地方再生のカギはイメージ力。土地に対する理解力でもある。
ウォーカー総編集長の玉置泰紀さん(@tamatama2)に話を聞いた。
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地方再生のカギはイメージ力。土地に対する理解力でもある。
ウォーカー総編集長の玉置泰紀さん(@tamatama2)に話を聞いた。
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JOB勝手に作った肩書で仕事をする

──『どんな仕事をされている方なのだろう?』と気になっていました。

KADOKAWAが発行している雑誌『Walker』を総括している「ウォーカー総編集長」です。
『Walker』には『Tokyo Walker (東京ウォーカー)』『Yokohama Walker (横浜ウォーカー)』『Tokai Walker (東海ウォーカー)』『Kansai Walker (関西ウォーカー)』『福岡Walker』の5誌があります。その他に不定期の『北海道Walker』や毎年、秋に刊行している『ラーメンWalker』、それに『Walker』と名称をつけている単発の雑誌もたくさん出しています。
僕はそれらすべての責任者です。ちょっと前まではwebメディアの『Walkerplus』も含めての総責任者でしたが、今は紙媒体のみになっています。
でも、実は会社に『ウォーカー総編集長』という肩書はないんですよ。僕が勝手に作った肩書。今は社内的にオーソライズされているので、いいといえばいいんですけど(笑) 本当の肩書は『地域情報コンテンツ本部 地域情報コンテンツ局 ウォーカー事業推進部部長』です。でも、部長といってもあんまり外の人に響かない。編集長の方が理解してもらいやすい。だったら総編集長がいいかなと思ったんです。

──『Walker』の総編集長というのはどういうことをされているのですか?

『Walker』という全体のビジネスで利益を出す仕事です。
今はwebメディアの時代になっている。KADOKAWAでもwebメディアの『Walkerplus』があって、巨大なサイトに育ちました。けれど、「紙媒体はしんどいよね」みたいなところがあって、たまに赤字を出していたんですよ。
そのため、2015年からコンセプトを変えました。簡単にいうとマルチデバイスです。
雑誌を作っているのではなく、都市情報のインフラを僕らは作っているんだと考え方を変化させました。雑誌にすることもあれば、webにすることもある。アプリにすることもあるし、フリーマガジンにすることもある。高速道路情報のフリーマガジン『Highway Walker(ハイウエーウォーカー)』は月100万部くらい発行しています。「どういうデバイスになるかはあまり問題じゃないよね」と転化させました。

それらを横断して統制するには、全体を統括する総編集長がいる、ということです。
2015年の『Tokyo Walker (東京ウォーカー)』創刊25周年にやっと完成形にほぼ近づけました。自分たちが持っている『情報』という資源を許に「こういうことをいろんなパッケージにできますよ」と示したことによって利益が出るようになったんです。

──具体的には、どのように展開されたのですか?

2015年にKADOKAWAも加わって製作した、細田守監督の『バケモノの子』というアニメ映画が公開されました。この『バケモノの子』の舞台は渋谷なんです。それに基づいて『渋谷Walker』というムックを出し、『TokaiWalker』でも連携し、『Walkerplus』で渋谷の特集をし、『WalkerTouch(ウォーカータッチ)』というアプリで渋谷の街でデジタルスタンプラリーをやり、総まとめとしてヒカリエで公開前日の7月10日に『エンタメテインメント街づくり研究会』という、渋谷を考えるシンポジウムを開催しました。
自分たちが持っているデバイスだけで、ほぼ全ジャンルをまとめることができた。「ちょっと違う渋谷の表現ができるよね」というのが打ち出した大きなポイントでした。

──すべての『Walker』の総括として、統制しなければいけないわけですね。

僕には総括としての管理能力はあるとは思っています。が、統制することよりも、雑誌を作るのが好きなんです。どちらかというと完全なひらめき型で、いろいろ思いついてやるのが好きなんです。けっこう、クリエイティブな人間なんですよ(笑)
なので、自分で発想して作った『Walker』がいっぱいあります。『太陽の塔Walker』はそのひとつ。これが大きなきっかけとなって、『スーパー戦隊Walker』『超合金Walker』といろいろ出しています。あと、僕が深くかかわったのは2016年に出した『若冲Walker』です。すごく話題になり、よく売れました。

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──大阪など、いろんな地方を飛び回っているようですが、会社の仕事であちらこちらに行かないといけないのですか?

