あえてゴールは決めない。そのほうが自分の気持ちに正直でいられるから
美容師・鎗田一也が教える、一生ものの仕事をみつけるキャリアの描き方
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あえてゴールは決めない。そのほうが自分の気持ちに正直でいられるから
美容師・鎗田一也が教える、一生ものの仕事をみつけるキャリアの描き方
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美容師というと、こだわりの強い職人肌の人が多いイメージもあるかもしれない。しかし、モッズヘアで数々の実績を積み、昨年フリーランスの美容師として独立した鎗田一也(やりた・かずや)さんは、むしろ「こだわりを持たない」ことを大事にしていると言う。余計なこだわりを持たずなんでも受け入れてみることが感性を磨き、自分に合った仕事に導いてくれる。そう語る彼に、キャリアの描き方について聞いてみた。

JOB技術を伝えるため、講師業も積極的に展開

――本日はありがとうございます。さっそくですが、現在はどんなお仕事をされているのでしょうか?

フリーランスの美容師としてサロンでカットやパーマの施術をするかたわら、講師の仕事も定期的にしています。美容師とはいえ、ただカットをするだけにとどまりたくなかったというのと、僕が今している「すきバサミを使わないカット」をできる人はまだまだ少ないので、それを広めたいと思ったんです。

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――とても幅広くお仕事をされているんですね。「すきバサミを使わないカット」にこだわっている理由は、どういうところにあるのでしょうか?

日本人の髪って外国人とは違って、太くて量も多くてハリもあるし、クセもある。そういう髪の人をただすくだけだと、まとまりが悪くなってかえって広がってしまうこともあるんです。このとき、すかないで丁寧にカットするとツヤも出るし枝毛もできづらく、髪型の持ちもよくなります。すきバサミを使わないカットにこだわるのは、このカットが日本人の髪質と一番相性がいいからかもしれませんね。

LIFE「こだわらないこと」が僕のライフスタイルのこだわり

――日常的に音楽を聴いたり映画を見たりされていると伺いましたが、やはりそういった時間は鎗田さんにとって欠かせないものなのでしょうか。また、選ばれるときのこだわりなどはありますか?

そうですね。こだわりは特になくて、音楽も映画もいろんなジャンルのものを視聴しています。インテリアも洋服もブランドにとらわれず、気に入れば高価なものもチープなものも買いますね。これしかダメ、というんじゃなくて、なんでも受け入れるというのが、むしろこだわりかもしれません。ヘンなこだわりを持たないで気になったものは受け入れるようにしていると、自分の中に今までなかったものがどんどん入ってきます。常に新しいものを取り入れていないと、感性ってダメになっちゃう気がするんです。

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美容師の腕の見せどころって、その人の魅力をどう引き出すかというところですから、感性やセンスが本当に大事。きっとほかの仕事でも、周りに差をつけるためには必要なんじゃないでしょうか。そういうのを磨くためにも、いろんなものを受け入れて、体験してみるといいと思います。

――たしかにそうですよね。いろんなものを受け入れるって、どんな場面でも大事な気がします。

はい、そう思います。お客様とのコミュニケーションでも、受け入れる心は大事です。むしろその人の生活に一歩踏み込むくらい、相手に興味を持つほうがいいかもしれません。そういう深い会話がないと、よりよい髪型って作れないと思うんです。もちろんパッと見て似合う髪型にすることはできますが、その場だけじゃなく本当に満足してもらうには、その人の普段の生活やライフスタイルにフィットしていないといけませんよね。
お客様とああでもないこうでもないとコミュニケーションを取りながらのほうが、髪型もどんどんよりよいものにステップアップしていく気がします。

LIKE「作るのが好き」という気持ちが今の仕事の原点に

――美容業界で長年お仕事をされていますが、プライベートでも美容やファッションがお好きなのでしょうか?

そうですね。若いころから洋服が大好きだったし、美容師として美しさにはこだわっていたいという気持ちもあります。
でも経験を積んだ今思うのは、「お客様にいいものを提供する」っていうことを最優先に考えると、自分のファッションなんてどうでもいいってこと。もちろんお客様もダサい人に切ってもらいたいとは思わないだろうから、ある程度はおしゃれも必要ですけどね。100%のパフォーマンスをしたいなら、極端な話、Tシャツと短パンで前髪も全部上げて切ったほうがいいんです(笑)。肩の上がらないスーツを着ていたりアクセサリーをジャラジャラつけていたりすると、どうしても集中力をそがれてしまいますから。

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――なるほど。でも、プライベートでファッションがお好きだということも、お仕事につながっていそうな気がします。

たしかにそうですね。ファッションに限らず、何かをコーディネートしたり手を加えたりして新しいものを作るのが好きなんですよ。学生のころは部屋の壁にアルミホイルを貼って宇宙っぽい感じに改造したりしていましたし、今もカーテンに絵を描いたり、ベランダにすのこを敷き詰めて雰囲気を変えたりもしています。
髪型に関しても若いころから美容室には行かず、自分で髪を切っていました。髪をいじって独自のスタイリングを考えるのも好きでしたね。創作活動というと大げさですが、作るのが好きだということがこの仕事の原点になったのかもしれません。

CHANGE美容師を辞めたいと思ったことは何度もあった

――とても順風満帆に美容師としてのキャリアを歩んでこられたようにお見受けしますが、そんな鎗田さんでも悩んだり迷ったりされたことはあるのでしょうか?

