読むのが仕事だけどハロプロも追っかける。
書評家、翻訳家の大森望さんに話を聞いた。
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読むのが仕事だけどハロプロも追っかける。
書評家、翻訳家の大森望さんに話を聞いた。
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JOB本を読むのが仕事。月に20~30冊を読む

――大森望さんの肩書は?

最近は、書評家、翻訳家、のどっちか、もしくは両方ですね。

――大森さんは他にもアンソロジストだとかパーソナリティーとか、いろいろな仕事をされている。でも、ご自身では書評家、翻訳家という位置づけだと?

世間的にはそのほうが通りがいいので。僕としてはSFが本業という気持ちがあります。ミステリーの仕事もするし、文学方面の仕事もする。けれど、基本はSF。翻訳も今はSFしかほぼやっていない。SFの仕事の中に翻訳もあり書評もあり、アンソロジーの編集もある、という感じですね。SFはホームグラウンドです。

――書評家、翻訳家の仕事のボリュームは?

翻訳は2割から3割くらい。残りは翻訳以外の仕事です。書評家と言っても書評をするだけではなくて、文庫の解説とか、対談、インタビューをしたりされたりとか、トークイベント、メディア出演、文学賞の選考とか、関連する仕事がけっこう沢山あるんですよ。アンソロジーの編集とかもある。純粋な書評の仕事はそんなに多くはない。けれど、本を読む時間も含めると、書評とそれに付随する仕事の比重が大きい。書評の仕事は本を読まないと始まらないので、小説を読むのが仕事みたいなものですね。

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──大森さんは本を読むスピードが早いことでも有名ですよね。

そんなに早くはないですよ。書評家の中では普通くらい。日本語の普通の小説であれば1冊2~3時間くらい。

──めっちゃ早い!月にどれくらいの本を読むのですか?

雑誌『本の雑誌』でSFの新刊時評をずっと担当しているので、SFだけでも月に10冊は最低でも読まないといけない。プラス、他のいろんなジャンルのものも読むので、2~30冊だと思います。

──翻訳の仕事の方はどうなのでしょうか?

最近は、均して年に1冊出るかどうか……。仕事を受けたまま、全然やってない翻訳が3~4冊あります。常に遅れていますね。仕事が翻訳だけなら、2か月で1冊は出来るんですけど、せいぜい月に10日くらいしか翻訳の時間を取れない。なのでどうしても長くかかるんです。

LIFEリラックスするのはテレビを見ているとき

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──休日はあるのですか?

そもそも、休日という概念があんまりない。家族と旅行に行ったり帰省したりしても、行き帰りに本を読んだり原稿書いたりするので、完全に休みってことはあんまりない。映画館に行ったりDVD観たりも仕事と言えば仕事なので……。気がつくと今日は1枚も書いてないとか、そういう日はありますけど。逆に言えば、今日はだるいなあと思ったら1日ネットで動画を観てぐうたらしててもて誰にも怒られない(笑)。毎日が休日だとも言えますね。

一日のうち、仕事とまったく関係ない時間は、家族でご飯を食べる前後の1、2時間くらいかな。

──家族と過ごす時間がリフレッシュになる?

いやいや、仕事より子供と話したりする方が大変ですよ(笑)。子供同士が喧嘩するのを止めないといけないとかね。そっちの方がぜんぜんストレスというか、めんどくさい。大変(笑)。女房がよく我慢して相手してるなあと。仕事のほうがよっぽど楽です。

──クリエイティブな仕事の場合、常に仕事をしているようなものですからね。

会社に行くわけじゃないから、仕事場に行ったら気ままなもんですけどね。ドラマとかバラエティとか、けっこうテレビも見ていますね。最近、起きてからエンジンがかかるまでが遅くなっているので、前日に録画した番組を観る時間がわりと長くて。どうでもいい番組を倍速で消化する(笑)。

LIKEハロプロにはまっている

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──大森さんといえばアイドル活動も有名ですよね。

アイドルは2013年の11月に本格的にハマったので丁度、2年なんです。1年間はひたすら見つづけて。昔のライブDVDやネット動画を見たり、雑誌を読んだり、ライブに行ったりとかで、1年間はずっとインプットだけしていました。で、2015年の1月から原稿を書くのを解禁して、コラムの連載も始めたんです。まだぜんぜん仕事にはなっていないですけどね。

──今はまってるアイドルが……

ハロー!プロジェクトです。モーニング娘。’15や℃-uteなど、いまは7グループいて、その全部を一応フォローしています。ライブ含めて。

──ハマった理由は?

