地下アイドルとして長く続けていくための戦略とは。
地下アイドルの姫乃たまさんに話を聞いた。
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地下アイドルとして長く続けていくための戦略とは。
地下アイドルの姫乃たまさんに話を聞いた。
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JOB 地下アイドルは物販で稼ぐ生き物

──ヘンな聞き方ですが、姫乃たまさんのお仕事はなんですか?

地下アイドルをしています。私の地下アイドルの定義は「定期的にライブ活動をしていて、チェキというポラロイド写真を販売している女の子」なんです。地下アイドルって、仕事内容が決まっていないんですよ。基本的にライブをして物販で稼ぐというのが地下アイドルの仕事。でも、その他にも何をやってもいいんです。だから、人によってはコスプレイヤーやメイドと兼業していたりしています。そもそも地下アイドルって地下アイドルの活動だけでは生活できないんですよ。会社に勤めていたり副業やアルバイトをしている子が多いんです。メイドさんのような、お客さんと会えてファンも増やせて時給ももらえるみたいな仕事をしている子が多いです。

私は地下アイドルとして、ライターと司会、DJの仕事もやっています。前はモデルの仕事もちょっとしていました。それだけで一応、生活しています。

──地下アイドルだけで生活していけるのはすごいですね。デビューしてから7年。フリーになってからは2年なのだとか。

2009年に、高校生の時にデビューしました。地下アイドルの活動をしながら四年制の大学にも通いました。『就職しよう』と思っていたのですが、結局、この活動が忙しくなってしまって、就活しないまま卒業しました。
大学を卒業してから今2年目なんです。アルバイトをしていた時期もありましたが、成人してちょっとして辞めちゃいました。なのでずっと地下アイドルで生活しています。

──地下アイドル、ライター、司会、DJとあって、仕事の割合で一番、大きいのはどの仕事なんですか?

地下アイドルとライターですね。だいたい月に10本前後くらいライブがあります。ライターの仕事は連載が11本。割合的にはライターの方が仕事の量は多いんですけど、稼ぎでいえば同じくらいですね。

──地下アイドルを7年間やられていて、高校から大学の5年間と、フリーになった2年とでは意識は違うものですか?

やはり違いますね。大学はかなり片手間で通っていたんですよ。とはいえ学生という、なんていうんですかね。免罪符じゃないですけど、そんな気持ちがあったのが、フリーになってからは『ちゃんと稼がないと!』という気持ちにはなりましたね。

フリーランスは正社員の3倍は稼がないと意味ないなんて言うじゃないですか。だからそれくらいは稼ぎたいという気持ちではやっていますね。とはいえ、ファンの人からの収入だけで生きていたら、ファンの人も疲れちゃうので、ライブ以外の収入を増やすようにしています。

──地下アイドルってアマチュアが多いと思うんですけど、姫乃さんの場合、プロの地下アイドルですよね。

わはは、プロの地下アイドル……? プロという部分では、なるべく一個一個の仕事は手を抜かないようにはしていますが……。

──他にもいらっしゃるのですか? プロの地下アイドルって。

プロの地下アイドルが何かわかりませんが、専業の地下アイドルで生活している子なら、私の周りにはけっこういますね。昔の自分が駆け出しの頃は周りも駆け出しの子ばかりだったので、なかなか地下アイドル1本でという子は少なかったんですけどね。

──ファンが付けばやっていけるというところなのですか?

いや、これがけっこう面白くて、ファンが多ければ生活できるというわけでもないんですよ。事務所に入っていても宣伝費やマネージメント費などで引かれるお金が多いので、逆に個人でやっていて、ファンは本当に片手で数えるくらいしかいなくても、全員、太いお客さんだったらぜんぜん、生活できるというのがあるんです。でも、太客ばかりだと新しいファンの人がちょっと来づらいんですね。だから、広がりはないけど何年も少ないファンだけで、他の仕事はせずに地下アイドルだけで生活している、という人はいますね。

──太客は長い間、ファンでいてくれるものなんですか?

太客って水商売みたいですね……。太客が付く子はそういう人向けの営業をしているので、家族みたいな感じで長く付き合っていますね。

──姫乃さんの場合はどうなのですか?

