六本木のインテリアショップで働く、
松渕彩子さんに話を聞いた。
センスがいい人に学ぶ、幸せに生きるコツを紹介する「LIFE TALK!」。
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六本木のインテリアショップで働く、
松渕彩子さんに話を聞いた。
センスがいい人に学ぶ、幸せに生きるコツを紹介する「LIFE TALK!」。
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お客様との化学反応を楽しむ

――まずは松渕さんの仕事について教えて戴けますか?

大学を卒業してからインテリアショップで実際に店頭に立って働いています。基本的にキッチンの雑貨から家具まで置いている様なインテリアのお店です。
大規模な空間コーディネートというものよりは「今度こういうパーティをしたいんだけど」っていうテーブルコーディネートとか「こういう料理をするんですけど」って木べらを探したり、とか小物の提案など小さなことを積み重ねていくことが多い仕事だと思います。
生活のささやかなところの心地よさとか使いやすさっていうところの手助けというのが近いんじゃないですかね。

でも、基本的なベースになるものは、お客様が元々持っているイメージがあると思うんです。だからそれに合うもの、追加したら素敵なものっていう視点から考えて勧めていくことが多いです。話を聞きながらその人の持っているイメージを想像したり引き出したりしていきますね。
派手な外見の方でもシンプルな暮らしを好まれているっていう例もあります。そんなギャップや発見があるとぐっと提案する楽しみが増してきます。
インテリアはファッションに似ているんです。最近は北欧っぽいものが流行ってますけど、全部流行りものの部屋だと何故自分がそこで暮らすのかわからなくなってしまう。だから流行っているものは素材とかちょっとしたアクセントになるもので取り入れる方が楽しめるんじゃないですかね。

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提案する時に、インテリア雑誌に載っているような答えを言えばいいとは思えないんですよ。生活水準や違いはありますし、お客様第一ではあるんですけど私なりの価値観や立場っていうのを混ぜて話すことを心がけています。
そこでコミュニケーションをとって化学反応があるのが一番嬉しいんです。

――インテリアの現場のコミュニケーション上で大事なことって何でしょうか。

現場では実際の部屋を見れることや写真や図面などのやりとりも無くはないですけど、ほとんどありません。だから知識とかも勿論ですけど、話をしながらお客様が心地いいと思うものを如何にイメージできるかってことが大事ですね。「これが最高級です」とか高品質で営業してもそれを優先順位に挙げない人もいるんです。
そういう方が持っている生活のイメージとか大事にしているものとかを引き出す。これが共有できると面白い。お客さんからのフィードバックが良いと更に嬉しい。半信半疑で買ったお客様が「意外と良かった」といってくれたりするんです(笑)。
これは現場に立たないと味わえないことなんですよ。豊かなやりとりができる仕事なので毎日新鮮で楽しいです。
基本的に「楽しさ・豊かさ」っていうのがあっての価値なのでそこは大切にしたいですね。

旅をして視点を変える事で毎日が新鮮になる

――松渕さんが言うその「楽しさ・豊かさ」を刺激するものっていうのは何でしょう?

多くはないんですけど、自分の凄く好きなカフェがあって休みの日とかに行くんです。
そこで本を読んだり、手紙を書いたりするのは「自分が過ごしたいのはこういう空間なんだ」ってことを再確認して軌道修正できる時間なので大切にしています。
あとは一人旅。旅行すると感覚的に鋭くなると思うんです。今までも北欧で3週間3カ国を巡った時は大好きな器と出会ったりとか、自分の本当に好きなものをじっくり時間かけて追及する時間になりました。
<新しい視点の発見>っていうんですかね。いつも同じ場所にいて同じことだけをしていると、その現実がそこまで悪くはないけど自分を見失ってしまうことがある。でも一度、離れてから考えるとルーティンになっていることも「自分にとって大切なことなんだ」と現実をまた続けられるんです。これで仕事に新鮮さが戻って来て面白味も復活していきます。