そうです。でも、勝手に行っているところもあるんですけどね(笑)
僕は『Walker街づくり総研』というのを勝手に作ったんですよ。会社のなかに有志を集めて。せっかく街情報をやっているのだから、シンクタンク的な活動もやろう、外の人とも勉強会をやろう、ということでスタートしました。今は『Walker街づくり総研』は会社に認められていて僕は、ウォーカー街づくり総研所長を勤めています。また、社内に『街づくり総研課』というのができ、その課長も兼任になりました。

『Walker街づくり総研』では3か月に1回、シンポジウムをやっています。スタートして3年目で、もう8回やりました。先の『バケモノの子』の公開に併せてやったシンポジウムもその活動のひとつです。
最近ではさまざまなプロジェクトに『Walker街づくり総研』として係わることが多くなって来ました。大阪に行くのもその仕事の絡みが多いんですよ。
純粋に会社の仕事ではないこともかなりやってはいますが、会社の財産になっている。結果的にそういうところから仕事が生まれたりもしますね。

──『ショートショートフイルムフェスティバル』では共催されていました。

そうなんです。2016年6月3日に、大林宣彦監督などをお呼びして行いました。あれは大きかったですね。今後は『Walker街づくり総研』を本格的にやろうかと話をしているところです。現状はシンポジウムの開催がメインになっているので、コンサティングもやるところに持って行こうと思っています。

LIFE街はすべて違うところに魅力がある

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──街の魅力とはどんなところでしょうか?

僕はどこに住んでも楽しくなるんですよ。その土地、その土地のよさがありますからね。
今は単身赴任で浅草橋に住んでいます。もう、めちゃめちゃ気に入ってますよ。浅草橋は秋葉原の次の駅なのに、ぜんぜん開けてない。それに街全体がユザワヤみたい。パーツだとかビーズだとかそういう店が山ほどあるんです。そういう職人の街なんです。昔からの人たちばっかりなので、家が手放されない。だから大規模な地上げができなくて、新しい建物がぜんぜん立たないんです。
歩いていても本当に気持ちのいい街です。『タモリ倶楽部』とか『孤独のグルメ』に一番、取り上げられているエリアなんじゃないかな。うちの近所の砥石(といし)屋とか食べ物屋とかがやたら出てくるんですよ。でもテレビに出たら普通、人で混みそうなものなのに、そんなに混まない(笑)

──街、そのものの魅力とはなんですか。

やはり、ひとつひとつ条件が違うことですよね。街々が全部違う。空気もお店も食べれるものも味も全部かわるのでそこは面白いです。

CHANGE気持ちが沸き起こった時が転機

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▲『おおさかカンヴァス』のプレイベントで、芸術家・ヤノベケンジさん(右)と。

──転機だったのはどんな時だったのでしょうか?

僕は「やりたいことしかやらない。やりたくないことはやらない」ようにしています。だから、転機は自分の内面的なことが多いですね。「編集をやりたい」という気持ちが沸き起こってきたら、そちらの方になにがあっても踏み切る。
僕は、同志社大学を卒業して、産経新聞神戸支局と大阪本社社会部で6年記者をしてから転職して福武書店に、さらにKADOKAWAに移ったわけですが、転職したのは全部、「編集をやりたい」と思ったタイミングなんです。

──向かっている先は常にひとつというところですね。

就職の時に「一回くらいは新聞記者もいいね」ということで新聞記者を選んでいるから、かなりいい加減なんですけど。結果的にはそれが楽しくて6年もやった。でも「やっぱり編集をやりたい」と思って辞めた。福武書店は雑誌が休刊したことも大きかったけれど、「生き馬の目を抜くような雑誌の世界でやりたい」という気持ちがあった。産経新聞と福武書店の2つの会社を辞めたのは大きな転機ですが、それは幸いなことに会社がつぶれたとか、首になったりじゃなかったんです。

──転機は自分の熱い想いなわけですね。

僕は妄想力が一番、大事だ考えています。「こういうふうになったらどうなるのかな?」ということをむくむくむくと考え、そこから先、どうなるかは妄想。予想といってもいいかもしれない。そのリアルな映像が浮かんだら、あとは踏み切るか踏み切らないかの問題なんです。

SENSEどうしたいのかをイメージすることが大切

──いい街におけるセンスとは?

