日本でも、不動産業界のトレンドとなりつつある「リノベーション」。そんなリノベーション物件のオリジナルブランド「TOMOS」を展開しているハプティック株式会社は、おしゃれ×こだわりのお部屋探しサイト「goodroom(グッドルーム)」の運営でも、その名が知られる非IT × ITベンチャー企業です。
今回は、オフィスでもある「グッドルーム渋谷店」にお邪魔し、営業部長の伊藤 和澄(いとう かずと)さんと、仲介業務を担当している新卒 2 年目の中田 すみれ(なかた すみれ)さんにお話を伺ってきました。同社が掲げる『どこにもない、ふつう』というキーワード。その言葉の想いまで、じっくりと伺うことができる取材となりました。
「ハプティック(=触れ心地)」という言葉そのままに、触れ心地のいい無垢フローリングがうれしい、リノベーションブランド「TOMOS」。空室に困っている物件に対して、工事から入居者の契約まで一気通貫して同社が担うモデルで、住居者にとっては「安心して賃貸として入居できる」人気ブランドです。
そんなこだわりの自社ブランドをはじめとした、「こんな素敵な部屋があるの?」と思わずため息を漏らしてしまうような物件がズラリと並ぶサイトが、この「goodroom(グッドルーム)」。
サイトを運営するうえで、大切にしていることを中田さんに伺ってみました。
中田「goodroomでお部屋を紹介するうえで心がけていることは、単なる “ 物件の紹介 “ ではなく、その紹介を通して “ 新しい生活やライフスタイルの提案 “ ができるようなお伝えの仕方をすることですね。マイナスポイントをしっかり書くということも気をつけていること。誇張して評価せず、『こういう暮らしができますよ』『でも、こういう懸念もあります』と正直に伝えるようにしています」
たしかに、「goodroom」にはスタッフが撮影したお部屋の写真とともに、スタッフによる評価やマイナスポイントがしっかりと記載されています。配慮や安心感を感じられることも、このサイトの大きな特徴です。
中田さんに普段のお仕事内容について伺ってみました。
中田「goodroomのサイトでお部屋を紹介することはもちろんですが、メインは店舗に来てくださったお客様へのお部屋のご提案と、契約/入居手続きのサポートです。お客様とお部屋をいっしょに見にいくときも、心かげているのはサイトで紹介するときと同じ。マイナスポイントも含めてお伝えして、『信頼できる』『相談しやすい』と思っていただくことですね。あとは、『自分だったらー』という視点も大切にしています。『私だったら、こう住みます』とか『私だったら、ここにこういう家具を置きたい』とかイメージいただけるよう、こちらも全力でいっしょに考えますね。たまに熱が入り過ぎちゃうこともあるんですけど(笑)そうすることで、『どういう引っ越しにしたいか』『新しいお部屋で、どういう生活をしたいか』というところまでお話いただける関係を築いて、ライフスタイルを提案できるように、心を配っています」
新卒 2 年目という中田さんですが、そのポリシーとこだわりは徹底されています。
「goodroom」に来店するお客様には、すこし特徴があるそう。
中田「サイトを見て、お部屋ベースでお問い合わせいただくことが多いんですが、『他にも変わったお部屋ありませんか?』と聞かれることがあります(笑)デザイナーズ物件やリノベーション物件に興味を持たれている方がほとんどですね。『TOMOS』に関しては、この店舗自体がショールームにもなってるので、実際にどういう素材を使っているのかがわかりますし、まだサイトには載っていないこれから工事するお部屋も見ていただくこともできますから、そういった『他にはない』物件を探しているお客様が多いように思います」
床一面が無垢素材というフロア。「goodroom」の店舗は「街の不動産屋さん」とはちがった役割を担っているのでした。
中田さんご自身も、現在は「TOMOS」にお住まいで「無垢素材の床が本当に気持ちよくて、カーペットを敷くのがもったいないんです」とのこと。リノベーションや自然な素材の良さを自らも体感し語ってくれる彼女ですが、なんと就職活動時は「不動産業界にはまったく興味がなかった」のだとか。
中田「『空間づくり』には興味があったので、インテリア関係や店舗デザイン関係の企業はすこし見ていましたね。でも不動産仲介業には、少々 “ 堅そう “ なイメージも持ってしまっていましたし、まさか自分がその仕事を選ぶなんて想像もしていませんでした(笑)」
きっかけは、「goodroom」。まさに、このサービスだったのだと言います。
中田「もともと『goodroom』のアプリは見ていたんですよ。いろんな部屋を見ることができて、おもしろいなと思っていました。自社でリノベーションまで担っていることを知ってからは、まったく知識が無いながらも『TOMOS』というブランドに惹かれましたし、『設計や工事までするんだ!』と驚いたんです。さらに『リノベーション』×『賃貸』×『オリジナルブランド』ですから学生の私にも、そのめずらしさがわかりました。リノベーションそのものにも興味を持つようになり、挑戦してみたのがきっかけですね」
オリジナルブランド「TOMOS」に魅了され、入社した中田さん。リノベーション工事の設計を担当する「プランナー」の職種に憧れたのは自然な流れでした。
中田「入社後すぐの研修では、プランナーと仲介営業と大工の仕事をすべて体験するんですよ」
ー 大工もですか!
