何をどう選ぶかにその人らしさがあらわれる
――ブランドプロデューサー・古長谷 莉花の仕事と人生
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何をどう選ぶかにその人らしさがあらわれる
――ブランドプロデューサー・古長谷 莉花の仕事と人生
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「個人もセルフブランディングする時代」「あの企業はブランド価値が高い」など、最近ではすっかりビジネス誌でおなじみのワードとなった「ブランド」という言葉。でも、ブランドの価値を高める=ブランディングはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
そんなブランド作りに日々取り組んでいるのが、ブランドプロデューサーの古長谷莉花さん。“魅せ方”の提案で人や企業、商品を輝かせる彼女がたどってきた道と、これから進みたいと思う道について聞いてきました。

 

JOBブランド作りは“魅せ方”を考えるところから

――本日はありがとうございます。さっそくですが、「ブランドプロデュース」というのは、具体的にどんなお仕事なのでしょうか?

ざっくりと言うと、ある特定のものをどう魅せていくかを考えるお仕事ですね。対象は企業そのものだったり商品やサービスが対象だったり、あるいは個人だったりと本当にいろいろです。その「ある特定のもの」をどういうふうに発信すればより多くの人に認知してもらえるのかを、新たにブランドや商品を開発する、イベント運営やSNSでの発信をするなど、さまざまな方面から考えています。

会社を立ち上げたり、商品やサービスをつくってはみたけれど、思うようにうまくいかないっていうことありますよね。はじめる時に気合いが入るものですが、ブランディングに重要なのは、実はファンとの接点が増えるリリース後の運用です。商品やサービスそのものに目が向きがちですが、実は“魅せ方”を変えるだけで驚くほど売れるようになることもあるんです。

過去に担当した企業さんでは、商品のディスプレイとスタッフの挨拶を変えただけで売上が前月の200%にアップしたこともありました。そういった“魅せ方”を考えるお手伝いをさせていただいているという感じです。

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――200%! それは大きな変化ですね。

そうなんです。どんな“魅せ方”が適しているかは、その会社や商品、人によってさまざま。講演会などで直接お客様に会っていただいたほうが魅力がよく伝わるという場合もありますし、反対にWebを中心にアプローチをかけたほうがいいというケースもあります。それらを総合的に考えてブランドを作っていくのが、ブランドプロデューサーという仕事です。

LIFE「何をどう選ぶか」に人生の豊かさがあらわれると思う

――普段の生活の中でも“職業病”と言いますか、ブランドプロデューサー的な観点で人や物を見てしまうことってありますか?

ありますね(笑) 友だちとおしゃべりしていても、「もう少しこうしたら、もっとよくなるのにもったいない……」「それってこういうふうにも使える!」と思ったり。先日、益子の陶器市があったのですが、友人のお店でついディスプレイを直していたら日が暮れそうに……(笑)

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あとは、人のことだけでなく、自分のことは特に客観的に見ようとしています。特に「自分の立ち位置」というのは、昔から強く意識してきました。私は取り立てて頭がよかったわけでもないし、容姿も普通。絵を描くのが好きだとは言っても、超一流になれるようなレベルではない。そんな中で、何をどう努力したら自分がやりたいことをできるようになるのかというのは、ずっと考えてきましたね。何一つ特別なモノを持っていなかったから、努力することができたと思います。

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悩んだ末に出した答えは「人とは違う経験をすること」。私は最初に就職した乃村工藝社でデザイナーと広報の仕事、そして株式会社中川政七商店に転職してからは社長秘書の仕事やブランドの立上げを経験して独立しました。ずっとデザイナーだけをしていますという人はたくさんいても、デザイナーと広報と秘書、新規事業の立上げを経験したことがある人って、そうそういないですよね。

――たしかにそうですね。少し話は逸れますが、デザインや創作活動というのは大事なものでありつつも、「なくては死ぬ」というものでもないと思います。そんな中でも古長谷さんご自身はやはり、それらが生活を豊かにするとお感じですか?

