私の仕事は、アート作品と世の中の仲介人です
愛媛県を拠点に、画家・海野貴彦(かいのたかひこ)氏のマネジメントを務める松原香織さんに話を聞いた。(http://www.nhk.or.jp/u29design/archives/15013/index.html
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私の仕事は、アート作品と世の中の仲介人です
愛媛県を拠点に、画家・海野貴彦(かいのたかひこ)氏のマネジメントを務める松原香織さんに話を聞いた。(http://www.nhk.or.jp/u29design/archives/15013/index.html
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クライアントとアーティストを繋ぐ架け橋になりたい

――松原さんのお仕事について教えてください。

アートマネジメントをしています。まだ日本ではあまり知られていない職業なので、説明を求められたときには、「アート作品・アーティストと世の中・社会を繋ぐ役割」ですっていう言い方をしていますね。クライアントとアーティストが直接やりとりをしても、仕事が成立するとは思うんですが、共通言語を持ち合わせていないから、ズレが生じてしまうと思うんです。

私には、表現したいという欲求が無く、アーティストではないけれど、アーティスト的な感覚は汲めるように努めつつ、一般的な感覚をもって、両者のギャップを埋めて、繋ぐのが私の役割なんじゃないかなって思っています。日本ではアートのマネジメント自体、まだまだ認識されていないかもしれませんが、アートも、他の産業と同じようにマネジメントをして少しでも齟齬をなくす必要があると思っているので、自分の仕事にはとてもやりがいを感じています。

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――元々、アートマネジメントには興味があったんですか?

大学の時の選択科目で取って、「面白いな」って思ったのが始まりでした。ゼミも入ったんですが、1、2年しかいなかったから、広く浅く学んだって感じです。就職は一般的なOLを体験してみたかったので、地元の銀行に就職しましたけど、その時もアートに生涯携わっていきたいって思っていました。

銀行の仕事自体はやりがいもあって、楽しかったし、本当に良くしてもらったので申し訳なかったんですが、25歳を迎えて、「決断するなら今だ」と思って、1年半で辞めました。その後、アートマネジメントのスクールの講義を聴講したり、アーティストの下で実践しながら勉強したりして、今がある感じです。

――紆余曲折あって、アートマネジメントをされているわけですが、続ける原動力となっているものにはどんなものがありますか?

単純に楽しいんだと思います。すっごく苦しいし、辛いし、ありえないって思うこともいっぱいあるんだけど、すごく楽しい。私の判断基準の中で、楽しいか楽しくないかっていうのはけっこう重要なんですよね。それに、日々幸せを感じているので。あとは、自分に合っていると感じられている部分が大きいです。アートがすごく好きなんだけど、自分自身に表現したい欲求がなくて、かつ冷静に分析するのが得意だっていう自分の特性を踏まえて、「これだったらやりたいし、私に向いているんじゃないか」って思っているから、続けられている気がします。

納得がいくまで考えると、頑張らなくちゃって思うんです

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(松原さんの仕事道具)

――アートマネジメントのお仕事だけの他にも、お仕事をされていると伺いました。普段、どんなスケジュールで動かれているんでしょうか。

私の場合は、メインで付いているアーティストのスケジュールに合わせて行動して、空いている隙間を見つけてアルバイトするっていう感じです。アーティストが地方に行ってしまって、私の方にまとまった時間がとれるときは、派遣登録をして昼間ガッツリ稼ぐ、みたいなことをしていた時期もありました。

――予期せぬ事態が起こりやすい環境だと思うのですが、煮詰まることってないんですか?

辞めたいとか、もう無理って思うことはよくありますよ。予算がなさすぎる依頼や、理不尽な要求、無理なスケジュール設定なんていうこともけっこうありますしね(笑)。だからこそ、うまく息抜きするようにしています。

具体的には、「考える」、「人に話す」、「遊ぶ」なのかな。人に話すと、女性って楽になるでしょ。ただ、話すことは問題の解決にはならないから、話すことはただの気分転換。まず、考える状態になるために喋ったり、寝たりとかして、考えられる状態になったときに冷静に考える。で、考えていくと、頑張らなきゃなって思うんですよね。

――松原さんってかなり論理的ですよね。

そうですか(笑)。納得しないと生きていけないたちなので、色んなことをかなり突き詰めて考えてきたんです。それが今の自分を支えている気がします。

意外って言われるけど、レゲエが好きなんですよね

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――先ほど、息抜きの方法の1つに「遊ぶ」というものがありましたが、具体的にはどんな風に遊ぶんでしょうか?

出かけたりとかかな。知らないところに行ったりとか、ワクワクするのがすごく好きだったり……あとは、音楽がすごく好きで、レゲエが好きなの。

――え、レゲエが好きなんですか(笑)。意外です!

面白いでしょ(笑)。中学校でレゲエに出会って以来、レゲエばっかり聞いてて、大学生のときはよく野外のイベントとかクラブとかも毎月行ってた時期もありましたね。レゲエの中でも色々あって、クラブで踊るようなハイテンポのジャンルがあったりとか、バラードみたいなジャンルがあったりとか……。

ジャパニーズのレゲエだとミックスしてあるものを聞くから色んな人を聞くんだけど、たとえば「Mison-B」とか「RYO the SKYWALKER」とか「MIGHTY CROWN」も好きです。レゲエのポジティブなところが好きなんだと思います。悲しいときに「落ちるとこまで落ちます」っていう人いるじゃない? 私ね、元々が悲観的だから、陽気な曲を聴かないと耐えられないの。

――レゲエの他に好きなことってありますか?

私、食べることがすーっごい好きなんです。食べているものが身体を作っていると思うから。しかも、何が好きとかっていうよりは「おいしいものなら何でも好き」っていう感じで、おいしいものに出会ったら自分の好みを超えて感動しちゃう。あとは、誰かとたくさんの時間を一緒に過ごすようになると、その人の好みが理解できるから、「この人、これ絶対好きだろうな」と思って、いいなと思ったものを勧めちゃうくらい、食べることにすごく興味がありますね。

回りの状況をよく見た上で 自分らしく振る舞える人

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――最後に、センスのいい人ってどういう人だと思いますか。

私、デザイン的なセンスは無い方だと思っているから、センスと言う言葉自体はすごく苦手なものとして生きてきたんですよね。センスって、そもそもどういう意味なんだろう(笑)。物事の機微を感じて、表現できる人ってことなのかな。自分を持った上で、回りをよく見てる人なのかも。どっちかだけだとダメで、自分を持ちつつ、回りの状況をよく把握してる、そのバランスが良い人が、センスがいい人っていうことになるのかなって思います。

(佐々木)

プロフィール
1986年愛媛生まれ。大学在学中にアートマネジメントに出会い、その面白さに強く惹かれる。一度は地元の銀行に就職するも、都会に憧れて、1年半で退社。東京のスクール専門学校でアートマネジメントの講義を受け、現在はフリーのアートマネージャーとして全国を飛び回りながら着実に経験を積んでいる。アートの企画制作団体「スーパーノーマル」としても活躍中。
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