「niko and ... TOKYO」の店舗をつくる男が考える、センスの良い“バランス感覚”とは
ファッションや家具、雑貨を取り揃える「niko and ...」のVMDを担当する魚住岳寿さんに話を聞いた
top
「niko and ... TOKYO」の店舗をつくる男が考える、センスの良い“バランス感覚”とは
ファッションや家具、雑貨を取り揃える「niko and ...」のVMDを担当する魚住岳寿さんに話を聞いた
このエントリーをはてなブックマークに追加

JOB「niko and ... TOKYO」のディスプレイ及び空間演出を担当

――現在のお仕事について教えてください。

僕の仕事はVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)です。簡単に言えば、バイヤーや商品企画が入れてきた商品をどのようにお店でディスプレイするか考える仕事。niko and ... TOKYOでは「45 DAYS SHOP」と言って、45日~60日ごとにお店の打ち出しをガラッと変えます。つまり、様々なカテゴリーの商品たちが1ヶ月半ごとにお店へ来ます。

その度にお店のレイアウトを変えます。たとえば、たくさん店頭に並べていたものを少なくして別のものを置いたり、今までとは違う組み合わせでディスプレイして、お客さまに目新しさを感じてもらえるような演出をします。

――ディスプレイはどのように設計していますか?

僕の場合、ふたつのことを意識しています。ひとつ目は、仕入れる商品のメーカーさんが描く世界観をできる限りniko and ... TOKYOの空間で表現すること。事前にメーカーさんについて調べたり、直営店に行って商品を購入し、実際に使用してみて世界観を汲み取ります。もし、お店にある什器だけで表現できそうになければ、お店のスタッフで什器や販促物などを作ることもあります。

ふたつ目は、自分がワクワクするものを考えることですね。ディスプレイを考える際にはまず、設計図となるイメージを描きます。

01

描いているときには、「ここに人が来たら楽しいかな」「こういう見え方をしたらワクワクするかな」など、お客様の視点に立って、その場所を訪れたときの感覚をイメージしながら描いていきます。

でも、設計図はあくまで設計図。実際に店舗でディスプレイしてみて「こうした方が楽しいかな」と思ったらすぐに変えていきます。

LIFE外に出て、さまざまな衣・食・住を見に行く生活

――休日の過ごし方を教えてください。

とにかく外に出て、衣・食・住いろいろなものを見に行きます。あとは、友だちとキャンプや登山に行ったり。最近特にハマっているのは料理です。家にいるときは、部屋の掃除をしたり、無意識に小物の整理整頓をしています。ある種の職業病ですよね。

――なるほど(笑) では、平日はどのようなスケジュールで生活をしていますか。

起きる時間は、だいたい朝6時くらい。目が覚めたらランニングに出かけて朝ご飯をつくります。食べ終わったら掃除をして洗濯。そして部屋の整理整頓をして出社する生活です。帰宅するのも10時前後なので、わりと規則正しい生活を送っています。

こういう生活の方が、インスピレーションも湧きやすいんですよね。去年までは生活リズムの乱れた生活を送っていたので、より今は規則正しい生活の大切さを実感しています(笑)

02

CHANGE40歳を境に生活リズムを改めた

――どのように生活リズムが乱れていたのでしょうか。

とにかく不健康。夜型で朝日を全然浴びない生活でした。

意識が変わったのは去年の12月ごろ。来年を意識したとき、厄年を迎えることに気づいたんです。そして、厄年なのにこのままの生活を続けることに焦りを感じて、生活を変えようと思いました。

まずは、1週間かけて家を片付けました。次に体も動かしてみようと思い、近所にある池のまわりを歩くように。歩いているうちに走ってみたくなって、朝早く起きるようになりました。

すると、出勤まで時間ができた。そこで朝ごはんを作るようになり、おのずと無駄に外で飲む機会も減りました。そういうサイクルで過ごしていたら、いつのまにか早寝早起きの生活へシフトしていたんですよね。

ちょうどそのくらいの時期に、会社の仲間から登山に誘われました。
去年までの僕なら、登山は断っていたかもしれません。でも、そのときはいつも作っている料理を山で作りたくなった。「ちょっとやってみよう」という気分になったんです。それに、登山道具の素材はアルミやチタンが多く、デザインに無駄がなく無骨。その佇まいに惚れて、ひとつ一つのアイテムが仕事の延長線上にあるように感じ、登山道具を一式揃えちゃいました。

IMG_9856_1

LIKEさまざまな楽しみ方のある山は楽しい

――山の楽しさは、どのあたりにありますか?