中野サンプラザで観たモーニング娘。のライブに感動して。10年前くらいに武道館で見ていたんですけど、その頃とはぜんぜん変わっていた。そこから現場復帰して、という感じですね。

──コラムというのが『WEB本の雑誌』に連載している「50代からのアイドル入門」ですね。

2015年の1月から連載しています。『WEB本の雑誌』に企画を持ち込みしたんですよ。ライター歴30年にして初めて、連載の企画を自分から売り込んだ(笑)。ぜひやりたい、この企画はぜったいあたるから、と。

──忙しいのに(笑)。

そうそう(笑)。

──連載がまとまって本になるのだとか。

2016年の2月くらいに出る予定です。

──アイドル活動は仕事になりつつあるようですね。

本が売れたら「仕事です」と言えるんですが、畑違いなのでさっぱりわからない。現状では、9割以上、趣味ですね。

──アイドル活動は趣味か生活かというと趣味だと?

生活になりつつありますけどね……(笑)。

──アイドル活動は日常のどれくらい食い込んで来ているんですか?

今は余暇の7、8割ですかね。

──今は余暇の部分で抑えている?

まあ、たぶん……。

──抑えてないですね。

いやいや、基本的にハマり症なんで、今までも余暇はいろいろハマってたんです。トレーディング・カード・ゲームの「マジック:ザ・ギャザリング」を延々やってたりとか、ひたすら落語のCDを聞いていたりとか。その部分がアイドルになっただけ。まあ、徐々に時間が増えつつあるのは確かですが(笑)。

──大森さんのTwitterの話題はほぼアイドルですが。

そんなことはない。半分ぐらい(笑)。

──昔のDVDを見たり、インプットしていたというのが大森さんらしい。

オタクの習性ですね。あるジャンルにハマったら、過去にさかのぼって、「ここからここまで」と決めて全部押さえることから始める。

──やはり過去を知っておかないといけない。

そうですね。ただし、ハロプロの歴史は18年近くあるので、まださかのぼり切れていない。

──さかのぼろうと思っている?

いやいや(笑)。そんなにさかのぼらないです。それこそ「LOVEマシーン」のころとか、リアルタイムで知ってる時代はそんなに興味はない。本格的にハマり直したきっかけが道重さゆみなんですが、彼女がモーニング娘。に加入した2003年あたりで自分が離れちゃっていたので、とりあえずその頃まで。でも、娘。の黄金期は見るものが無限にあるので……。ライブDVDはだいたい見たけど、ネットにある動画を全部押さえるのはすごく大変。

──押さえようとしている。

いやいや(笑)。できる範囲で。

──ライブもかなり行かれているようですが。

時間が自由になる仕事なので、行こうと思えば行けちゃうのがよくない。CDの発売イベントとかも、その気になれば通えるし。

──ライブはどこまで行かれるんですか?

去年は道重さゆみ最後のツアーで静岡に2回行きましたけど、基本は東京だけです。遠征し始めるとキリがないから。ただ、ツアーに東京が入っていないケースがあるので、その時は埼玉、千葉、神奈川あたりまで。

──ライブには取材で行くんですか?

