独学で道を切り開いたアーティスト。クリエイティブと行動力の関係性を語る。
時代を先駆ける、フォトマニピュレーター・ISAMYUの仕事とは?
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独学で道を切り開いたアーティスト。クリエイティブと行動力の関係性を語る。
時代を先駆ける、フォトマニピュレーター・ISAMYUの仕事とは?
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現実のようで、非現実的な世界観を生み出す「フォトマニピュレーション」を知っていますか?フォトマニピュレーターとして活躍しつつ、デザイナー、フォトグラファーと、様々な顔をもつクリエイターのISAMYU(いさみゅ)さんにお話を伺いました。

JOB独自の世界を描くデジタルアート「フォトマニピュレーション」

―本日はよろしくお願いします。まずは、現在のお仕事についてお聞かせください。

「デザイナー/フォトマニピュレーター」として、アーティストさんのアートワークやジャケ写を制作しています。
他には、企業ロゴや名刺のデザインだったり、要望があればカタログを制作したりと、いろいろです。
名刺の肩書きは「デザイナー」としているので、生業はデザインですね。

―フォトマニピュレーターという肩書きを、 あまり耳にしたことがないのですが、
どのようなことをされているのか、具体的にお聞かせいただけますか?

「フォトマニピュレーション」は、直訳すると「写真操作」なんです。
僕は、複数の写真を切り貼りして、独自の世界を描くデジタルアートのことだと捉えています。

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―ぱっと見た感想ですが、グラフィックデザインとはどう違うのでしょうか?

定義が曖昧ですが、写真を切り貼りした“現実と非現実が入り混じるグラフィック”だと捉えていいと思います。
言葉で壁を作るのは難しいのですが、独自の世界観で生まれる作品が「フォトマニピューション」、
文字や画像を使って情報を伝える作品が「グラフィックデザイン」でしょうか。

―なるほど。漫画家の浅野いにおさんや花澤健吾さんは、風景写真を加工してコマの背景に使用しているそうです。
広義で例えるなら、こうした写真加工も「フォトマニピュレーション」とされるのでしょうか?

どうなんでしょうか(笑)。
それは受け手の捉え方にも左右されるし、本人がそうだと言えばそう、違うと言えば違うんじゃないかなと。
定義が不明確なので、雑なコラージュ画像でさえも、作成者が「フォトマニピュレーションだ!」と言えば、
そう捉えるしかないと思います。

あくまで“アート”ですので、定義も楽しみ方も人によって様々です。

LIFEゲーム画面の配色を切り取り、作品づくりの糧にする

―個人の作品づくりは休日を利用しているのでしょうか?

フリーランスとして活動しているので、休日らしい休日はなかなか取れないんですよね。
なので、仕事の合間や移動時間などで、ふわっとでてきたアイディアをノートに書いておき、
仕事のスケジュールが空いたタイミングを活かして個人作品をつくることが多いです。

とはいえ、根詰めてしまうと何も浮かばなくなるので、休みの日をつくって友人と遊ぶこともありますね。
最近ではデザインの観点から見ても非常に勉強になる『Splatoon2(Nintendo Switch)』を
友人宅でやっています(笑)。
基本的に家で仕事に打ち込むので、ずっと閉じこもっているとおかしくなっちゃうんです。
なので、仕事から離れる時間を設けて、友人と何気ない話をして、気持ちをリセットしています。

―たしかに、リフレッシュは大事ですね!
ちなみに作品づくりのため、フォトマニピューター的な視点で、どのようなインプットをされているのでしょうか?