私はなるべく太客は付けないようにしています。たとえば、太客は『CDを積む』といって、何枚も同じCDを買ってアイドルを支えてあげるというが一般的なんですが、私の場合、それをやらないようにしています。もちろん、いっぱい買ってくれるのは嬉しいですが、一枚だけでもぜんぜん大丈夫なんです。ファンの人が楽しんで買っているうちはいいのですが、ソロの性質上、一対一になって関係性が重くなりやすいので。
おかげで私の現場はけっこう変わっているんですよ。ライブに来るファンも毎回同じ人というわけじゃない。だいたいの子はいつも同じファンの人が何人も来てくれるんですけど、私は毎回、入れ替え、入れ替えみたいな。1年ぶりに逢うようなファンの人が来るみたいな感じですね。

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──姫乃さんの地下アイドルの戦略は?

私はやっぱり、ファンの人にはムリをさせないというのがすごくありますね。駆け出しの頃って、自分も必死だし、周りも必死なので、ファンの取り合いみたいなのが激しいんですよ。地下アイドルの世界は小規模だから地下アイドルもファンも関係者もみんな顔見知りになっちゃうんです。すると、ひとりのファンがどれだけ消費されているのか眼に見えちゃう。そういうのが嫌になって、私は地下アイドルの活動を休止したこともあります。だから、今はファンの人にムリをさせないようにしていますね。

たとえば、「CD何枚買って下さい」とか、「あのライブからこのライブまで全部、追っかけて来て下さい」とか、そういうのはいわないようにしています。

──確かにイベントやライブのラリーをやっている地下アイドルはいますね。

いますね。もちろん、あれはあれで楽しいというか、アイドルファンの方ってコレクター欲とか、必死になって何かを捧げたいという欲求も強いので、ファンが楽しんでくれる分にはいいと思うんです。けれど、私のファンには純粋なアイドルファンの人というのはけっこう少なくて、私で地下アイドルというものを知って来てくれたとか、私の著書『潜行〜地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー)を読んで始めて来てくれたという人が多いんです。あんまりアイドル現場っぽくないかもしれないですが、ファン層に広がりがあるのは嬉しいことです。

──物販はあまりやっていないのですか?

最初にお話したとおり、地下アイドルはチェキを販売する仕事でもあるので、物販は毎回、やります。物販の収入が地下アイドルの収入なんです。私はたまにラジオに出たり、テレビに出たりというのがあるので、そういうのでギャラをもらったりというのはあるんですけど、基本的に地下アイドルは物販で稼ぐ生き物なのです。極端な子になると、ファンとチェキを撮ったお金で生活しています。

──そうか、ライブの出演料じゃなくてチェキなんですね。

出演料もあるにはあるのですが、物販が主な収入源になります。CDとか本とかも販売したりしますが、それって普通は毎回、買うものでもないじゃないですか。だから、チェキが絶対にあるんです。チェキは毎回、撮るので。

──地下アイドルを7年も続けることが出来た秘訣とは?

やはり、自分もムリしないことですかね。後は、あまりいいことかわからないんですけど、目標をあんまり立てないということ。たとえば地下アイドルは旬の期間がすごく短い職業なので、みんな「何年までにCD何枚売って、大きい会場でライブして」って、だいたい目標を決めるんですね。けど、それが達成できなかった時に解散したり引退したりしちゃうんです。それってなんだか、ちょっともったいないと思ってて。就職とか結婚なんかも控えているような年齢の子たちなので、そこで次の道に行くというのは、またいいことだとも思うのですが。
私は地下アイドル業界は長いので、これからは辞めるというよりは、どれだけ長く続けるかが大事だなと考えています。

──お話を伺っていても、姫乃さんは自然体だなと思います。気負いとか、ガッツリ感がないですね。

ないですね。私のファンの人もけっこうおとなしいんですよ。アイドルとファンの人って似るんです。私もおとなしい方だけど、ファンの人もおとなしくて控えめな人が多いんです。『もっと主張してくれ』と思うんですけど、私が主張しないのでしようがないかなと(笑)。

──姫乃さんがプロデュースされた『僕とジョルジュ』でボーカルと作詞もやられています。そういうのは目標ではあったのですか?