中田「そうなんです(笑)壁を立てたりしましたよ」
中田「その中でも、最初はやっぱり『空間づくり』に興味があったので、いずれは、実際に図面に起こして現場の管理をする『プランナー』としてそこに携わりたいと思っていました」
しかし、いまは大好きな「TOMOS」への携わり方について、以前とはちがった気持ちが芽生えていると言います。
中田「いま、お客様へのお部屋紹介の仕事がすごく楽しいんです。やっぱり、お客様と直接的に接することのできる仕事ですし、たとえば『TOMOS』をお申し込みいただいたお客様には『完成チェック』という、工事完了後はじめて内装を確認していただくタイミングがあります。そのときは毎回、本当に驚きと感動の瞬間のお顔を見ることができるんですよね。なかなかイメージが沸かない中、信頼してお申し込みをしてくださったお客様の『わぁ!』という、その喜びの顔を見ると『ああ、提案してよかった!』と心から思うことができて・・・。いま、それが本当に楽しいんですよ」
どこか「堅苦しい」イメージを持っていた仲介業のお仕事には、「お部屋さがし」という重要なイベントを共に乗り切るお客様との温かな交流にあふれていました。
語る中田さんの笑顔に、こちらまでうれしくなってしまいます。
「TOMOS」のリノベーション事業に携わっている、営業部長の伊藤さんにもお話を伺ってみました。
伊藤「営業部では、空室に困っているオーナーさんに『リノベーションをしませんか?』という提案をしています。現在は月に30件ぐらい工事をしていて、それらはすべて『TOMOSブランド』となります」
ー 賃貸物件を、オーナーさんの出費でリノベーションする価値はどこにあるんでしょうか?
伊藤「空室期間が長いまま年月が経つと、やはりお部屋の価値も下がってしまいます。リノベーションをして、見た目の良さや機能性も高めることで、その対価として家賃を上げることができたり、住む人が丁寧に使ってくれるというメリットがあります。長い目で見ると『いいお部屋』をつくることで利益も上がりますし、喜んで住んでもらうことができるんですよね」
修繕に留まらず価値をかつて以上に高めることで、オーナーさんにとっても住居者にとってもうれしい「住まいづくり」をすることが、同社のリノベーション。
とは言え、「あくまで投資商品」として考えているオーナーさんも多い中、お金を出して工事をしてくれる持ち主のみなさんは「すごく愛があるんです」と伊藤さんは教えてくれました。
伊藤さんは現在、入社 4 年目とのこと。
伊藤「去年の 9 月までは、僕もお部屋紹介の担当をしていました。営業部を任されるようになったのは 10 月からですね。” 出口 ” から “ 入り口 “ へと移りましたが、基本は『入居者目線』を大切にすることで変わりませんね」
ー 入社される前も、同じような不動産業だったのですか?
