クリエイターから「表現」を取り戻すために
経営者であり、クリエイターでもある村田裕作の仕事論とは。
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クリエイターから「表現」を取り戻すために
経営者であり、クリエイターでもある村田裕作の仕事論とは。
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マネジメント事務所・レーベル「TOKYO LOGIC」代表を務めつつ、バンド・ヒゲドライVANのギターとしても活動する村田裕作さん。ヒゲドライバー・ゆよゆっぺ・baker・マチゲリータなど、数々の有名音楽クリエイターを抱える村田さんの仕事観をはじめ、昨今のインターネットの風潮について持論を語っていただきました。

JOB責任を果たすために会社を立ち上げた

ーさっそくですが、村田さんの現在のお仕事についてお聞かせください。

音楽事務所・レーベル『TOKYO LOGIC』の代表、バンド『ヒゲドライVAN』でギターを担当してます。

ー状況次第で、事務所代表であり、ミュージシャンでもあると。

ん〜。でも「ミュージシャンです」と名乗れるほどの自信もないし、「社長です」と名乗れるほど会社が大きいわけでもなくて。程のいい言い方をすれば、うちは「IT企業のエンタメ部門」くらいなんだと思います。

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ーでは、TOKYO LOGIC設立に至るまでの経緯をお聞かせいただけますか。

結論から話すと、事務所をつくったのは、自分が勤めていた会社がなくなったからです。
もとはインディーズの著名音楽配信サイトで働いてました。それからそこが中心となって、某音楽レーベルと某通信業者の共同投資で『ハッチ・エンタテイメント』という会社が設立されて、創立メンバーとして呼んでもらえて。会社では「LOiD」というレコードレーベルのマネージャーを担当してました。

3~4年経ったくらいのときかな。ある日、務めていた会社が突然親会社に吸収されることになったんですよ。それで「今後はレーベル事業ができない」と伝えられて。
それからフリーランスとして1年間働くことになるのですが、当時LOiDで一緒にやっていたアーティストが20人前後?くらいいたんです。

ー……事実上、解散ということですよね?

そうですね。なので僕も1人ひとりに「会社が失くなります」って謝罪の連絡をして。他の会社から誘われている人は必要とされている会社へ行ってくださいと。
でも、その中に行き場のなかった人たちがいたんです。今、弊社に所属しているメンバーですね。ヒゲさん(ヒゲドライバー)は、当時はネットの一部でしか人気がないもんだから、音楽活動が続けられるか分からなかったし、ゆっぺくん(ゆよゆっぺ)は、かなり尖ってて(笑)。それと、若干16歳で社会進出していたマチゲくん(マチゲリータ)。

彼らに「これから1年間、自分の責任を果たせるくらいお金が稼げたら会社を立てるから待ってて。」と伝えて、そのまま残ってもらったんです。その後、いろんな企画立てたり、業務委託を請けて、1年間で700~800万ほど売り上げて、約束通り3人のアーティストを抱えてTOKYO LOGICを設立しました。

LIKE何が好きかを語れる人

ーTOKYO LOGICを設立して、今年で6年目になります。現在、事務所のご状況はいかがでしょうか。

クリエイターも仕事も増えてきたので、全体をしっかり見れなくなってきたなと。この状況はよくないんですけどね……。

ー人手が足りてない?

時期によって忙しさが違いますが、忙しいときはとことん人手不足です。

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ーちなみに、どういった人材を求めていますか?

普通の企業と違って、うちのやり方はちょっと特殊で。「この仕事を与えるからこれをやりなさない」ということはなくて、「こういう仕事を考えてきたけど、どうやって売り上げに繋げていくか?」という提案の積極性が求められるというか。エンタメ企業はどこもこんな感じだと思いますけどね。

ー実際に、どんな働き方をされているのでしょうか。

つい先日、外国人社員を採用したんです。彼はバーチャルYouTuberの『キズナアイ』をもっと世に広めたいと話していて。運営会社にFacebookのページの運用をしたいと提案したら、それが実ったんです。そういう案件が多いのかな。社員もアーティストも同じように、興味を持ったものをどうやってお金に変えていくかを考えていくこと。それが出来る人だったらいいんじゃないかなって思ってます。

ー独特のアンテナの張り方が、TOKYO LOGIC“らしさ”なんですかね。

そうですね。基本的にいつでも何かを探している状態です。じゃないと、おもしろい波に乗り遅れちゃいますし。“らしさ”という点で言えば、曲つくりでゆっぺくんが協力している、BABYMEATALを始めとして、なんとなくブームを作っていく中に自分たちが少しだけ関わっている事じゃないかな。

LIFE主催イベントは「会社のオフ会」

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ー所属クリエイターさんと休日を一緒に過ごすことはありますか?