そうですね。むしろ、「なくては死ぬ」というものじゃないものをどう選ぶかに、人生の豊かさがかかっていると思うんです。洋服ひとつとっても、ブランドも選べるし、さらに好きな色や素材、形だって選べる。
その中で何を選ぶかに、その人らしさがあらわれるんじゃないでしょうか。インテリアやデザインなどもその1つで、とても大事なものだと考えています。

LIKE素敵だなと思うのは、目先の損得にとらわれない人

――お仕事のためのインプットという観点で、好んで見たり読んだり聴いたりされているものはありますか。

これを好んで、という特定のものはないのですが、できるかぎりいろんな人やものに触れるようにというのは気をつけています。でも本当は、限られたものにじっくり向き合うのが好きなので『ビジネスミーハー』だと思います(笑)

お客様にデザインのことを説明するときに「丸の内っぽい」「今話題の○○のお店っぽい」とか、みんながイメージしやすいものに置き換えてご説明することも多いですね。日ごろからいろんなものを見たり聴いたりしていると、そういうときにうまくイメージを伝えられるんです。話題のスポットばかりではなく、あえて人気のないスポットにも行ってみて、不人気の理由を探ってみたりもしています(笑)

この仕事って、自分がイメージを「わかる」だけじゃなくて、いろんな人にそのイメージを「通訳」できないといけない。同じイメージをお伝えするのにも、経営者の方と主婦の女性、学生とでは違う伝え方をしなければ伝わりません。さまざまな角度からの視点を理解できていないと、うまくコミュニケーションが取れない。こういった言葉選びにも、日々の情報収集が役立っていますね。

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――本当にいろんな人と会われるんですね。そんな古長谷さんが「素敵だな」と思われるのは、どんな人なのでしょうか。また、普段の人付き合いで大事にされていることはありますか。

目先の損得にとらわれない人は、やっぱり素敵だと思いますね。誰しも実績をあげたいとかほめてもらいたいとかに意識が向きがちですが、そういう感情って仕事を台無しにしてしまうことも多いと思うんです。成功している人ほど、目立たないことをすすんでやる人、自分の手柄を表に出さない人が多い気がします。

人付き合いでは、客観的に事実を正直に伝えるということを大切にしていますね。それはビジネスでもプライベートでもそうです。その場だけ耳障りのいいことを言うのは簡単ですが、それって誠実じゃないと思うんですよ。もちろん気分を害されて仕事がなくなったりするリスクもありますが、それでもその気持ちは変わりませんね。

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CHANGE「周りの人をよろこばせたい」という思いが仕事の原点

――大学で建築を学ぶ道を選ばれたのは、なぜなのでしょうか? また、その選択が現在のお仕事に影響を及ぼしているなと感じることはありますか?

小さいころから、ものを作ったり絵を描いたりするのが好きで、作品を見て周りの人も喜んでくれたんです。それがうれしくて、「どうせなら一番大きいものを作ろう!」と思ったら、建築の道を目指していました(笑) 10歳くらいのころからずっと建築家になろうと思っていたので、大学も自然と建築学科を選んでいましたね。

その後東京に出てきていろんなものを知るにつれて、「ものを作る」とひと口に言ってもイベントを運営する方法もあるし、ソファやインテリア雑貨などの身近なものを作る方法もあるんじゃないかと思ったんです。私はどちらかというと身近な人をハッピーにしたかったので、そちらのほうが向いているんじゃないかと。そんな話をしているうちにすすめられたのが、乃村工藝社でした。社会に出てからは、事業を起こしたり形無いものを広めたり、作るというのはもっと幅広い事だと改めて気がつきました。だから、クライアントの方々の幅は広がる一方です(笑)

今もそうなんですけど、「周りの人のよろこぶ顔が見たい」というのが、ずっと根底にある気がしますね。「よろこばせる」って一見単純そうに思えますけど、かなりむずかしいこと。会社によって目標はそれぞれ違うし、何がしあわせかも人によって全然違いますよね。でもだからこそ、それをピタッと汲み取れてよろこんでもらえたときって、本当にうれしいです。

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――それはまさに感動の瞬間ですね! 2つの会社を経てフリーランスとして独立されたきっかけはどんなことだったのでしょうか?