一概には言えないですが……。
ただ、例えるなら……そうですね。僕はテレビゲームからインプットすることが多いです。
最近では『INSIDE(PLAYDEAD)』と『NieR:Automata(SQUARE ENIX)』に感銘を受けました。

ゲームって、デザイン的な視点でみるとすごく面白いんです。
というのも、例えばムービーやゲームの画面をスクリーンショットでとって、
特徴的な配色を一つひとつ抜き出してみるんですね。
そうすると、そのゲームの世界を世界たらしめる色の法則が見えてきて、
そういったことを自分の作品の世界観に活かすことができるんです。

最近の制作で言えばアーティストのmajikoさんの写真を制作させていただいた時に
「その世界が存在する」ということを強く意識させるために、ゲームの配色を参考にしました。

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LIKE「普遍性」へのこだわり

―先にもお話いただいように、作品の題材は「写真」とのことでした。
ISAMYUさんが、素材を撮影する際に特にこだっていることはありますか?

個人制作のときのみですが、今は特に「普遍性」にこだわっています。
上手く言語化できないのですが、作品を通して、様々な価値観を持った、より多くの人に一定の驚きや感動を
与えたいという思いが強いんです。

一方で、普遍的な作品を作ることは不可能だとも思っているのですが、意識することが必要だなと感じています。
“特定の人物にしか響かないものをつくる”ことはやりたくなくて。
独りよがりな作品にしないためにも、「普遍性」は大事なんです。

―というと、対するものは「個性」?

そう、「普遍性」と対になるものは「個性」なんです。
個人という言い方をした方がニュアンスとしては近いかもしれません。パーソナルといいますか……。

個人が尖れば尖るほど、行為は“その人”に向けられてしまいます。
もっと言うと、「このモデル(被写体)の顔が好きだから好き」というだけで
多くの人に受け取られてしまっては、それは僕の伝えたいことではなくなってしまいます。
しかし、その被写体でなければならない理由もあって、個性も個人で絶対に必要。
「普遍性」とのバランスが肝だと思います。
そのための一つの手法として、僕が撮影する際は、被写体(モデル)とは視線を合わせないようにしているんです。

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―どうして視線を合わせないのでしょうか?

目は、とても強い要素があると思っていて、一層「個人」が前のめりになって出てくるんです。
ポートレート作品では、それが大事だったりするのですが、あくまで僕は「フォトマニピュレーション」という枠で
作品づくりをしています。
だから、人間と他の素材は対等に並び、画面全体に溶け込ませる必要があるんです。
なので個人をなるべく抑えるために、視線はそらしてもらっています。
もちろん、ケースバイケースですが。

―なるほど。

……というのは建前で。

―え?

僕、ウインクができないんです。
だから、カメラのファインダーを覗くとすっごい顔してるんですよ。
その顔を見られたくないので、視線を外してもらってます(笑)。

CHANGE表現が確立したきっかけは「花とウィスパー」

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―どうして、フォトマニピュレーションに挑戦してみようと思ったのでしょうか?

きっかけは、大学時代に流行った『pixiv(以下、ピクシブ)』という
イラスト作品などを投稿できるサービスに出会ったことですね。
大学時代は美術のサークルに所属していて、イラストを描いていました。
でも、あるときピクシブと出会い、投稿された作品を見てみたら
「これ、絶対に敵わないな」と悟って……。絵を描くことに挫折しました。
「つくりたいもの」は明確にあったんです。でも、技術が追いつかなかったんですよね。

それからしばらく経って、何気なくピクシブを見ていた時に、グラフィック作品と出会いました。
写真を切り貼りした作品が、すごく評価されていて、衝撃を受けたんです。
こういうのもありなんだな、と。
のちにそれが「フォトマニュピレーション」という手法で作られたものだと知るのですが、
それから見よう見まねでグラフィック作品を投稿し始めると、思いのほか評価してもらえて。
その原体験が自信となり、制作意欲に繋がりました。

―グラフィック作品を一目見て、「自分でも出来そう」と感じたのでしょうか?