本当は皆で遊びたいんですけど、みんな忙しくて。遊べていたのは、会社設立当初くらいです。仕事がなかったので...(笑)。

ーでも、その関係性があって今があるんだと思います。

そうですね。今だと、本当に全員が集まれるのは忘年会や新年会くらいですから。

ー12月16日に開催されるイベント『MOtOLOiD 2017』は、大規模な忘年会みたいですね。

商業っぽいイベントですけど、僕らからするとこういう機会がないと集まれないので。だから、今回のイベントはある意味「会社のオフ会」でもあったりしますね。

CHANGEクリエイターから「表現」を取り戻したい

ーここまでお仕事についてうかがいましたが。プレイヤーとして活躍されている、ヒゲドライVANのお話も聞かせてください。どうして会社経営をやりつつ、プレイヤーとしても表に立っているのでしょうか。

バンドをやろうと思った理由は、自分がプレイヤーとして舞台上に立ってないと舞台上の人の気持ちが分かんないからです。というのも、会社員時代に今うちにいるとあるクリエイターから「社員だから俺らの気持ちわからないんでしょ」って言われ、すごく腹が立ったことがあって。

それからは、自分も個人事業主のような同じような立場になって、俺はビジネスでも稼ぐし、それでさらにバンドがお前らより売れたら絶対に言うこと聞けよ、みたいなスタンスでやってます。どうせ会社やるんだったら、行動で示したほうが分かりやすいですし。

ー村田さんのスタンスは、やることに対して一切妥協しない姿勢からできているんですね。

クリエイティブの業界って、やりたいことやるためには自分が実績を持つしかないんですよね。この話って、対クリエイターだけでなく、対クライアントにも同じことが言えるんです。
僕らは海の向こうでライブすることが多いので強く感じるのですが、お客さんがみな正直なんですよ。良いものは良い、悪いものは悪いと、自分らのポリシーに沿って意思決定する。なのでライブも盛り上がりによって人が増えたり減ったりするんです。だから日本でも、意見のぶつけ合いとかもっとしてもいいんじゃないかなって。嫌なことを嫌な気持ちのままやるなんて、自分は全く理解できない。

本来、クリエイターって全員「表現者」じゃないですか。「表現抑えつけて表現する」って意味が分からない。そういうの、やめませんかって思うんです。

SENSE“風潮”に惑わされない

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ー村田さんから見てセンスがある人材ってどんな人間でしょうか?

ん〜。VALUで売り抜けてる人じゃないですか?……まぁそれは冗談として、“風潮”に惑わされない人じゃないですかね。

ー素直な人?

最近すごく感じてるんですが、自分1人で何でもできると思ってる人が多すぎるんですよ。ネットの風潮が影響してると思いますが、根本的な部分と外に見せてる部分の乖離がすごい。

SNSをみてると、ちゃんと出来てもしていないのに肩書を色々書いてる人いるじゃないですか。本当に全てプロとしてこなせるならいいんですけど、成功してる人をあまり見たことがない。つまり、本気でやってる人の弊害になってる気がするんです。

ー「ネットの風潮」とおっしゃってましたが、今のインターネット全体の空気が、プロの格を下げているということでしょうか。

極論ですが、そう思います。クリエイティブの良し悪しはもちろん大事だと思うのですが、最近は人間の良し悪しの世界になってきていますよね。そう考えると余計に自分の人間性磨いたほうがいいし、外側だけで勝負するな、というか。自分にも言えることなんですけど。

なので、つくるぞ! という人間は、相当器用な人ではない限り1つの好きなものだけを突き詰めていいんじゃないかなって思うんです。尖るというか……実際、ビジネスとしての考え方とクリエイティブとしての考え方は真逆ですしね。ビジネスのことを考えるとクリエイティブがダメになって、クリエイティブのこと考えるとビジネスがダメになる。

ーそれでも村田さんはビジネスとクリエイティブの中間にいらっしゃいます。実際、両立できているようにみえますが……?

うーん……僕はただ、クリエイティブを捨てられないタイプの中途半端な人間なんだとおもいます。たまに曲をつくることがあるんですけど、ものすごい大変ですし、ヒゲさんやゆっぺくんには到底敵わない。かといって、別にビジネスがやりたいかって聞かれると、本気の経営者のような感じでもない。ビジネスに振り切るんだったら、部下に予算だけ渡して全体経営に注力してると思うんですよ。これも正解だと思うんですけど、この仕事は、資本主義的考え方でやってると敵わないことだらけなんです。予算ではなくアイディアの世界ですし。

「社長」「ミュージシャン」のどちらかを名乗るのは恐縮ですし、プロの方に申し訳ない。でも、やるからには、本田宗一郎さんのような人間になりたいとは思っています。彼はクリエイターであり、経営者でもあるという。自分も、まだまだやることだらけですが、一つずつ課題を潰していこうと思います。

(2017/12/13 石川優太)

 

プロフィール
村田裕作(むらた ゆうさく)
東京都出身。インディーレーベル、ハッチ・エンタテイメント内の「LOiD」を経て、1年間フリーランスとして活動。その後、マネジメント事務所・レーベル「TOKYO LOGIC」を設立。現在は代表を務めつつ、ロックバンド・ヒゲドライVANのギターとしても活動中。

【イベント情報】
MOTOLOID 2017 @shibuya clubasia
(DAY) 2017/12/16
(OPEN/CLOSE) 14:00 / 21:30
公式サイト:http://motoloid.info/motoloid-2017
ご予約は「e-plus」より
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