やっぱりイメージですね。イメージ力というか。さっきの妄想ともつながりますけど、ひらめきとか、クリエイトする、創造する、ということもあるけど、一番大きな武器だと思っているのはイメージ力です。町興しとか、地方再生にいっぱい関わっているのはそれが楽しいからですが、『この街をこういうふうにしたらどうなるのかな?』ということをいつも思ってますね。

僕が係わっている『おおさかカンヴァス』という、大阪府がやっているアートイベントも2016年で7年目くらいになります。このイベントはもともと『水都大阪』というアートイベントからスタートしたんです。
そのイベントのために芸術家のヤノベケンジさんが、ラッキードラゴンという作品を作ったんです。アートがわからないといわれていた橋下徹元知事がですね、ラッキードラゴンが火を噴くのを見て非常に喜んで「アート面白いじゃん」といいだしたんです。で、『水都大阪』の後に、橋下さんが作ったのが『おおさかカンヴァス』なんです。
『おおさかカンヴァス』で2015年に話題なったのは『ローリングスシー』というもので、道頓堀川を回転ずしのレーンに見立てて、巨大回転すしを流したんです。これはすべての全国紙とニュースに取り上げられました。普通、こんなことできないですよ。面白かったですね。

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──これから街が目指すものってなんでしょうか?

正論で言えば、あらゆる自治体にはいろんな個性があって、それぞれの自治体にはその個性を活かすチャンスがあるわけです。しかし、チャンスはあるけれど、チャンスを使う人はそんなに多いわけではない。
だから、住民と自治体と、中心になって考える人たちがうまく化学反応することが大切。そのチャンスが掴めるかどうかが一番、重要です。そこで必要なのがイメージ力だと思うんです。
今ある中に違うものを見る、ビジョナリストであることです。ウォルト・ディズニーが最たるものです。ウォルト・ディズニーの頭の中になかったら、ディズニーランドはないわけですから。『夢の王国を作りたい!』という想いであんな施設ができちゃう。人間のビジョンって本当にすごいなと思います。

『道頓堀川で回転ずしをやりたい!』と思ったら、回転ずしができるわけですよ。で、やったらめちゃめちゃ面白い。僕が、その状況を写真と一緒にツイートしたら、インプレッションがあっというまに15万くらい行った。15万人がそのツイートを見ているわけです。役所が仕掛けて堅苦しいイベントやったって、そんなの誰も興味持たない。でも、道頓堀川を回転ずしが流れていたらものすごい数の人が見た。全国ニュースになるんです。

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──ないところにイメージすることが大切なわけですね。

けれど、それはムリヤリではないんです。土地の個性に沿って『じゃ、ここにこんなものがあったら面白いよね』とイメージすることが重要です。土地が大切。土地を理解したうえでイメージする。道頓堀川だから面白いんであって、普通の川でやってもなんかゴミが流れているだけになっちゃう。イメージ力というのは同時にその土地に対する理解力でもあるんです。

(2016/07/05 大橋博之)

プロフィール
KADOKAWA/ウォーカー総編集長。ウォーカー事業推進部部長、ウォーカー街づくり総研所長。京都市埋蔵文化財研究所理事。大阪府日本万国博覧会記念公園運営審議会委員。おおさかカンヴァス審査員。同志社大卒。産経新聞神戸支局・大阪本社社会部で6年記者、大阪府警本部捜査1課担当〜福武書店月刊女性誌〜角川、編集長4誌後、現職。
【Twitter】https://twitter.com/tamatama2?lang=ja
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