僕は美容師一筋で迷いなくここまで来たように思われるかもしれませんが、全然そんなことないんです。モッズヘアに入社してから2回も、もう辞めようと思って退職届まで出したことがありましたから(笑)。特に入社1年目くらいまでは全然やる気がなくて、練習もせずにクラブに行ったりして遊んでばかりいたんですよ。先輩にも毎日のように怒られていましたし、もちろん技術も一番下手でした。「もう美容師、別にやりたくねえな」って思っていたんですよね。

でも退職届を出していざ辞めますってなったときに、「今辞めたらどうなんだろうな」っていう気持ちが出てきて。6年目くらいのときにはサロンでの仕事とは別にヘアメイクのチームに入れてもらって、CMやコレクションなど美容師以外の現場にもお手伝いに行けるようになったんです。そこでやっぱり楽しいなと思えたのもあって、もう少し続けることにしました。結局辞めず、今でも美容師を続けています(笑)

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――そうだったんですね。でも、辞めずにこられたのには、何か決定的な理由があったんですか?

辞める辞めると言いつつここまで続けてこられたのは、負けず嫌いな性格のおかげかもしれません。だからやると決めてからは昇進するのも早くて、50人くらいいた同期の中でも2番目にスタイリストになりました。やると決めたからにはやる。スイッチが入ったらもう、周りの人には負けていられないなという気持ちになりましたね。

よく「○年先のキャリアをイメージしよう」とか言いますけど、あまり最初からカッチリとキャリアを描きすぎるよりも、そのときそのときの気持ちに正直になって興味のわくことにチャレンジしていけばいいんじゃないかな。考え方って変わるものだし、無理にひとつのゴールを決めなくてもいいと思うんです。
僕も今はさすがに美容師を主体にしていきたいとは思っていますが、それだけにとどまりたくないとも思っています。たとえばお店を出すというゴールは分かりやすいですが、そういうふうに決め込まないほうが本当にやりたいことができるし、その気持ちにブレーキをかけずに進める気がするんです。

SENSE誰にでも、天職にめぐり合えるチャンスはある

――美容師としてこれまでいろいろな方に出会われたと思いますが、そんな中でも「センスがあるな、素敵だな」と思った方はいますか?

モッズヘア時代の先輩で、カットがすごく上手でお客様もたくさんいて、誰から見ても一流の美容師というような人がいました。でもあるとき、彼は美容師を辞めてバレエダンサーになったんです。美容師としての道が確約されていたにも関わらず、それを捨ててまで自分の好きな道に行くっていうのがかっこいいじゃないですか。美容師以外にも抜きん出た才能があって、それを生半可じゃなく追究しているのが素敵ですよね。

その人のほかにも才能あるたくさんの先輩に恵まれましたが、共通するのはみんな「好き」を仕事にしているってこと。やっぱり好きなことを仕事にしたほうが夢中になれるし、パフォーマンスも上がると思うんです。

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――やはりそうですよね。経験の浅いところからそういうセンスを磨いて一流になるには、どんなことに気をつければいいのでしょうか?

モッズヘア時代には若手の美容師もたくさん見てきましたが、伸びるのはやっぱり、アドバイスを素直に取り入れつつ、自分から積極的に質問していける意欲のある人でした。誰でも最初は何もないところからのスタートです。与えられるのを待つだけじゃなく自分からアクションを起こせる人が、道を切りひらいて行けるんだと思います。
僕も入社したてのころは上司や同僚に反発していたけど、そういう時期ってやっぱり、誰も味方してくれないんです。「これじゃいけないな」と思って、あるときから自分から積極的に先輩や同僚に興味を持っていろいろ質問しはじめました。技術を高めるということの大事さに比べたら小さな強がりなんてと、どこかで折れる気持ちが出てきたのかもしれません。そこからは技術の引き出しも増えて、仕事がさらにうまくいくようになりました。

――そうだったんですね。世の中には自分に合った仕事が見つからないと悩んでいる人も多いと思うのですが、一生ものの仕事を見つけるコツみたいなものって、あるのでしょうか?

「これが天職だ」と思える仕事を見つけるには、一度決めたら投げ出さず続けること。人って誰でも、1つくらい合っているものがあると思うんですよ。気をつけていればターニングポイントは絶対にやってくるからそのチャンスを逃さず、ひらめきがあったときにすぐ動くことですね。

僕も迷うときは迷うほうなんですよね。だから「この仕事でいいのかな」「やりたい仕事はあるけど、いろいろ悩んでしまう」という気持ちもわかります。でも、どこかで決めなきゃいけないポイントってあると思うんです。そのポイントは人それぞれで、見つけたからと言ってそれが正解かどうかもわかりませんが、だからこそ決めたら腹をくくってやらなきゃいけないんです。どれだけ悩んでも迷ってもいいけど、一度決めたら曲げない。それが大事だと思います。

(2017/1/25 Tokyo Edit_大住奈保子)

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プロフィール
モッズヘアで12年勤務後フリーランスに転身。パーソナル美容師として多くの顧客を持つかたわら「すきバサミを使わないカット」の外部講師としても活躍中。
予約受付・お仕事のご相談はLINE@(ID:@RXL3294Q)、またはInstagram(ID:YARITAKAZUYA)のDMから。
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