将来は独立したいというのは実は20歳のころから決めていたんです。大学生のころ、周りにとても素敵な経営者やフリーランスの方がたくさんおられたこともあり「私もいつかこんなふうになれたらいいな」とずっと思っていました。

でも「独立するぞ」と決めていたわけではなくて、退社してしばらくはこれからのことをゆっくり考えようと思っていました。でもそうこうしているうちに、お仕事のお声がけをいくつかいただくようになって。その仕事をしているうちに、気づいたら独立していたという感じです。

SENSE仕事に「才能」はいらないけれど「センス」は必要

――現在のお仕事に限らず、仕事で大成するためは才能ってやはり必要だと思われますか?

才能って実はすごくぼんやりした言葉だと思うんですよ。生きているときに「才能がない」と言われていた人が亡くなった後に評価されることもあるし、何人の人に認められたら才能があるとかいう基準もないじゃないですか。
だから、「この仕事をやってみたいけど才能がないかもしれない」と行動しないでただ悩むことは、本当に無駄だと思っています(笑)

――たしかにそうですね。「才能がない」という理由であきらめるのは、逃げなのかもしれません。

そうですね。ただ、センスはやっぱり必要だと思うんですよ。その仕事の感覚をつかむ力というか。いろんな人を見ていて思うのですが、センスというのは自分の“波”と周りの“波”を見極めて、うまく合わせる能力なのかもしれないと思っています。

今の仕事をがんばり続けるべきなのか、違う場所に行くべきなのか。うまく行かない原因はどこにあるのか。うまく行っていないのは自分だけなのか、それとも周りもうまく行っていないのか。問題の本質にたどり着くためには、そういうふうに自分と周りの“波”を客観的に見極められることが必要なんだと思います。

――現状を冷静に分析していくということですね。そう考えると、センスは「能力」とはいえ自分の心がけ次第で伸ばしていけるものなのでしょうか?

そうです。自分が直面した課題を丁寧に1つずつ因数分解して、解決していく。この作業の、量をこなしてスピードを上げて感覚的にできるようになるのがセンス。センスは先天的なものではなく努力によるものだと気がついたのも仕事をするようになってからです。地味なやり方ですけど、これがなくては何もはじまらない。

第一線で活躍する方と話していると、みなさん決断が本当に早いのですが、「見えちゃう」って言葉を使うんです。怪しいスピリチュアルでも何でもなくて、感覚が言葉より先に反応しているということなんですよね。いわゆる天才と言われる人も、実はそれだけの量をこなしてきたんだなと早々に気がつけたのは、ラッキーでした。

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――人生の岐路に立ったとき、道を決める基準にされていることはありますか。また、今まさに転機を迎えているという人にメッセージをお願いいたします。

好きなことが見つからないと悩んでいる人もいるかもしれませんが、それを探したり、決めつけてしまうよりも、とりあえずやってみることのほうが大事だと思うんです。まず行動。その中で、自分がどんなスタンスで生きていきたいのかも見つかってくるはずです。仕事や職種って、それが決まっていないと決められない気がするんですよね。

今は一度就職したらずっとそこにいなくてはいけないという時代でもないし、仕事のスタイルも自分で決められるようになってきています。せっかく選べるんだから、自分にピッタリのものを選ばないと。転職ということにとらわれないで、この機会に人生という大枠で自分を見つめなおしてみると、可能性はぐっと広がると思います!

(2016/12/16 Tokyo Edit_大住奈保子)

 原稿用

プロフィール
【古長谷 莉花/こながや りか】
1986 年静岡生まれ。
大学で建築を学ぶ。在学中のインターン経験から商業デザイン・インテリアに興味を持ち、株式会社乃村工藝社にデザイナーとして入社。ショールーム、商業施設、展示会ブース等の空間設計に従事。
その後、広報としてクリエイティブ経験を活かし、ノベルティや広報物のプロジェクトを担当。創業120周年プロジェクトを終え、株式会社中川政七商店へ社長秘書として入社。
秘書業と兼務し、JR 西日本との共同プロジェクト『走る日本市』、プラントハンター西畠清順氏との共同ブランド『花園樹斎』ブランドマネージャーとしてブランド立上げを行う。異動後小売課管理職として45店舗の店舗運用の標準化、インバウンド主担当となる。
2016 年、同社の創業三百周年プロジェクトの『三百周年記者会見』『プロモーション統括』『大日本市博覧会 東京』をプロジェクトリーダーとして実現させ、退社。
現在ブランドプロデューサー/ マーケッターとしてフリーランスで活動。
http://konagaya-rika.com
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