伊藤「いえいえ、アパレルの会社で働いていました。ファッションブランドの責任者をやったり、生地を発注して工場での制作の管理をするような『生産管理』の仕事をしたりして、洋服をつくっていたんですよ」
なんと前職は、まったく異なるアパレルブランド。しかし伊藤さんのなかでは「人間の生活に必要な衣食住の “ 衣 “ から “ 住 “ にシフトした」ことは、とても自然な流れだったのだと言います。
伊藤「もともとファッションが好きで、洋服の専門学校を出ました。特に好きなブランドがあって、そのブランドの会社に入社したのがスタートです。いろんなブランドを経験していくなかで、もちろん楽しい仕事も良い経験もできましたが、業界についていろいろと思うところが出てきたんです」
伊藤「やはり今後のことを考えると、これから成長していくマーケットではなく、縮小傾向であることは否めない。パイの取り合いでもあるので、そこに難しさを感じましたね。結局、誰のためにやってるのかがよくわからなくなっちゃったんです。似たようなものを何千枚〜何万枚と作って、残ったら捨てるようなやり方に、『これがないと困る人』『この商品じゃなきゃ困る人』はいるのかな、と考えるようになってしまって。もっと誰かの役に立ちたい、と思うようになりました」
そして伊藤さんの考えは、「無くては困るもの= 衣食住」 の “ 住 “ にたどり着きます。
伊藤「僕自身、何度も引っ越ししていますが、日本の賃貸で『本当に快適なお部屋』というのは、まだまだ少ないと思っています。飽和している業界よりも、まだまだ現状足りていないことに挑戦したほうが自分としても仕事していくうえでやりがいがありますし、古いお部屋が新しく生まれ変わることで価値を生んで、オーナーさんにも入居者さんにも喜んでもらえることができる、というのはとても ” 健全な仕事 “ だと思えました(笑)」
「住まいづくり」や「リノベーション」に興味を持った伊藤さんとハプティック社の出会いは、Facebookページだったそう。
伊藤「Facebookで流れてきた写真がgoodroomへの “ 入り口 “ となりました。『経験不問』であることも確認できたので直接問い合わせをして、履歴書を送ってみました(笑)社内に大工さんもいて、工事から入居者付けまで一貫して全部やっているという、そのビジネスモデルの新しさもおもしろいと思ったんです」
こうして、伊藤さんの新たなキャリアがスタートしました。
「はやく働きたい!」という思いから、前職を退職した翌日から働きはじめたという伊藤さん。しかし、当初は業界のカルチャーの違いに戸惑いもあったそう。
伊藤「やはり不動産は古い考えでまわっていることも多いので、そういった文化に戸惑ったり、わからないこともたくさんありましたね。だけど結局、大切なことや気をつけることは業界を跨いでもおなじだと気付きました。『現場を見ること』なんですよね。アパレルで言えば『売り場』、いまの仕事だと『工事現場』もあれば『入居者の方が住んでいるところ』も、また現場です。そういう人たちとよく向き合うことが本当に大切で、現場を大事にする風土もこの会社のいいところだと思っています。もちろん間に立つ人の功績でもありますが、まずは現場の意見や、それぞれがうまく回ってるかどうかがいちばん大事。リアルなところに問題やチャンスは転がっていると思うので」
大切な「現場」からは、うれしい声も届きます。
伊藤「完成後に、お客様が喜ばれている様子がやっぱりうれしいので、その写真を社内みんなで共有したりしていますね。あとは入居後の住み心地を取材する『goodroom journal(グッドルーム ジャーナル)』で心地よく住んでいただいているのを見ると、僕自身もうれしいですし、それを見て大工さんが喜んでくれることも、やっぱりうれしいんですよね」
最後に、日本の住まいの「これから」と、その関わり方についてお二方のお考えを伺ってみました。
中田「私自身としては、これからも良いお部屋をどんどんご紹介していきたいと思っていますが、いま『goodroom』のサイトを、メディアとしてもっと大きく育てていこうという動きがあって、そこにとてもワクワクしているんです。これまで大切にしてきたカラーや質を保ちながらしっかりと拡大させて、たくさんの管理会社さんやオーナーさん、同業他社の方に『good room』のサービスや取り組みをの良さを知ってもらいたいと思っています。そういったところにも力を入れて、『賃貸』や『不動産業界』に大きく影響を与えていきたいですね」
伊藤「『空き家問題』など深刻な問題はたくさんありますが、しかめっ面していてもはじまらないので、まずは少しでも『住む人が幸せになれる』場所を増やしていければいいなと思っています。それは賃貸にすることがすべてじゃないと思うので、広い視野で『日本全体の住環境を変えたい』と思っていますね。そして当社のミッションは『どこにもない、ふつう をつくりつづける』こと。奇抜すぎず、だけど新しくてかっこいい。どこにでもあるかというとそうではない、劣らぬブランド価値を持って、その『ふつう=定番』を更新し続けられればと考えています」
「リノベーション」や信頼できる物件の「紹介」を通して、住む人・貸す人の両者を幸せにする仕事。サイトや店舗の温かな雰囲気は、どこまでも利用者を大切にするスタッフのみなさんの想いの表れでもありました。
一員として、「どこにもない、ふつう」をかたちにしてくれる方を募集しています。
(2016/07/28 中前結花)