ぜんぜん、ないです。『僕とジョルジュ』もほんとうに降ってわいた話というか、基本的に私は眼の前に来た仕事しかやらないので、営業もぜんぜん、かけたことなくて。しいて言えばお酒飲むことがすごく好きなのです。よく、飲み会とかで最後までいる人いるじゃないですか。あれなんですよ、私(笑)。だからイベント終わった後とかはずるずるいたりして、そこで仲良くなった人と仕事していく感じ。それが営業になっているかもしれませんね。仕事でテレビ局に行っても営業かけたりとかってぜんぜんしない。ムリするのも大事だとは思うんですけどね。アイドルってやらせられる職業というか、やらされてる感もちょっと魅力だったりすると思うので。だから、本当だったらムリしないといけないんですけど、ムリしてやっていても次に仕事来たとき辛いじゃないですか。

私、テレビの仕事とか、ほんとうに頑張らないようにしているんです。この間もテレビ番組に出たんですけど、あんまり頑張らないようにしようと思って。テレビの仕事ってほんと、特殊技能なんです。大きくリアクション取ったりとか、とにかくオーバーにやることが仕事。でも、『あまりムリしてやってもな~』と思っちゃうんです。テレビに出ている私を見てライブとか来てくれても、実際はこんな感じなので。テレビの私とライブの私が違うのもあまりよくないかなと思って。

──姫乃さんが「30点くらいでこなす」というのはそういう意味なんですね。インディーズじゃなくてもっとメジャーになりたいという思考はないんですか? 逆に言えば地下アイドルにこだわっている?

頑張っても30点にしかならないってことなんですけどね……。地下アイドルが楽しい、というのはありますね。私、けっこう飽き性で、こんなに長く続いたことが仕事でも趣味でもないんですよ。この地下アイドルという仕事が私に向いている、とは思っていないんですけど、もしかしたらなんかあっているのかなという気が最近、やっとしてきたので、長く続けられるようにしたいですね。地下アイドルやっている子たちはみんな成り上がり思考というか、上に上がりたい子たちなんですが、私は昔にそれでつかれちゃったというのがあるからかもしれないですね。

LIFE下北沢に住んでいたことで触れることが出来たこと。

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──Twitterには「下北沢生まれ」とあります。『潜行〜地下アイドルの人に言えない生活』は下北沢で撮影されている。下北沢LOVEみたいなものはありますか?

父親も下北沢育ちなのですよ。私、中学までは父親とまったく同じ学校に通っていました。
地元愛みたいなものは人並みにあります。でも、昔はもっと地元愛が強いと思っていましたね。下北沢で活躍している人って基本的に地元の人じゃないんですよ。他の土地から下北沢が好きで来てくれる人が多い。そういう人たちの下北沢に対する愛情を見ると、私はそこまでじゃないかもしれないと思いますね。

──でも、下北沢に思い入れはある。
それは、生まれ育った場所なので。自覚はなかったんですけど、下北沢に住んでいたことで音楽だったりとか、カルチャーに触れることはすごく多かったですね。小学校の社会科見学がライブハウスだったり。そういう意味では最初からライブハウスには慣れていたのかもしれない。今の地下アイドルという職業に着いたのも自然な流れだったかもしれません。人によってはライブハウスというものがすごく敷居が高いというのを聞くと、下北沢で育ったというのは要因としてあるかなとは思います。

LIKEエロ本育ち。ライターデビューはエロ本。

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──姫乃さんの趣味を教えてください?

私、プライベートだと本を読んでいるか、お酒飲んでいるか。その二択ですね。後は寝てるか。つまらない人間です。

──家の中は本だらけだとか。

本は昔からすごく好きですね。私は読み書きが少しだけ早くて、幼稚園に入る前からもう、自分で書いたりしていたんです。絵本が好きでした。小学校に入ってからは小説をずっと読んでいました。マンガが読めない子だったんですよ。でも、高校生になって初めてマンガを読んで、それからすごくマンガを読むようになって、今は本棚、ほとんどマンガなんです。

──Twitterには「エロ本育ち」とありますが……。

私、ライターデビューがエロ本だったので。高校生の時にワンマンライブをやったら、ワニマガジンの編集さんが取材に来てくれて。で、ちょっと仲良くなって、それで書くことになってライターデビューしました。

──ワニマガジンのなんという雑誌ですか?

『Chuッ(チュッ)』という雑誌でした。2014年に休刊してしまったんですけど。そこでライターデビューして、連載持って、そこからライターの仕事が今につながっているんです。
エロ本は元々好きですね。古本とかでもエロ本を買いますね。大学が神保町にあったので、お昼に古本屋に行って買ったりとかしていましたね。

──古本屋でもエロ本買っちゃうんですね。

私、写真もけっこう好きなのですよ。一緒に仕事したカメラマンさんの昔やっていた仕事が掲載されたエロ本があると買ったりしていましたね。

──そんなエロ本の魅力とは?