はい。とはいえ、美大に通っているわけでもなく、デザインの知識もゼロの状態。
反骨精神は強かったけれど、悔しい思いばかりでしたね(笑)。
ただ、自分の頭にあるものを具現化できる唯一のツールが、フォトマニピュレーションでした。

―日本では「フォトマニピュレーション」というジャンルは、まだまだ発展途上的な分野だと思います。
作品をつくるなかで、いつ転機が訪れたのでしょうか?

転機が訪れたのは、2年前の2015年です。
それまでは独学でフォトマニピューション作品を制作していたので、“自分の表現”に悩み続けていました。
それこそ、自分で素材の撮影を始めてからかな。
『花とウィスパー』というフォトブックを制作していたときに、自信に繋がる出来事がたくさんありました。
それから、この表現で勝負していきたいと思ったんです。

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―どのようなことがあったのですか?

『花とウィスパー』に参加してくださったモデルさんが、割と自由にフォトマニピュレーションとしての加工を
許諾してくださって。むしろ、楽しんでくれていたんです。

被写体の個人を薄くしつつ別の主役を立てて作品にするのは、絵的には面白いんですよ。
でも、モデルさんが持つ「美しさ」や「可愛さ」を別の形にして素材にするわけだから、
内心、申し訳ない気持ちが強かったんです。

でも、その気持ちに反して「体を加工すること」を面白がってくれるモデルさんがいたことで、
自分の表現が認められた気がしました。
その気づきが原動力となり、大きな転機に変化したと思っています。

SENSE最前線で活躍できるクリエイターは、行動し続けた人

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―ISAMYUさんの手がける作品は、幻想的ですが人の温もりも感じる作品ばかりです。
これらの作品の発想は、どのように生まれているのでしょうか?

難しいですね……(笑)。
僕はグラフィックデザイナーの吉田ユニさんを尊敬しているのですが、吉田さんの制作物を見たときに
「これだ!」と思ったんです。
視覚的な表現そのものというより、画から感じる“思想”や“手法”に共感を覚えました。
吉田さんが手掛けた、星野源さんの『恋』や『YELLOW DANCER』のCDジャケットを
見ていただくとわかりやすいのですが、全体はシンプルなんです。
現実的で何気無い写真の中に、非現実的で強烈な違和感が一つだけある。
だからこそ、人の心に突き刺さると思っています。

―ありがとうございます。
最後になりますが、ズバリ、ISAMYUさんが考える「センス」とは?

創作物や芸術の「センス」は、“ない”んじゃないかなって。というか、答えが無限にあると思うんです。

おそらくですが、クリエイティブな人が持ってるのは「行動力のセンス」じゃないでしょうか。
例えば「〇〇がやりたい」という思いは、誰しもが抱えているはず。
だけど実現しようと行動する人は、絞られてしまいます。
仮に行動しても、失敗が続けば続くほど、人数は絞られますよね。
失敗や恥を恐れず、熱意を持って、夢を実現しようと行動できる人。
そんな人が、今日も業界最前線でクリエイティブなものをつくっているんです。
芸術的な教養がなかった僕でさえ、行動あるのみで動いてきました。だからこそ、今があると思っています。
 

(2017/8/10 石川優太)

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プロフィール
グラフィックデザイナー、フォトマニピュレーター。
2013年、株式会社MdNコーポレーションより発刊されたデザイン誌『月刊MdN』にパーソナルワークとしてのフォトマニピュレーション作品を中心に2度掲載。それまでは企業ロゴデザインや商業フライヤーが主であったが、同時期より音楽アーティストのアートワークを手がけるなど活動の場を音楽業界にも広げる。シュールレアリズムの手法、デペイズマンの影響を強く受ける。ユーモアのあるデザイン、根拠のあるデザイン、ターゲティングされたデザインを制作する事を信念としている。

過去作品はヴィレッジヴァンガードのオンラインストアで購入可能。
また、『デザイン・フェスタ(※1)』などの即売会でブース出店もしている。
(※1)東京で開催されるアジア最大級の国際的アートイベント。


ホームページ:http://isamyuism.com/
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