一緒に登っている人たちと話しながら、わいわいやっている時間が楽しいです。そして、登っている最中に自分を追い込むことになるのも好きですね。山の中腹でギブアップしたくなっても、山頂まで頑張ってみる。そうしてはじめて見える山頂からの景色に心を揺さぶられます。それが第一の楽しみ。

そのあとに山頂で料理をたしなむ。それが第二の楽しみ。最後の楽しみは、寝る前です。閉塞感のあるテントで自分だけの時間を楽しむ。その時間がたまりません。

また自然の情景はディスプレイの参考となります。たとえば、雷で倒れた木に苔がむし、きのこが生えている光景を目にすることがあります。これらの色のバランスは本当に絶妙です。こげ茶色の木に苔の緑色があしらわれ、きのこの白色がぽつぽつと点在する。その光景は美しく、やはり人間にとって気持ちいい配色は3色がちょうど良いのだな、とヒントを得るんですよ。

色だけでなく、造形も面白いですね。斜面に生えている木はまっすぐに生えません。日に当たろうとして斜めに突き出している。その光景はまさにアート。つい引き込まれます。

03_1

SENSEバランス感覚の良い人はセンスが良い

――「センス」とは何だと考えますか?

僕がセンスいいな、って思う人はバランス感覚が良いように思います。具体的に話すと、ポイントは3箇所あります。ひとつ目は間の取り方のうまさ。ふたつ目は色の使い方のうまさ。みっつ目は量の使い分けがうまさ。これらを合わせて「バランス感」の良いモノに出会ったとき、センスの良さを感じます。

――実際にディスプレイする際もバランスを意識されているそうですが。

そうですね。簡単に言うと、色や大きさがまとまっている空間やモノが与えるのは静的なイメージ。一方で色や大きさがバラバラの場合は、動的なイメージの印象を受けます。

04

本棚を例に挙げます。この本棚(※上図参照)には、本とコップに入った鉛筆がありますよね。本は色をまとめて並べて静的なイメージ。コップのなかにある鉛筆は、向きをバラバラにして動的なイメージを出すようにしています。本の色がバラバラになっているとやや乱雑なイメージだけになってしまいますし、鉛筆の向きがすべて揃っていると整然としすぎてしまう。このバランスを意識しつつ、その空間で伝えたい事が何かを考えながらディスプレイを作ります。

また、意図的に雑然とさせることもあります。つい宝探しをしたくなるようなお店づくりですね。眺めているときも、モノを探しているときも楽しいお店にしたいと思っています。

――雑誌や写真などは“面”で完結します。しかし、店舗では“空間”を意識することになりますよね。

そうです。だから僕はよく店舗を動き回り、モノの見え方について考えます。正面からの景色だけじゃなく、階段を登ったときや店舗の奥から手前へ歩いたときの視界はどうか、とか。

また、考えるのは立っているときの視界だけではありません。展示してある椅子やソファーに座ったときの光景を知るために、よくソファーに座って考えていますよ。

――センスの良いディスプレイを生み出す力は、どう養うものなのでしょうか。

どう養うのでしょうね(笑)...... ただ、前職で学んだディスプレイの基本が活かされているように思います。また、もともとこういう仕事が好きなこともあり、日常生活で見たありとあらゆるものが蓄積され、ディスプレイの参考にしているのかもしれません。

自分なりに意識していることは、脳が喜ぶモノをたくさん見るようにすること。ただ、自分の脳が喜んでいても、他の人に伝わらなくては意味がない。そこで、高級なもの、安価なもの、廃れたもの、高級なお店、百貨店、ショッピングセンター、スーパー、商店街、いろいろなものを見て、ピントが合ったものを脳に残すようにしています。

小さな街の商店街にある八百屋さんの値札は本当に面白いですよね。手書きで書いてある「ナス90円!」といった値札には、八百屋さんの経験則が詰まっているように思います。長年やってきて、あの形がお客さんに買ってもらう書き方なのでしょう。そこに、「今日はナスがお買い得だよ!」なんて言葉の接客が入る。その空気感が面白いですよね。

あらゆる人の様々なライフスタイルを見て、自分の感覚が偏りすぎないように努力をしています。そうして国籍を問わず様々な人がワクワクできるような空間を、僕は作り続けたいと思います。

(2016/10/25 高根ちさと)

【SHOP INFORMATION】

niko and ... TOKYO

住所:東京都渋谷区神宮前6-12-20
電話:03-5778-3304
営業時間:11:00~22:00

公式HP:http://tokyo.nikoand.jp/
公式FB:https://www.facebook.com/nikoandtokyo/
公式Instagram:https://www.instagram.com/nikoandtokyo/

 

プロフィール
1975年生まれ。神戸市出身。大手アパレルメーカー10年勤務後、2007年より(株)アダストリアの前身となる(株)トリニティアーツに入社。niko and ...のブランド立ち上げから営業統括MGRを経て、VMD統括MGRとして日本全国100店舗近くのショップの売場づくりに携わる。2014年より旗艦店niko and ... TOKYOのVMDを中心に従事。現在韓国の旗艦店のVMDも定期的に携わっている。
この記事をシェアする