漫画漬けの生活を送るweb漫画家・カメントツ
僕が漫画を描く理由は、この時代にノンフィクションを描く意味を追求したいから
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漫画漬けの生活を送るweb漫画家・カメントツ
僕が漫画を描く理由は、この時代にノンフィクションを描く意味を追求したいから
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JOBノンフィクション漫画を描く

――今の仕事を教えてください。

webで漫画を描いています。つい最近、小学館の雑誌『ゲッサン』で連載が始まったので紙媒体でも描いていますが、基本的にはオウンドメディアが多いですね。

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                 出典: http://ure.pia.co.jp/articles/-/30768

――なぜマスクをつけて活動をしているのでしょうか?

色々理由はありますが……実は僕、すごく恥ずかしがりやなんです。web漫画家という仕事の性質上、人前に出ることや写真を出す機会が多いので、結果的にこういうスタイルに落ち着きました。

――webはリアルタイムに反響が来ますよね。プレッシャーはありますか?

プレッシャーは、めちゃめちゃあります。web漫画って反響がないと次のお仕事をもらえないですから……仕事をする以上、結果を出すのは当たり前のことなんですが。

ただ反響だけ目指して漫画を描くと、面白いものって描けないと思うんです。もし方法を選ばずにたくさんの人から反響が欲しければ、読んでくれた人に1万円配ればいい。そうすれば面白くない漫画でも、人はたぶん集まりますよね。

――反響だけを求めるのは違うと?

もちろん、たくさんの人に読んでほしい、という欲求はあります。ただ、さっきの例みたいに反響だけを目的にするとおかしな話になっちゃう。だから、なるべく人が喜んでくれて、かつ、反響のあるものを作りたいです。反響や面白さを追求したいですね。僕が「反響がなくてもいいや」と諦めるのは、逃げだと思うので。

――逃げないためにも、プレッシャーにはどのように打ち勝ちますか?

打ち勝ったことは一度もありません。ただ、ずっとプレッシャーを感じているなかで読者の方に「面白い」と言ってもらえる。その一瞬だけ開放されます。僕は、その瞬間の「ジャンキー」になっているのかもしれません。プレッシャーはずっと感じているし、常に悩んでいるから、(打ち勝つ方法が)あれば教えて欲しいです(笑)。

――挫折した経験はありますか?

僕は絵が上手な方ではないので、漫画家を目指した当初は自分にできる方向性を考え、試行錯誤の連続でした。その結果が、今のスタイルに繋がっています。自分のできないことを把握する作業は、ある意味挫折といえるのかもしれません。

――それでも漫画家の道に進んだのは、やはり好きだからでしょうか。

そうですね、漫画が大好きです。それに、漫画は情報を伝えるのにすごく適している媒体だとも思います。絵も文も、写真も使える。自分のペースで読める。わかりやすさもある。エンタメの無差別級感がすごいんです。なんでもできるんですよ。漫画に盛り込める情報量の多さに惹かれました。

LIFE漫画を描いていないときは、漫画を読んでいる

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――漫画を描いていないときは、何をしていますか?

漫画を読んでいることが多いですね。ジャンル問わず読みます。本屋さんに行くと、買い物カゴいっぱいくらいの量を買います。でも、毎月たくさんの漫画が出版されているから、そのペースで読んでも追いつきません。

――漫画漬けの生活ですね。

そうですね。僕は何か身の回りで面白いと思うことがあったら、すぐに頭の中でネームにしちゃうくらいには漫画のことを常に考えています。飯を食っているときですら、漫画を読んでるんですよ。だから僕、片手で漫画読むの、めちゃくちゃ上手くなりました。

――漫画漬けの生活になったのは、このお仕事を始めてからですか?

いや、物心ついたときからめちゃめちゃ漫画を読んでいました。あと、僕は同じ漫画を繰り返し読むんですよ。小学校のときはお金がないから『コロコロコミック』をひたすら読み返していました。

――日々の生活で大切にしていることはありますか?

そんなにないなぁ。〆切をクリアすることに追われているから、刹那的に生きているかもしれません。日々の疾走感がヤバイです。

LIKE自分にプラスになることをしたい

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――趣味やマイブームはありますか?

さっきも言ったように漫画を読んだり映画を観たりしますが……。誰か僕に、趣味を教えてほしいです。「こういうのが面白いよ」って言ってくれたら、それをやりたいですね。

――映画を観たり漫画を読んだりして、自分の漫画に活かすことはありますか?

どうだろう。実際はそんな役に立ってないと思います。ただ、僕はお仕事以外のことをやっていると、すごく辛いんです。仕事以外のことに時間を費やすことにハラハラする。のんびりできません(笑)。でも、映画や漫画を読んでいる時間は自分のためになっている感覚があるから、楽な気持ちでいられるように思います。わかりやすく自分にプラスとなりそうなものに飛びつきがちなのかもしれません。

――遠出してリフレッシュなどはしないのですか?