なんだろうな。あんまり縛りがないところかな。今はけっこう厳しいと思うんですけど、エロがあれば後は何をやってもいいという感じが好きですね。あと、記事ページが面白いんですよね。あれが凄く好きです。

──今、連載は11本とのことですが、全部が雑誌ですか?

Webも含めてです。雑誌は4誌かな。雑誌は2年くらい前に比べたら半分くらいになったんじゃないかな。廃刊、休刊で。去年、一昨年はひどかったですね。毎月、「廃刊です」「休刊です」みたいなのが続いたりして。雑誌で連載していたのが電子版になっちゃったりとか。この間も休刊じゃないけどなくなって、別の雑誌にお引っ越したりとかしました。紙は大変ですね。

──これだけ連載をもっていれば単行本も沢山出せるのではないですか?

いや、それが実はそうでもないんですよ。私、自分のことを書く連載ってあんまりなくて、人のインタビューが多いんです。インタビューされる仕事より、している仕事の方がぜんぜん、多いんですね。とはいえ、まとめるほどの量でもなくて、まとまった量あるのはAVのレビューだったり。なので、書籍にまとめるとなると、なかなか難しいかもしれないです。でも今、新書を書き下ろしていて、2016年も本が出る予定なんです。

──どんな本なんですか?

また地下アイドルの本なんですけど、『潜行〜地下アイドルの人に言えない生活』よりは女の子とファンの精神面に寄ったような書籍です。

──姫乃さんってルポルタージュ的ですよね。アイドルライターと聞くとキャピキャピしたものを想像しますが、実は骨太だったりする。

あんまり自分のことに興味がないのと、自分のことを知ってもらいたいという慾が少ないんですよ。だからどうしてもこういう感じになりますね。地下アイドルの世界は私が私がという世界なので、そこで戦っていける気がしない。それでどんどん控えめになって行っていきましたね。

CHANGE地下アイドル3年引退説からの脱却。

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──姫乃さんの転機は?

地下アイドルはみんな、活動して3年目くらいに転機があるんですよ。「地下アイドル3年引退説」というのがあって。1年目はすごい楽しかったりとか、よくわからないままやるんですけど、2年目にもう少し頑張らなきゃ、という気になるんですね。ライブいっぱいやったりとか、CD何枚売れるまで頑張ったりするんですけど、3年目くらいでちょっと冷静になって『あれ、私はアイドルとして売れるの難しいな』みたいな。で、引退して行く、というのがだいたいのパターン。
まあ、1か月とか2か月で辞めちゃう子も、半年くらいで辞めちゃう子もいるんですけど、だいたい長くもって3年というのがあって、そこ超えると私みたいに辞められなくなるんです(笑)。私もやっぱり3年目くらいに同じ感じで辛くなって、2012年2月に一回、活動を休止したんです。

── 一度は休止したんですね。

3年目くらいで休止する末期の頃はほんとうに辛くて、病気になっちゃったりもしたんですよ。復帰したときに改名しました。最初は「゚*☆姫乃☆*゚」だったのを、2012年3月に復帰したときに「姫乃たま」にしました。復帰後はわりとこんな感じで、プライベートと仕事の時の自分に差があまりなくなってきて、辛くなくなってきた感じですね。そこがやっぱり転機でしたね。

──もう一回、地下アイドルに戻ろう、と思ったのには何か理由があるのですか?

自分の中に気負い過ぎていた部分があって。

──そこに気づいた。

自分自身に、今もそうですけど、技術があるわけでもないので、アイドルって、人柄というか本人を好きになってもらうという方法しかファンを付ける方法はないんです。でも、他のジャンルのバンドとかと比べると集客はけっこうあるので、昔は全部の仕事に客寄せパンダとして呼ばれている気がしていました。『集客しなきゃ』と思ってファンの人にも一生懸命、頑張らせたりもしちゃたんです。そこに疲れたんですね。
でも、活動休止した時に、「名前出さなくてもいいから。事前に告知したりとかとか、集客しなくてもいいから、ちょっと私の仕事に来て欲しい」みたいなオファーがたくさん来て、『あっ、集客とか、自分で気にしすぎていただけだったんだ』と気が付いて、それで復帰した感じですね。

──周りの助けもあったわけですね。

そうですね。『それでいいんだ』と思って。頑張らなくてもいい仕事ばかり受けているうちにどんどん復帰しちゃった感じですね。

──確かに、3年くらいやると聖誕祭やって卒業みたいな感じになっていますね。

多いですね。そういうのは。きちんと卒業公演までできたら、かなり円満な卒業ですね。そこを乗り越えられたことがけっこう、大きかったですね。まあ、いろいろとタイミングがよかったんですよ。18歳で休止しているので。大学を卒業するタイミングで就職とか決っていたら多分、辞めたと思うんです。けれど、まだ大学も行ってたし、大学で『これからはバリバリ勉強するぞ』という感じでもなかったので。『就職するまで続けようかな』みたいな気持ちで、もう一回、復帰したというのがタイミング的にもよかったですね。復帰したことがよかったのかは、今後次第ですけど。

SENSEオリジナルのことをやることが大切。

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──姫乃さんにとってセンスとは?