――なるほど。確かに視点が変わるだけで日常が大きく変わる可能性というのは十分ありますよね。その旅で出会った好きな器についてもお聞きしたいです。

自分の好きなものを吟味する

北欧を旅した時にトランク一杯に蚤の市で買った食器だけ詰めて帰ったんです。
そうしたら「もっともっと集めたい!」って気持ちが強まったんですね。沖縄にもよく旅で行くんですけどそこでも焼き物を袋一杯買う様になったりとか。
今年は益子の陶器市に始めて行きました。なので最近は各地の器が集まりつつあります。

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――それはインテリア=家具としての食器というのは、また違う解釈なんですかね。

うーん、形に近いのかな。今でこそ買った器を使って皆とごはん食べたいから料理とかしますけど、ただ持ちたいっていうのが強いですね。
ただ漠然と自分が好きなものの「イメージ」があるんですよ。
だからヴィンテージとかそういう骨董品的な価値というより、それが本当に自分の好きなものか、「イメージ」に合うのかどうなのかというのを良く考えて買いますね。それに合わなければ買わないし。合えばおもちゃみたいなものも買っちゃいます。
都内でもたまに陶器を観に行きますよ。代々木上原のマンションの一室にあるギャラリーとか、青山にあるうつわ楓でも好みの作家さんとの出会いがありました。

衝撃を与えてくれる音楽たち

――最近は音楽でも食べ物でも「何でも好き」って答える人が多いですけど、自分の本当に好きなものか考えるっていうのはカッコいいと思います。

そうそう。音楽も聴いたイメージとかの刺激がダイレクトに自分の部屋とかお店に対する考え方に繋がってくる大事なことですよ。
もともと小さい時からピアノをやっていたんですけど、中学校くらいからジャズの流れる深夜ラジオを良く聴いていました。それがきっかけで私にとってジャズは音楽のキーワードになっています。ピアニストのキース・ジャレットは思い出のあるインテリアショップの店員さんから教えてもらって何度も聴きましたね。
あとここ最近好きになったのはパリ在住日本人アーティストの三宅純さん。コンテンポラリーダンサーのピナ・バウシュのドキュメンタリーが3年前に公開されたんですけど、その音楽が彼だった。すぐにサントラを買って帰国した時のライヴもトークセッションも聴きに足を運びました。
それが一例で、映画とかたまたま勧められた音楽とか偶然出会ったものに対して深入りしていくことも多いです。

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――なるほど。たちの悪い受動性というか。でも結局それって部屋に近いですよね。

そうかもしれないです。受動的なのか能動的なのかわからない(笑)。
ちょっと刺激されると能動的になるんで気を付けてくださいっていう感じとか、家に来られたらあれやこれや説明し始めるのに似ているのかもしれません。

――(笑)。

でもそういう新しいものに出会うと衝撃を受けるんです。
音楽で言えば、自分はプレイヤーではないけど「自分にとってその音楽みたいなものってなんだろう?」って考えます。
部屋の表現で自分らしさがにじむような空間作りのアイディアが湧き出てくる時などはそういう音楽たちに何かヒントを得ている様な気がするんですよ。

私にとってセンスの良い人は
人に対して開かれている人

――それでは松渕さんにとってセンスのいい人とはどんな人でしょうか?

自分なりに何かの道を突き詰めつつも、その知識とかイメージとかの間に余裕とか隙間がある人は素敵だなと思います。
一貫したものがあるんだけど、人とコミュニケーションをとれるゆとりがある人。人に対して開かれているってことですかね。あとは、バランスよく選択できる人。

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空間に関して言えば、照明やBGMや家具の素材とか配置を総合的な組み合わせを想像して形にできるとか。それが可能になるような色々な知識や経験、思想や文化的な豊かさがある人を見るとセンスいいなって思います。

(小池)

プロフィール
1989年生まれ。出身は秋田県。新潟県新潟市西区育ち。津田塾大学・国際関係学科卒業後、旭川の木工家具を扱う会社を経て『H.P.DECO好奇心の小部屋』ショップスタッフとして勤務。ファッションとしてのインテリアを広く学んだのちに、現在まで六本木の『LIVING MOTIF』ショップスタッフ。どんな時代であっても『豊かさと心地よさ』を軸に人と繋がることのできるインテリアの仕事を大切にしながら、日々店頭で家具の提案を行っている。
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