた

──転機はどんなことでしたか?

転機となったのは2014年に行った自主開催のセミナーですね。そこから半年間、お金を払って他の人が開催しているさまざまなセミナーに参加するようにしました。お金をすべて投資したので、家賃も滞納したりして大家さんから「早く払ってください」と催促されてしまうこともあって、本当に追い出される寸前でした。そのころは1日、カップ麺1食の生活でした。

──どんなセミナーに参加されていたのですか?

いろんなセミナーです。語学だけでなく。人に受け入られられるセミナーとはどんなセミナーなのかが見たかったんです。中国ではセミナーというのはメジャーではありません。私は日本に来てセミナーというものがあると知りました。でも、私が自主開催の中国語セミナーをやるようになったことが切っ掛けで書籍のオファーもきたし、中国語学習のコンテンツも固めることができました。

今は、12時間でマスターする日本最速中国語講座といっていますが、最初は24時間だったんです。それを何度かセミナーをやることで「ここも削れる、ここも削れる」と、削って削っていって12時間になりました。そのため、2017年に刊行した『筆談で覚える中国語』はオファーをいただいてから書き上げるまで2年かかりました。2年間で4回くらい書き直しています。削って削って160ページまでコンパクトにしたんです。

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──大変だったのですね。

いまでも大変なんですが、いろんなセミナーにいっている時期はとてもひもじくかったです(笑) セミナーに行くとその後、親睦会があるんですが、それにも参加しないといけません。親睦会1回の参加費は私の1週間分の食費なんです。

──なぜ、そこまで頑張れたんですか?

自分の才能を信用したからです(笑) 中国語の言語障壁を壊すというミッションは私にしかできない、と気づいたからですね。日本で中国語を教えている先生は年配の方が多く、カリスマで伝統的な教え方をされています。私は若いから革命的な教え方ができる。それは自分にしかできないと思ったんです。だから、自分を信じようと思いました。

SENSE少ない努力で最大限の結果を

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──最後に陳さんにとってのセンスとは?

私にとってセンスとは『絞ること』です。センスのない方は多くのものを見ようとします。「これも大事、これも大事」って。でも、本当に必要なものだけを見極める能力がセンスなんです。中国語も同じです。私が教えている方々は学生さんではありません。学生だと時間はたくさんあるでしょうが、大人の時間はすごく限られています。だからこそ、自分にとって一番大切なモノ、根本的に必要なモノを見極めることが大事になります。少ない努力で最大限の結果につながるやり方に絞り込めることが、センスだと思います。

──陳さんもコンテンツを絞って絞っていかれたわけですからね。

多くの方は完璧なことがセンスだと思ってらっしゃいます。私にとって完璧はセンスでなく、「ここはやらない」と決めたことは諦めて、自分の得意な部分に専念することがセンスだと思っています。

皆さん、語学は完璧でないと恥ずかしいと思っていらっしゃいます。完璧に話そうとされます。けれど、そんなことはネイティブスピーカーでもできないことなんです。日本の方は高い目標を設定される。それが「いいセンス」だと思われています。実はそうではなく、語学というのは自分のできるところにぶっかっていくことがセンスだと思うんですね。

(2017/03/03 大橋博之)

投稿用

 

プロフィール
12時間でマスターする日本最速中国語講座・「氷雅の中国語塾」主宰。
1987年中国浙江省温州出身。
2007年11月から上海駐在の日本人に初めて中国語を教え始め、以来ずっと中国語教育に携わる。
2010年来日、2012年早稲田大学入学。中国語教育と日本語教育の研鑽を積み、第二言語教育法を中心に研究を励む。 
2014年11月、従来の発音教育法に疑念を抱き、長年の現場経験を生かして開発した速攻学習法を実践するために、
個人活動を開始。
2015年11月麻布十番で12時間でマスターする日本最速中国講座「氷雅の中国語塾」を主宰。
通じる中国語の楽しさをもっとたくさんの方に味わってほしい!日本の中国語教育に革命を!真の日中交流実現を目指して、
東京で語学教育・翻訳・執筆活動に励む。
著書:『ゼロからカンタン中国語簡体字ワーク』(旺文社)『筆談で覚える中国語』(サンマーク出版)

HP:https://www.hyoga.tokyo/
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