バンド『THEラブ人間』の金田康平に聞く、人生と音楽について。
「音楽」という媒体で溢れる思いを表現している
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バンド『THEラブ人間』の金田康平に聞く、人生と音楽について。
「音楽」という媒体で溢れる思いを表現している
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JOB俺が音楽をするのは、自分の欲望や興味の根本と向き合いたいから

──バンド『THEラブ人間』の歌手として活動されている金田さんに、お仕事についてお伺いしたいです。

俺個人の感覚で言えば、音楽活動は仕事ではないと考えています。そもそも俺はサラリーマンになりたくなくてバンドを始めた。いわば、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の主人公みたいなものです。
彼の将来の夢はライ麦畑にいる子どもたちが崖から落ちないよう、崖の前にいるライ麦畑の「キャッチャー」になること。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読んだとき、俺もそういうことがしたいと思ったんです。断崖絶壁にしか咲かない花を摘んで好きな人や愛している人に渡すこと。それが音楽をやることに対して抱いている感覚ですね。そんなピュアな感情をずっと背負っていたいと思っています。

そもそもなぜ音楽を選んだかといいますと、選択肢が他になかったんですよ。中学1年生のころに『THE BLUE HEARTS』を聴き衝撃を受け、音楽をやりたいと思った。そのあと、他にやりたいことには出会わなかったんです。
今でも音楽を続けているのは、自分の欲望や興味の根本にあるものと向き合いたいから。それを知りたい、触ってみたい、抱きしめてみたい。そんな思いが溢れてくるから、音楽という媒体で表現しているんです。興味があることすべては音楽にできるんですよ。

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LIFEミュージシャンにオフはない。曲を書く毎日。

──オフの日には何をしていますか?

オフという言葉を聞いたときにいつも、オフっていつなんだろうって思っています。基本、ミュージシャンにオフはありません。俺が『THEラブ人間』をスタートさせたときに決めたのは、一日一曲つくること。だから、歌詞や曲を書いているかな。

──歌詞を書く際に、自分をすべて吐き出すことに恐れはありませんか?

俺は、音楽って「そういうもの」だと思っているタイプの人間なんだよね。だって、すべてをさらけ出しても「カッコ悪い」と言われるくらいでしょ。「情けない、恥ずかしい」って言われるくらいなら大丈夫かな。別に俺が強いわけじゃなくて、「音楽ってそういうものなんですよー」って感じ。

思ったことを歌うとき、周囲の反応にビビる人もたくさんいる。でも、恐れと闘って乗り越えて生まれる、「それでも俺は本当にこう思って歌っているんだ」って感覚こそがロックや歌、音楽なんじゃないかなと思いますね。

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LIKEベタなものは好きではない。だけど、ディズニーはすごい。

──マイブームはありますか?

ここ2年くらいのマイブームはディズニーかな。テーマパークも映画も好き。
ディズニーの映画って開始15分以内に、ラストシーンで使われそうなくらい大規模な事件が起きるんですよ。そうして映画の世界へ引き込まれる。その手法にはびっくりしたかな。

それに俺は芸術とかアートをこじらせたタイプで、ベタなものをあまり受け入られずに生きてきたんです。ディズニー映画も、ハマるまで一切観たことなかったんですよ。でも、ディズニーはその「こじらせ」すら乗り越えてくる。泣かせにかかってきてるのをわかっているのに絶対に泣く。30歳になる手前でまさかディズニーを好きになるとは思わなかったな。

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CHANGEメジャーレーベルの脱退と、自分の変化

──転機について、教えてください。

元々メジャーレーベルで活動していたけど、今の『THEラブ人間』は自分たちで立ち上げたレーベルで活動しています。なぜメジャーレーベルを辞めたかというと、2枚目のアルバムを作るときにメンバーの仲がギスギスしてた時期があったからです。