センスはないですけど(笑)。センスですか。なんだろう。やっぱりオリジナリティじゃないですかね。地下アイドルの子でもったいないと思うことに、売れている子の真似をするというのがあるんですね。それはよくないなというか、失敗してもいいから他の人と違うことをやるというのが大事かなと思います。

たとえばライブとかで盛り上がる曲ってあるんですよ。「初恋サイダー問題」というのがあって、『初恋サイダー』というBuono!の曲があるんですけど、それを歌うとすごく盛り上がるんです。もともと売れている子が歌って盛り上がってるのを見た子たちが歌いだして、というのが連鎖したんですね。この間、私もライブで『初恋サイダー』の歌入り音源を流して自分は何もしないというのをやったんです。これがまあ、盛り上がるんですよ(笑)。要は『初恋サイダー』が流れていればなんでもいいです。そこに気付いていない子ってすごく多いんです。そういうのはよくないし、本人も勘違いしちゃう。その子が歌っているから盛り上がっているわけではないのに、それに気付かない子ってけっこう多い。だから失敗してもいいから、オリジナルのことをやる、というのはすごく大事だと思います。
地下アイドルってお客さんの反応が直接見れるから『失敗したんだな』と気付けるんですよ。自分には合ってないんだな、とか。それで何度も間違えて間違えて、オリジナルの存在になって行く、というのがすごく大事。私も逃げて逃げてここまで来た人なので、いろんな人とかぶらないようにかぶらないようにニッチな仕事を見つけて見つけて隙間に入ってきた結果が今なので、オリジナルのことをやるというのが地下アイドルのセンスかなと思いますね。私の場合、オリジナルを見つけるまでの過程が消極的過ぎますけど……。

いっぱいいるところで闘って行くということももちろん大事なんですけど、みんながそれをやっているから私は助かったわけです。

──それが姫乃さんの闘い方なわけですよね。

私はそうですね。だからいつも思うんですけど、アッパーな闘い方だけが、頑張りではない。やり過ごしたりとか、我慢したりというのもひとつの闘い方だと。私も今、それでやってこれていますね。

──自分のキャラクターをちゃんと作るということですね。

そうですね。

──姫乃さんは自然体が受けている部分だろうし。ファンもそこに共感する部分があるんでしょうね。

人って同じ人っていないじゃないですか。だからアイドルがアイドル像みたいなものを持つのも大事なんですけど、私生活の自分に近くても、別に同じ人っていないから、絶対にオリジナルになるので、変にアイドル像に寄せていくよりは自然体でやっても別にかまわないんですよ。

──姫乃さんの地下アイドルは私生活とそんなに変わらない。

変わんないですね。むしろ仕事している時間の方が長いので、プライベートとはぜんぜん、境がないです。一緒に仕事する人と飲みに行ったりすることの方が多いので、仕事が私生活のようなものです。友だちよりファンの人たちと逢う時間の方がぜんぜん長いです。

──切り替える人もいるじゃないですか。

基本的には切り替えないと、精神的におかしくなっちゃいますからね。切り替えるんですけど。わたしはぜんぜん、このままですね。

──必死になって闘うのが今のトレンドのようにも思いますが。

地下アイドルは入れ替わりが激しいので、スタートダッシュで頑張っている子たちが常にいる業界なんです。最初と同じやる気で何年もは頑張れないので……。

2016/06/03 大橋博之

プロフィール
1993年2月12日東京都世田谷区下北沢生まれ。 エロ本育ち。地下アイドル、ライター、司会、DJ。
アイドルファンよりも生きるのが苦手な人へ向けて活動している地下アイドル。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、歌唱と執筆を中心に活動中。
一般的に実態の知られていない地下アイドルの実態をレポートした『潜行-地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー)を刊行。
【姫乃たまのあしたまにゃーな】http://ameblo.jp/love-himeno/
【姫乃たま】http://himeeeno.wix.com/tama
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