僕、普通に旅行するのが苦手なんですよ。元来引きこもりがちの人間ですし、仕事をせずにどこかへ出かけるのを少し苦痛に感じてしまいます。でも、取材旅行では仕事をしている感覚があるから、きちんと楽しめるんですよね。

CHANGE『オモコロ』との出会いが、転機となった

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――人生の転機を教えてください。

今のスタイルが固まったときでしょうか。僕はかつて、何をしていいのかわからない時期がありました。そのときにたまたま僕の描いた漫画を、ライターのヨッピーさんに見ていただく機会があり、『オモコロ』というメディアを紹介してもらったんです。そこで編集長の原宿さんにお会いしました。原宿さんに方向性が固まっていないことを相談した結果、ルポマンガというジャンルで描くことを決めたんです。それが今のスタイルになったきっかけだし、転機となったように思います。

――その転機が訪れ、変わったことはありますか?

僕は、デビューする前から物事や人に影響を受けやすく、デビューする前も後も常に変わり続けています。正解は「こうだ」と決めないことが、自分の信条です。「こうかな」と思ってもそれを疑い、多角的な視点から見る癖がついているのかもしれません。

ひとつのことを信じられれば、なんだか一貫性があってかっこいいし、便利そうですよね。でも、僕の場合は仕事の方向性に対しても優柔不断なんです。あっちが正解かこっちが正解か、常にうろうろしているので、意見もどんどん変わります。もしかしたら来年には、ぜんぜん違うことやっている可能性もあります

――何に影響を受けやすいですか。

……難しいな。たとえば、映画でかっこいいロボットの戦いを観ているときには「戦い最高!」と思います。でも、その映像を消した瞬間に、TVでジョン・レノンの曲が流れたら「平和って大切だなぁ」って感じる。おそらく、多くの人がそういう二面性を持っていて、僕に限ったことじゃないと思いますけどね。

――情報を受け入れやすいと、時代の変化にも適応しやすい、という強みがあるのでは?

そうかもしれません。「こうであるべき」とはあんまり考えないようにしています。また、「こっちのほうが面白そうだな」と思えば、これまでと違った方向だとしても、そっちへ進むようにしています。

――今後どうなっていきたい、というビジョンはありますか?

「個人的なもの」を漫画で伝えていきたいと思います。ちょうど今、リイド社さんの媒体で『戦争』をテーマにした漫画の連載が始まりました。戦争といっても悲惨さを伝えるものではありません。その役割は、もっと別の、真面目なところにあります。だから僕は、『個人』に踏み込んでいきたい。戦争を体験した人に話を聞くと、「辛いことが多いけど、辛いなかにも楽しかったことはある」と言うんです。「死んでしまった戦友とこんな遊びした」とか。それは個人にフォーカスを当てないと、出てこない情報だと思います。

――個人を描く漫画だからこそのエッセイ漫画ということでしょうか?

人の考えの偏りや、勘違いもあるかもしれません。ただ、そういうのも含めて「だからいいよね!」って想いを伝えたい。この前取材したおじいさんも、キツイ体験を笑いながら話すんですよ。漫画はそういうエモーショナルな部分とも相性が良いと感じているから、おバカな漫画、オモシロ漫画という立ち位置から、世の中に発信できたらいいなと思います。
そうして、自分がノンフィクション漫画を今のこの瞬間、この時代に描いている意味を追い求め、突き詰めたいですね。

SENSEセンスの良さとは、制限のあるなかで表現できること

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――最後に、センスの良さとは何だと思いますか?

制限のあるなかですばらしいものを作り上げた人に、センスの良さを感じます。ファミコンの『スーパーマリオ』というゲームがあるじゃないですか。あの時代のゲームって、容量がめちゃめちゃ少ないなかで、どれだけの要素を詰め込めるかという勝負だったらしいんですね。だから、雲のエフェクトと草のエフェクトは一緒の形をしているそうです。表現するのは正反対のものですが、容量を食わないよう、変えたのは色だけ。でも、雲も草もゲーム性にはまったく関係ないんですよ。ただ、制限のあるなかでこだわりを発揮する……みたいな。僕自身がWebという凄まじく自由な空間のなかで育てられたからこそ、そういう人に憧れています。

(2016/06/03 高根千聖)

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プロフィール
愛知県出身。大学を卒業後、デザイナーとなるもの、退職して職を転々とする。28歳で一念発起し、漫画家になるために上京。現在は、『オモコロ』や『ジモコロ』、『オクトピ』、『LEED café』などのWEBメディアや小学館『ゲッサン』などにて漫画を連載中。
http://www.kamentotu.com/
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