メジャーレーベルでは、CDを1枚作ることにも、たくさんの人が関わっているんですよ。それがプレッシャーとなり、メンバーたちは「もっと数字を伸ばさなきゃ」と感じてしまった。音楽性や見た目を変えることを考えているメンバーもいました。
だけど、俺は「どうやったら売れるか」を、できるだけ考えずに音楽をやりたかったんだよね。考え方の違いからか、次第にメンバーは、俺に意見するときにマネジャーを通すようになりました。俺も、メンバーに話すときは、マネージャーを通していた時期があったんです。
メンバーのみんなはね、俺も含めてチキンでビビリなんですよ。お互いに衝突を避けてしまっていた。みんな優しいから遠慮していたのかもね。

アルバム自体はそんな状況も乗り越えて無事リリースできたし、レコード会社側は「契約を延長して次のアルバムを出そう」と言ってくれていたんです。けれど、メンバー間で直接思ってることと話せないこの状況で、きちんとしたアルバムを作れるとは思えなかった。もう辞めたほうがいいんじゃないかなと考えていました。
そのときに俺と話をしたのが『THEラブ人間』のキーボードを担当しているツネ(ツネ・モリサワ)です。ツネは俺の考えを聞いて、「自分たちのレーベルをたてたら、事務所を辞めてもいいんじゃないか」と言ってくれた。そのときに俺は「コイツに任せよう」と思い、メジャーレーベルを脱退しました。

そういう経緯があって、今があります。昔はプロテクターみたいなものをつけて毎日生きていたような気がします。でも、今は人として柔和になれたんじゃないかなあという気はしています。
事実、俺が音楽をするにあたって大事にしていることが、ひとつからふたつに増えたんですよ。ひとつめは自分をすべて吐き出し、出し惜しみをしないこと。それは音楽を始めたときから変わりません。

増えたのは、キャパオーバーする前にメンバーへ任せることです。『THEラブ人間』はソロではなく、6人のバンド。だから、全部自分で抱えることは辞めました。
そうすることで、自分が行き着いていない部分、思いついてない部分を見つけられるんですよ。メンバーのなかに、俺よりも先に考えているヤツらがいる。そこに行き着いたメンバーの気持ちは面白い。昔は自分の意見だけで突き進んでいました。でも今は、メンバーの提案も聞いて、やってみようと思えるんです。

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SENSEセンスは悪い方がいい

──最後に、センスの良さとは何だと思いますか?

センスねぇ……。俺の好きな言葉は、愛・夢・希望・努力・勝利とか、少年漫画っぽいもの。一方で嫌いな言葉は、面倒くさい・時間ない・忙しい、そしてセンスなんですよ。
「あの人の●●はセンスが良いよね」って言葉は断罪しちゃうでしょ。「センスの良くないもの」は「良くない」って言われちゃう気がする。「センスが良い」って流行だから。流行にノッているものが、きっと「センスが良い」って言われるんでしょ。「センスが良い」って言うヤツって、センス悪いよ。センスについて考えたことがないんじゃないかな。

俺はミュージシャンだから自分のことを客観的には見られないけど、センスで物事を測っちゃうのはもったいない気がしますね。「(センスが良くないと思っているものでも)もっと面白いヤツがいるのに」って。センスだけで物事を知ろうとしないのは、あまりよくないんじゃないかな。

センスが悪いけど「良いヤツ」ってめっちゃいるんですよね。センスがめっちゃ悪い、時代からもスゲー外れていてしょうもないのに、心を揺さぶる。そういうものが俺は好き。センスは悪くていいよ。むしろ、はみ出しているくらいがちょうどいいんじゃないかな。

(2016/07/20 高根千聖)

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<Live情報>
8月21日(日)
ツアーファイナル 下北沢成徳高校ミモザホール&ホワイエ
THEラブ人間×石崎ひゅーいリリースツアー2016 「メケメケの花」

<取材協力>
KIKI RECORD(東京都小平市たかの台 44-1)
Twitter:@KIKI_RECORD
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プロフィール
1986年生まれ。東京出身の歌手。1999年に音楽活動を開始し、2009年『THEラブ人間』を結成。活動歴15周年を迎える2014年にはソロ作品として、元恋人との肉体精神的的私生活を描いた問題作『NATSUMI』をリリース。2016年の今年は THEラブ人間にとって3年ぶりとなる3rdアルバム『メケメケ』を発売し全国リリースツアー中である。
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