ファンクラブでチケット買っていきますよ。あとはネットで買ったり。ありがたいことに、最近はたまに招待していただくこともありますが、関係者席だと座って腕組んで見ないといけないし。

──あくまでもファンの立場でいようと。

アイドルそのものと同じくらいファン文化に興味があるし、チケットが届いて座席番号に一喜一憂するとか、オークションで高値になって大変とか、最前(列)が当たって推し(ているアイドル)のレス(視線)をもらえたとか、そういうファン目線の話って活字メディアになかなか出ないじゃないですか。僕は音楽ライターでもアイドル評論家でもない、ただのハロヲタ(ハロプロのファン)ですけど、たまたま文章を書くのを仕事にしているので、好きなSFについて書くように、好きなアイドルについても書きたい。実際、アイドルの現場に行くと同年配のおじさんがいっぱいいて、オイオイ叫んでるんです。そういう中年ドルヲタの立場で、現場の楽しさを伝えたいと。

SENSEセンスには面白さがないといけない

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──大森さんにとってセンスのいい人とは?

うーん、難しいですよね。すごくかっこよくするのがいいことなのか?というのがあるじゃないですか。かっこいいものに対して「ケッ!」という感覚もある。センスのいいものばかりで固めると、かえってそのがんばりがかっこ悪いみたいなこともあるわけですよ。僕が考えるかっこよさの、センスのよさの中には、「面白さ」が入ってくる。SF作家で言うと、ウィリアム・ギブスンっていう、めちゃくちゃかっこいい小説を書く人がいるんですが、すごくオタクっぽいアイテムをちょこっと入れたりする。その崩し方にまたセンスのよさを感じたり。

──大森さんはピンクハウスだとか女性向けブランドを着ることが多いですよね。

男の服ってつまんないですよね。というか種類が少ない。男向けのプリント柄のシャツってほぼないじゃないですか。僕は会社員ではない。何を着てもいい仕事。だったら会社員の人が着ないような服を着ようと。書評とか翻訳とか目立たない仕事をしているので、服ぐらいは目立とうと(笑)。

──そこが大森さんのファッションセンスなわけですね。

僕がふつうにかっこいい線を狙っても、絶対かっこよくはならないわけですよ。すごくいいスーツを仕立てるとかすれば、ある程度はなんとかなるかもしれない。だからといって、かっこいいとは思ってもらえない。だったらむしろヘンな方向で目立つほうが簡単だし、安上がりだと。

──仕事のなかでのセンスのよさはどう考えていますか?

文章だと、逆に、あんまり目立つようなことはしないですね。翻訳でも書評でもそんなに奇をてらわない。普通の中にちょっとおかしい部分を入れる。そういう感じにしています。文章にはセンスが出ますね。どれくらい自分を出すか、どれくらい黒子に徹するかのバランスもけっこう難しくて、失敗すると無惨なことにある。服装にTPOがあるのと同じで、文章にもくだけた感じがふさわしい場所もあれば、ある程度真面目にしないといけない場所もある。場所に合わせた装いがあるのと同じように文章にも場所に合わせた書き方が必要だと思っています。新聞、週刊誌、WEBと媒体によっても違う。でも、真面目だけじゃつまらない。あまり合わせすぎると埋没してしまう。そのバランスを取るのがセンスなんでしょうね。

(2015/12  大橋博之)

プロフィール
1961年2月2日生まれ。京都大学文学部英文科卒業。
日本推理作家協会会員、本格ミステリ作家クラブ会員。
シオドア・スタージョン「ニュースの時間です」、テッド・チャン「商人と錬金術師の門」「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」の翻訳により、第36回、第40回、第43回星雲賞海外短編部門を受賞。
2008年から、創元SF文庫で開始された『年刊日本SF傑作選』の編者をつとめ(日下三蔵と共編)、創元SF短編賞の選考委員も担当。
河出文庫で刊行されている、日本SFオリジナル・アンソロジー『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』全10巻の責任編集も担当。2014年、『NOVA』で日本SF大賞特別賞受賞。第45回星雲賞自由部門受賞。
2015年、『サンリオSF文庫総解説』で、第46回星雲賞ノンフィクション部門を受賞。
主な著書に『21世紀SF1000』、『新編 SF翻訳講座』、『文学賞メッタ斬り!』シリーズ(豊崎由美と共著)など。
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